子育てを経験された方の中には、お子さんの夜泣きに悩まされた経験がある方も多いと思います。
ところで、夜に赤ちゃんが泣くことを「夜泣き」と思っている方はいませんか?
もしそのように思っていたならそれは間違いです。
夜泣きとは、原因が無いのに赤ちゃんが寝ている間に泣くことをいいます。
ですから何か原因があって夜に泣くものは「夜泣き」とはいいません。
「夜泣き」は早い場合は生後2ヶ月位から始まる場合もありますが、一般 的には6〜8ヶ月位に始まることが多いようです。
又、「夜泣き」は泣き出す時間帯や期間もお子さんによってまちまちで、いつまでもグズグズ泣く子もいれば、突然号泣する子と色々なタイプがありますが、いずれもなかなか寝付いてくれないという特徴があります。
「夜泣き」は原因が無いわけですから病気ではありません。
むしろ、「夜泣き」は赤ちゃんが生活リズムを作るうえで必要な行為なのです。
夜泣きをすることで心配なさるご両親もいらっしゃるようですが、実際に何かしらの病気によるものでなければ特に心配する必要はありません。
ただ、昼間に子育てや仕事に疲れている大人達にとっては睡眠の妨げになったり、日本の住宅事情を考えると、近所迷惑などと気を使いストレスのもとになってしまいます。
色々なところのHPをのぞいてみると、様々な夜泣きグッズや対処法が紹介されております。
それほど夜泣きに悩まされている大人達が多いということでしょう。

ところで赤ちゃんは何故、夜泣きをするのでしょうか?
今のところその原因は、睡眠のサイクルの未熟さや、昼間に受けた刺激によるものと考えられておりますが、残念ながらはっきりしたことはわかっていないそうです。
睡眠のサイクルの未熟さとは、人間の睡眠は深い眠りのノンレム睡眠と、浅い眠りのレム睡眠が繰り返されておりますが、赤ちゃんはノンレム睡眠からレム睡眠への移行が上手く出来ずにレム睡眠時に夜泣きをすると考えられております。

では次に中医学ではどの様に「夜泣き」を考えているのかを、紹介してまいりましょう。


★ ★中医学の基礎概念★★
中医学は独特の理論によって構成されており、独特の専門用語を使用します。
最初はなかなか馴染むことが難しいと思いますので、先ず当HPの『わかりやすい東洋医学理論』をお読みになり、中医学の概念的なイメージを掴んでから、この後を読まれる事をおすすめいたします。

さて、『わかりやすい東洋医学理論』を読まれた方は何となくイメージできたでしょうか?
今度は中医学の基礎的な概念のなかから、「夜泣き」に関係するものをもう少し詳しく説明をさせていただきます。

▼夜泣きに関係のある中医学の生理観▼
《気・血・水》
〈気〉
気は人間が活動するために必要な基礎物質です。
そのため「気」は幾つかの種類や作用があります。

=気の種類=
気の種類には「元気」「宗気」「衛気」「営気」「臓腑の気」「経絡の気」があります。
この中で「夜泣き」に関係があるのは「宗気」です。
「宗気」は肺で作られ、胸中に存在します。宗気の働きは肺とともに、発声や呼吸を行います。

=気の作用=
気の主な作用には、「推動作用」・「栄養作用」・「温煦作用」・「防衛作用」・「気化作用」・「固摂作用」がありました。
このなかで、身体を温める「温煦作用」については「夜泣き」の原因で再度登場しますので、覚えておいてください。

<血>
血は様々な器官に栄養や潤いをあたえます。
ここにも中医学独特の概念があり、血は精神活動の栄養源でもあります。
ですから血の不足は精神不安や不眠を発症させます。

<水(津液)>
水は津液とも言い、体内にある正常な水液のことをいいます。

* 健康な人の気・血・水はスムーズにながれています。
ですから気・血・水が渋滞や停滞を起こすと様々な症状が発現します。
その中の一つに、「不通なれば則ち痛む」という考え方があり、気血水の流れの滞りは痛みを生んでしまいます。

《内臓(五臓六腑)》
さて、中医学で考える内蔵は、西洋医学のそれとは異なる考え方をすることは『わかりやすい東洋医学理論』で説明されております。
ここでは「夜泣き」に関係のある臓腑ついて説明をいたします。

「脾」
脾の様々ある生理作用の中で「夜泣き」と関係がある作用は、運化作用です。
運化作用とは「消化・吸収・運送」のことで、「運化」の「運」が運送を意味し、「化」が消化吸収を意味します。
脾はこの運化作用により飲食物から栄養分を吸収し、気血水を作り、肺を経由して栄養分を全身へ行き渡らせます。
運化作用が失調すると、食欲不振・下痢などの症状が現れます。
又、気血水などの生成不足も生じてしまいます。
脾は「喜温悪寒」といい、温められる事を好み、冷やされる事を嫌います。
冷えは直ぐに脾に影響を及ぼしてしまいます。
ですから冷たいものを採りすぎるとお腹を壊したりするのです。

『肺』
肺の作用の1つに「呼吸を主る」があります。
肺は宗気を作り出し、宗気と協力して呼吸や発声を行っておりますので、肺の気が不足すると呼吸や発声に影響がでます。

『心』(しん)
心の生理作用は血脈を主る・神明を主る・神を蔵する などがあります。
(神明とは精神・意思・思惟活動・といった意味です。)
簡単な言葉で言い換えると、心の主要な生理作用は血を全身に運ぶことと、精神活動の総括になります。
ですから、心が損傷を受けると、精神不安になり、夜泣き・不眠・動悸・不安感・といった症状が発症します。
又、「驚則気乱」といい、過度の驚きは「心気」を乱すといわれ、精神不安を招きます。
* 心の機能活動を現す言葉に『心火』という言葉があり、生体全体の機能活動を促進する作用があります。
ところが、情志失調などにより心火が亢盛してしまうことがあります。
心火の亢盛は、不眠・イライラ・気分が落ちつかない・などの様々な症状を発現させてしまいます。


ご理解していただけましたでしょうか?
我々が慣れ親しんでいる西洋医学とは大分違っていたと思います。
最初はなかなか理解するのは難しかったり、抵抗があったりすると思いますが、生理観の概念が違うからこそ、西洋医学で治らなかった病気が中医学で治ったりすることがあるわけです。
それでは次に生理観の他に中医学の独特の考え方をするものを少しだけ紹介します。
これも中医学を理解する上でとても大事な予備知識になります。


▼ 「夜泣き」を理解するための中医学の基礎知識▼
《病因》
病因についても『わかりやすい東洋医学理論』で概要は説明しておりますので、ここでは夜泣きに関係のあるものについて説明をします。
夜泣きに関係のある病因は「外因・内因・不内外因」の全てになります。

『外因』には、六淫と呼ばれ
「風・湿・熱(火)・暑・寒・燥」の6種類がありました。
六淫は「湿邪(しつじゃ)」「寒邪(かんじゃ)」「熱邪(ねつじゃ)」・・・といった具合に六淫のそれぞれに、「邪」という言葉を付けて呼ぶ場合があります。
因み六淫の「風」は「風邪」と書いて(ふうじゃ)と呼びます。
皆さんがよく言う風邪(かぜ)の語源です。
このように実は皆さんは知らず知らずの内に、中医学に親しんでいるものなのです。
さて、この六淫の中で「夜泣き」の原因になるものとして「寒邪」と「熱邪」があります。


「寒邪」の特性は、@冷す A流れを止める B縮める の3つがあります。

@、 冷す
寒邪は体を冷やしますので、受感すると体に強い冷えを感じます。
また、寒邪は直接脾胃を損傷します。寒邪は陰に属しますので、特に脾陽を損傷します。(脾陽とは後述いたしますが、運化作用と温煦作用と思って下さい。)

A、 流れを止める
寒邪を受感すると気血の流動性が低下します。つまり気血がスムーズに流れなくなり渋滞を起こします。
「気」の説明でも述べましたが気血の渋滞は痛みを生んでしまいます。

B、 縮める
寒いと手足の筋肉は収縮し、かじかんで動かせなくなったりします。寒邪は筋肉ばかりではなく経絡まで収縮させてしまいます。経絡が収縮してしまうと気血は流れづらくなります。


「熱邪」の特性は
@蒸発・炎上
A気を損耗し津液を傷る
B風を生み血を動かす
熱邪の特性は以上の3つがありますが、「夜泣き」では@とAが特に関係します。

@ 自然界では火は上へ上へと燃え上がって行きます。
体内でも同じ事がおこりますので体内で熱邪は上へと昇ってゆき、顔や頭に影響を及ぼします。

A 自然界で火が水を蒸発させるように、熱邪は体内の正常な水液(津液)や正気を損耗させてしまいます。


『内因』には「喜・怒・思・悲・恐・憂・驚」の7種類ありました。
これらは七情と呼ばれます。これら七情はそれぞれ各臓器とつながりがあることもあり、例えば「驚則気乱」といい、過度の驚きは「心気」を乱すといわれています。
「心」は精神状態を統括しておりますから、心気が乱れると、精神不安や精神錯乱を起こします。

『不内外因』には「不節な飲食・外傷・寄生虫・過労・運動不足」などがありました。
特に「夜泣き」の病因となるものは「不節な飲食」が挙げられます。
「不節な飲食」とは食べ過ぎ・飢え・偏食・不衛生な物の飲食があります。
偏食にも色々ありましたが、「肥甘厚味の過食」「辛辣の過食」「生冷の過食」が 「夜泣き」の病因になります。

「肥甘厚味」とは甘い物・味の濃い物・油っぽい物・といった食物をさします。
これらの食べ物は体内に余分な水分や熱を生産させます。
「辛辣の過食」の辛辣とは辛くて熱い味をいいます。
このような食べ物を食べすぎると胃腸に熱がこもります。
「生冷の過食」は生ま物と、冷たい物の採り過ぎを言います。
これらの食べ物は消化能力を下げてしまいます。


又、以上の食物はお子さんの過剰摂取によるものばかりではなく、お母さんの過剰摂取によるものも「夜泣き」の原因となります。
例えば妊娠中にお母さんが「生冷の過食」をすると、冷えがそのまま胎児に伝わったり、授乳期にお母さんが「肥甘厚味の過食」や「辛辣の過食」をしてしまうと、母乳を通 じてお子さんに熱が伝わってしまうことがあります。

《陰陽》
「夜泣き」に関係のある陰陽の分類としては、「寒・熱」があります。
寒熱を陰陽で分類すると、寒は陰に、熱は陽に属します。
体内で寒(陰)・熱(陽)は互いに抑制し合うことで適度な体温を保っております。
ですから、自分で体を温めるエネルギーの無い状態を「陽虚」といいます。
又、陽気は、体を温める他に各臓腑の機能を亢進させる働きもあります。
更に、さきほど臓腑の説明をしましたが、各臓腑は様々な働きがありました。その働きも臓腑によっては、陰陽に分けることができます。
例えば、「脾」では、運化作用*や温煦作用**などが「陽」に分類されます。 このような働きは脾の中の陽の分類なので「脾陽」といいます。
そして「脾陽」の不足を「脾陽虚」といいます。
ちょっと難しくなってきましたか?
では「脾陽虚」をイメージしやすくするために具体的例を紹介しましょう。
夏、暑くて冷たい物を飲み過ぎると、お腹がチャポチャポして冷たくなります。
更に悪化すると下痢や食欲不振になるといった事を聞いたり経験された事があると思います。
脾は「喜温悪寒」といい、冷えることをとても嫌いますので、冷たい物の採りすぎは脾を損傷させてしまいます。
冷たい物が大量に体内に入ってきて、脾が損傷されれば温煦作用の低下は容易に想像がつくと思います。
ですからこのような時はお腹が冷たくなっています。
更に脾の損傷と温煦作用の低下が起これば、それに続いて運化作用の低下が起こり、消化能力が低下します。
ですから先程飲んだ冷たい飲み物がいつまでも消化されずにお腹の中に残ってしまい、チャポチャポします。
このような状態を「胃内停水」といいます。
更に運化作用の失調は、この後食欲不振や下痢を招いてしまうのです。
このような脾の状態が「脾陽虚」です。
さて、このように「脾陽」とは温煦作用・運化作用・などをさします。
「脾陽虚」は夜泣きの原因の1つに入っておりますので是非覚えておいて下さい。
(運化作用*:脾の説明を、温煦作用**:気の説明を、参照してください。)
もう1つ「夜泣き」に関係のある分類で「昼・夜」があります。
昼は陽性に属し、夜は陰性に属します。
ですから夜になると「陰盛」といって、陰に分類される物の働きが旺盛になりやすくなりますので、このこともちょっと頭の中に留めておいてください。

さて、だいぶ中医学の基礎知識も頭に入ってきたところで、夜泣きについて説明をいたします。

 


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