今回は脇痛についてのお話しです。
脇の痛みですが脇のみに限局するのでなく、場合によって胸部や腹部にまで波及するものも含めています。現代医学で脇に出る痛みを外傷によるもの、神経性によるものに分けて紹介していきます。
外傷によるものとしては「肋骨骨折」、神経性によるものとしては「肋間神経痛」、「内臓の関連痛」です。

《肋骨骨折》
転倒や打撲による外傷パターンと、スポーツや風邪(持続的な咳)などによる疲労骨折などが主な原因です。骨粗鬆症(骨がもろくなってしまう病気)の高齢者の他にも、スポーツを激しくする若年者にもよくみられます。
症状としては持続する胸脇部痛です。この痛みは咳や深呼吸、体動時に増強します。折れた肋骨が肺を傷つけ気胸(肺に穴が開いた状態)、血胸(胸腔内に血液が貯留した状態)をひきおこす場合もあります。
診断はレントゲン検査が欠かせませんが、骨がずれていないために骨折線が発見できなかったり、肋軟骨部での骨折では肋軟骨がレントゲンに写 らないために診断が難しくなります。したがって、自覚症状や医者の判断が重要となってきます。
2週間以上にわたって持続して痛みが出ている場合には、肋骨骨折の疑いを持ってください。単なる打撲や筋肉痛ではだいたい1週間程度で軽快します。骨折と診断された場合は、治療としてバストバンドによる固定や痛みに対しては非ステロイド系抗炎症剤等の服用があります。

《肋間神経痛》
肋間神経痛とは、胸髄(胸からお腹の高さくらいで背骨の中を通る神経のおおもと)から出て肋骨に沿って走行する肋間神経が、何らかの原因により特発的に痛みを生じるものをいいます。
原因不明の原発性肋間神経痛と原因の明らかな続発性肋間神経痛に分けられます。

原因− 原発性のものに関しては、心因性の痛みや続発性の痛みも除いた上で末梢神経になんらの病変がみられません。
続発性の場合は末梢神経、脊髄の知覚神経の刺激や障害によっておこります。最も多い原因としては肋間神経の絞扼(圧迫)障害で、肋間神経が肋骨と肋骨の間の肋間筋というところで圧迫されてしまうパターンです。
その他として寒冷刺激による神経炎や外傷(肋骨の骨折やひび)、帯状疱疹もしばしば肋間神経痛の原因となります。

症状− 肋間神経痛の主な症状は片側ででます。
脊髄から肋骨に沿って激しい痛みが突然おこる。
深呼吸や咳、会話で痛みが強くなる。
身体をひねったり、痛みのない側に身体を曲げて肋間神経を伸ばすような姿勢をとると刺すように痛む。 etc

治療− 原因が明らかな場合は、まず原因を取り除く治療を行います。
痛みに対しては温熱療法や鎮痛剤の使用、反応点への鍼刺激や筋肉や肋骨を整える徒手療法で様子をみて、それでも痛みが治まらない場合は神経ブロック注射で痛みの除去をはかります。


《内臓疾患による関連痛》

〜関連痛とは?〜
ある部位の痛みを、異なる部位の痛みと脳が勘違いをすることによっておこる痛みのことです。
なぜこのようなことがおこるかというと、人は痛みを感じるときは痛みが起きた場所にある受容器(痛みを感知する装置)から脳へ神経を通 って伝えられます。その神経はいくつかに枝分かれをして各所に伝わっているので、同じ神経束が源になっている場合などは、痛みの電気信号が一体どこから出ているのかわからない状態になってしまうことがあり、痛みの発生源が混乱してしまうためです。

・右脇腹に痛みが出る場合

・胆石− 肝臓の右下に胆嚢という袋状の臓器があります。
通常は胆汁といって食べた脂肪分の消化を助ける消化液を貯えています。この胆嚢に出来るまるで石のようなもの(結石)を胆石といいます。この胆石は脂肪分や糖分の成分が結晶を作り出来ます。そして胆嚢から胆石が管を通 って出ようとしたときに右脇腹に痛みが出るのです。
他にも心か部(みぞおち)の痛みや右肩、右背部にも痛みや筋肉の張りとしてあらわれます。
・肝炎− 肝炎とは、肝臓に炎症が起こった状態で赤く腫れて熱を持ち触ると痛みを感じます。
日本人の約80%はウイルス感染によるものですが、その他にも原因として薬剤、アルコール、アレルギー等があります。
右脇腹の痛み以外にも、全身倦怠感、発熱、頭痛、関節痛、悪心、食欲不振等もみられます。その後黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)の症状がでてきます。
・尿管結石(右側)− 腎臓内でできた結石の一部が、尿管を下っていく途中で尿管につまってしまうものです。
主な症状としては血尿(目で見てわからない場合あり)と腹痛です。腹痛は脇腹あたりまで広がることもありかなり強い痛みです。


・左脇腹に痛みが出る場合

・膵炎−

膵炎には急性のものと慢性のものがあります。
膵臓から膵液という分泌液が出ますが、その中に消化酵素を含みます。この消化酵素が自らを消化してしまい組織が壊死してしまうものが急性です。慢性のものは膵臓が長年にわたって炎症を繰り返しているうちに徐々に膵臓の正常な細胞が破壊されていきます。原因としては胆石やアルコールの過飲等になります。
症状としては左脇腹の痛みの他に心か部(みぞおち)の痛み、発熱、嘔吐、腹部の膨満感、時として黄疸などです。

・脾腫− 脾臓が腫れて大きくなった状態です。
肝硬変や心不全による脾臓のうっ血、細菌やウイルス感染による炎症等が原因で起こります。
症状としては左脇腹の痛みの他に呼吸困難や吐き気、便秘などもみられます。脾臓が巨大になると脾臓への血流が阻害されて組織が壊死してしまい激しい痛みとなるのです。
・尿管結石(左側)− 右の場合と同じです。


ここであげた例はごく基本的なことであり、でてくる症状も必ず脇への痛みに限らない場合もあります。脇への痛みを感じた際に、上記で思い当たるものがあれば参考にしていただければと思います。
時間が経過してもなかなか改善しないものであれば、専門の医師のところで検査をして指示を仰いでください。

おおまかに3つの項目でみてきましたが、いずれもすぐには完治しないものばかりです。はじめは筋肉の凝り、張り、痛みと思っていても症状がなかなか改善されず、他にも気になる症状が出ている場合には我慢をせず、しっかりと検査等を行いましょう。早期に病態がわかれば治療予後も良いです。


《中医学からみた脇痛》

まずは脇痛に関連する中医学独特の身体観を説明していきましょう。

〜気・血・水について〜

気− 「気」とは、人が生理活動を行う際に必要なエネルギー源です。
生まれながらに両親から授かった「先天の気」と飲食物や呼吸などによって得られる「後天の気」とがあります。
「気」のはたらきとして内臓の活動を促進したり血脈(血の流れ道)や経絡(気の流れ道)を推進したりする「推動作用」、体温を維持したり、内臓を温めて活動を促進する「温く作用」、体の表面 を保護し、外邪(外からやってくる侵入者)を防ぐ「防衛作用」、必要以上に体の外に血や水分が漏れないようにする「固摂作用」、代謝を促進し物質を変化させるはたらきの「気化作用」などがあります。

血− 「血」とは人、の生命活動にとって基本となる物質で全身を栄養し潤していきます。顔色や肌つや、毛髪や筋肉などすべて「血」の充足が必要です。また「血」は人の精神活動にも必要なもので「血」が欠乏すると精神的な症状(失眠、健忘、昏迷、不安など)が現れます。

水− 「水」とは、人体中の正常な水分の総称です。
主な作用として潤いを与えることであり、体の表面近くでは皮膚や毛など、深い部分では脳や骨、関節、内臓まで潤します。


〜臓腑について〜

臓− 「臓」とは、五臓とも呼ばれ、肝、心、脾、肺、腎という実質性臓器のことを指し、主なはたらきとして気、血、水の生成や貯蔵といったはたらきを担います。

腑− 「腑」とは、六腑とも呼ばれ、胃、小腸、大腸、膀胱、胆、三焦という中空性臓器のことを指し、主なはたらきとして飲食物の消化をし身体に必要なものは五臓に渡し、不必要なものは排泄するというはたらきをします。

今回の脇痛と関連する臓腑

肝− 「肝」とは、現代医学でいうところの肝臓とは少し意味合いが違い、色々なはたらきをします。
大きなはたらきとして、1つは身体のすみずみによどみなく気を送り出す「疏泄作用」、もう1つは血液量 を調整すべく貯蔵するはたらきがあります。その他にも目や爪、筋肉といったところとも通 じており「肝」の不調がそこに現れたりもします。

胆− 「胆」とは、現代医学でいうところの胆嚢とは少し意味合いが違い、おもしろいはたらきをします。「胆」には「肝」で作られた胆汁を貯蔵し、消化吸収の際に助けるはたらきがあります。また、決断をしたり勇気につながるなどの精神的なはたらきも担うのです。


身体には経絡という気の通り道があります。大きなものでは14本身体を上下に走っていますが「肝」、「胆」に関係する経絡は脇を通 過してそれぞれ足や頭に行くのです。それで「肝」、「胆」の不調は時として脇部に出やすいのです。それではこの脇を通 る経絡に影響を与える原因をタイプ別に見ていきましょう。

・肝鬱脇痛タイプ

先ほども説明したとおり、肝は気をスムーズに流す疏泄作用をもっていますがストレスや怒りなどといった感情の変化にとても敏感で、気の流れが悪くなります。そのために脇を通 る経絡の流れが滞り脇部が張って痛みます。
痛みの症状の他には胸悶(イライラ)、ゲップ、胃液が込み上げる、怒りっぽくて不眠症などです。舌の苔は薄くて白く脈は弦(はじくような脈)です。治療は肝の気の流れを整えつまりをとっていきます。


・湿熱脇痛タイプ

湿とは身体にとって不必要な水分で、身体の中に停滞し重くてだるい感じを出したりするもので、体内で発生するものと外からやってくる場合があります。それに熱が加わると湿熱となります。
具体例として、アルコールの過剰摂取や味の濃い物の食べすぎは体内で湿熱となりやすいですし、高温多湿の環境に長時間いる場合などは外から身体に湿熱が入ってきやすいです。この湿熱が胆の経絡を犯し脇の痛みとなって出てきます。
他の症状として悪寒発熱、口苦、心煩、悪心嘔吐、脂っこい食べ物を嫌うなどです。舌の苔は厚くべっとりとして黄味をおびることもあります。
脈は数弦(速くてはじくような脈)です。治療は熱を発散させて湿を消して肝の疏泄機能をアップさせ流れを良くします。


・お血脇痛

お血とは血の流れが悪くなり臓腑や経絡に停滞したものをいい、きの流れが悪くなったとき(気は血と一緒に巡る)や打ち身や捻挫をして出来ます。脇を痛めてしまうと脇でお血がおきてしまい一定の場所が刺すように痛みます。
他には昼間よりも夜間に痛みが強まります。舌の色は点状に出血があったり暗紫色、脈は弦か細数(細くて速い脈)です。治療は血を活発に循環させて気の巡りも良くして痛みを止めます。


・陰虚脇痛タイプ

肝のはたらきで先ほども説明しましたが、血を貯蔵するはたらきがます。
何か活動する際は、肝で貯蔵していた血が各所にいきますが、慢性的に疲労していたり過労などで身体に必要な血が不足すると(陰虚)肝の経絡が栄養出来ず脇が痛みます。
痛みの他に微熱や自汗、めまいや心悸などがあります。舌の色は赤く苔は少ないです。脈は細数です。治療は陰を滋養して血を養い経絡を和ませて痛みを止めます。


現代医学で検査をしても特に異常がなく、医者のほうから痛み止めや安静を指示された方などは一度中医学治療での診断をお勧めします。
数値やレントゲンなどに現れない症状をひろい、別の角度からのお手当てをしていくことができます。中医学(東洋医学)の治療の基本ベースは目には見えない体内の生命活力エネルギー(気、血、水)のバランス失調の調整にあります。減少したものは補い、多すぎるものは調整することで体調回復をはかります。生命活力エネルギーを良い状態に戻してあげることが大切であることを忘れずに。これを自然治癒力といいます。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1〜2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。
ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。
当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。
それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。
この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。
特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。
顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)
急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子
その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳
アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など
これらの疾患はほんの一例です。
疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。
針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 


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