★★中医学から診た夜泣き★★
中医学では「夜泣き」を『夜啼』(やてい)といいます。
原因は大きく3つあります。
@ 脾や胃が冷えてしまって発症するもの
A 精神的ショック(驚恐)を受けて発症するもの
B「心」が熱の影響を受けて発症するもの

夜啼は、上記の病因により分類され、それによって症状・弁証・治療方針が異なりますので、説明の方も病因病機により分類して各々の弁証・症状・治療・を説明してまいりましょう。

▼夜啼の中医学的説明▼
T、【脾や胃が冷えてしまって発症するもの】
《弁証》
『脾寒夜啼』(脾気虚寒)

《病因・病機》
乳児期に、親の不注意などで沐浴時や睡眠時にお腹を冷やしたり、母親が体を温める力の無い体質(陽虚体質)であったり、妊娠中に、生ものや冷たいものを食べ過ぎた場合は、そのまま胎児に冷えが伝わります。
脾はとても寒さを嫌い、寒さの影響を直ぐに受ける臓器でした。
ですから寒邪は胎児の脾を損傷させてしまいます。
このような状態を「脾気虚寒」といいます。
ここで、寒邪の特性を思い出してください。寒邪の特性*には「収引」と「凝滞」がありました。
「寒凝気滞」といい、寒邪が脾に入り込むと「収引」と「凝滞」の特性により 「気」の流れに滞りが生じることがあります。
中医学で「不通なれば則ち痛む**」という考えがありました。
つまり、気滞は痛みを生みます。
脾は中焦といってお腹の位置にありますから、脾に入った寒邪は腹部の気の流れを停滞させ腹痛を招きます。
さて、寒邪がどの様にお子さんのお腹に入り、どのような機序で腹痛を起こすかが、これで理解できたと思います。
次はいよいよ夜啼が起こるまでを説明します。
ここで今度は陰陽の説明を少し思い出してください。
寒は陰性に属しましたね。そして夜も陰性に属していて、陰性の働きを旺盛にさせました(陰盛***)。
ですから、寒邪も陰性ですから夜になると旺盛になります。
体内の寒邪が旺盛になると「寒凝気滞」の状態が更に悪化し、腹痛が増してしまい子供が泣き出します。これが「脾寒夜啼」です。
(寒邪の特性*は《病因》を、「不通なれば則ち痛む**」は《気血水》を、陰盛***は《陰陽》を参照してください)

《症状》
泣き声が低く弱い・・・・脾が損傷され、運化作用*が低下してしまい、気血の生成不足が起こったことにより、肺の気が不足して起こります。
肺は発声を主っておりますので、肺気の不足は発声**に影響が出てきます。
(運化作用*:「脾」の説明を参照してください。発声**:「気種類」や「肺」の説明を参照してください。)
手足や腹部の冷え・・・・寒邪は陰性に属します。陰性の邪は陽を損傷させます。陽には体を温める作用(温煦作用)がありますので、寒邪により陽が損傷を受け「陽不足」となり、「温煦作用」が低下してしまって起こります。
腹部を揉まれたり摩ると気持ちが良い・・・・寒邪の特性で腹部で気血が凝滞して起こります。(詳しくは外因を参照してください)
乳を飲まない・乳を吐く・下痢・・・・運化作用の低下によるものです。

《治療》
「温脾散寒」といい、脾を温めて寒邪を追い出す治療をします。


U、【精神的ショック(驚恐)を受けて発症するもの】
《弁証》
「驚駭夜啼」(きょうがいやてい)

《病因・病気》
皆さんも経験あると思いますが、乳幼児は何でもないことでも、ものすごく驚いてしまったりします。
この様に乳幼児が精神的ショックを受けことによって発症する夜啼が「驚駭夜啼」です。
ここで言う精神的ショックとは、七情*では「驚」「恐」にあたります。
内因のところでも説明しましたが、過剰な七情は精神不安に繋がります。
精神的ショックを受けたことにより、七情が過剰となり精神不安となり、不眠や夜啼が起こります。
(詳しくは内因の説明を参照してください。)

《症状》
夜中に突然何かを恐れるように激しく啼く・・・・「驚・恐」による精神不安があるためです。
顔色が青白い・・・・精神不安の特徴です。

《治療》
「鎮驚安神」といい驚きを鎮めて精神安定の治療を行います。


V、【「心」が熱の影響を受けて発症するもの】
《弁証》
「心熱夜啼」

《病因・病機》
母乳を与えている母親が、辛いものなや、味の濃いものや、甘いものなどの食べすぎて起こります。
病因のところで説明しましたが、上記のような食べ物の食べすぎ(飲食不節*)は熱を生みます。
その熱が母乳を通じて乳児の体内に入り、こもってしまいます。
やがてこもっていた熱は鬱熱となり炎上します。自然界では炎は上に舞い上がります。
体内でも同じ事がおこり、炎上した熱は体の中では上部にある心に影響を及ぼします。
「驚駭夜啼」でも説明しましたが心が損傷を受ければ精神不安になり「夜啼」が発症します。
この様な病機で発症する夜啼を「心熱夜啼」といいます。

《症状》
泣き声が高い・灯りを見るとさらに強くなく・・・・炎上した熱によって、心火が亢盛して精神不安が起きているためです。
顔が赤い・体に熱感がある・便秘・・・・熱が体内で潜伏しているため、体に熱感があります。熱の特性は上に上がりますので、熱が顔に上がって顔が赤くなります。熱が体内に潜伏することにより体内の水液が損耗され便秘が起こります。

《治療》
「清心導赤」といい心火の亢盛を抑える治療を行います。


以上が夜啼の中医学的説明になります。
いかがでしたか?ご理解していただけたでしょうか?

皆さんに一番理解していただきたいのは、先ず、中医学は生理観や病理観がしっかりしている医学であるということと、病因や病機や症状といったもの全てを考慮に入れて治療方針を決めているということです。
当然、治療方針が違えば使用するツボや漢方薬も違ってきます。
けして、この病気にはこのツボとか、この漢方薬といった短絡的なものではないということです。

最後に、夜啼についての注意事項を幾つか紹介して終わりにしたいと思います。

★★夜鳴き(夜啼)についての注意事項★★
冒頭でも述べましたが、夜泣きは病気ではありません。
お子さんによって期間は違いますが成長にしたがい自然に治ることが多いので、家族の皆さんは必要以上に心配しないで下さい。
但し、なんらかの病気が原因で泣いている場合もあるので、その辺の見極めはしっかり行ってください。

中医学ではお子さんのお腹の冷えや、体内にこもる熱も夜泣きの原因と考えます。
ですから、沐浴や睡眠時にお腹を冷やさないように、また食材や、ミルクの温度等も注意して下さい。
また、妊娠中や授乳期間における、お母さんの冷たい物の摂りすぎや、辛いもの・味の濃いもの・甘いものなどの食べ過ぎといった「飲食不節」も夜泣きの原因になりました。
お母さんも食事には十分注意して下さい。

以上が夜泣きについての説明になります。
何度も言いますが、夜泣きは病気ではありません。
むしろ成長には必要なものです。
成長にともない自然と治ることが多いので、家族の皆さんは決してイライラや必要以上に心配せずにお子さんを見守ってあげてください。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

◎ 当院での治療をお考えへの方へ

= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1〜2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。
これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 


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