習慣性流産とは、3回以上連続する流産あるいは、早産をいいます。
主な症状に、胎盤がはがれかけるための「性器出血」と、子宮収縮のための「下腹部痛」がみられます。

中医学では「滑胎」(胎児が滑る)といい、体の中のエネルギー不足によって胎位 を維持していくことができないと考えます。
流産の徴候がなく、感染症や頚管ポリープ、器質的異常などの問題がない、初期の出血や下腹部痛は、漢方薬や鍼灸治療が有効といえます。
また、流産直後および妊娠初期から継続して鍼灸治療を受けることにより、自然な状態で流産や早産の予防ができ、胎位 の安定感が得られるとともに、妊娠中にあらわれやすい(つわり、便秘、痔、足のむくみ、脇腹の脹り、疲労感など)諸症状を緩和してくれます。
その他、エネルギーの流れがスムーズになるため情緒の安定感を図ることができ、胎児も健やかに成長していくことができます。

●流産とは・・・
妊娠22W(6ヶ月半ば)未満に、胎児が生まれても生命が維持できない段階で生まれてしまうことをいいます。この時期に生まれてしまった赤ちゃんは、助けることが難しいのが現状です。

〜現代医学的診断・治療方法〜

<原因> 母体側:子宮の異常(位置、大きさ、形)、頚管無力症、子宮筋腫、卵巣嚢腫、母体の病気(腎臓・心臓の病気、感染症)
  母体を中心にした環境:過労、転倒
  胎児側:受精卵の染色体異常、重大な形態異常、子宮外妊娠や胞状奇胎

<治療> 梅毒やトキソプラズマ症といった感染症が原因と思われるときは、その病気の治療を受けます。
  子宮の形や位置の異常、頚管の裂傷や閉鎖不全症などは手術療法が考えられます。
  特に、妊娠の中期にいつも自然に陣痛が起こり破水してしまうようなタイプの習慣性流産の場合は、子宮頚管縫縮手術という手術を行なうことにより80~90%は無事に出産を迎えられます。


●早産とは・・
妊娠22W以後、37W未満で出産してしまうことをいいます。この時期には胎児の発育が完全ではなく、死産になったり、生まれても育ちにくかったり、育っても心身に障害を残したりすることがあります。

〜現代医学的診断・治療方法〜

<原因> 母体側:過労、精神的ストレスなどの環境的なもの、事故やけがなどの外傷
  産科的な異常の閉鎖不全症(頚管無力症)、妊娠中毒症、前期破水
  胎児側:重大な奇形、多胎妊娠、逆子、前置胎盤

<徴候> お産と同様、出血と陣痛とで始まりますが(破水が先に起こることもあります)。
その前に注意して診察を受けられると子宮口が開きかかっていることがわかる場合が多いようです。

<防止> 上記の徴候で見られる切迫流産では、入院して安静をとり、陣痛を抑える薬剤の内服や注射で早産の防止を図ります。

▼中医学的流産・早産のとらえ方▼
中医学では主に「腎」が生殖機能と深く関わっています。
腎の働きが低下することにより、気の働きの一つである『固摂作用』の減退症状があらわれます。
固摂作用とは、血や汗、尿などが不必要に体の外に漏れ出さないようにしたり、出血を抑えたり、臓器や胎児を正常な位 置に保つ働きをしています。
(固め、状態を維持する働きです)
腎のエネルギーが不足することにより、早産、流産、頻尿、尿失禁、脱肛、腹部の下垂感などの症状がみられます。この状態を「腎気不固」といいます。
原因は様々ですが、流産、早産を起こしやすい方の大半は、腎のエネルギー不足が根底にあると考えられています(詳しくは下記の〜臓腑の働き〜を参照して下さい)。

▼中医学的からだのしくみ▼
〜「気」「血」「水」とは〜
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、
これらの3つが体内に十分な量で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。
もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。
さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

〜臓腑の働きとは〜
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。
ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。

「肝」・・ @ 全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。
伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに影響を与えます。
この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
  A 全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。
    例)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、筋けいれんが起こりやすくなったりします。
婦人科疾患としては、無月経、不妊症、月経前の乳房のはった痛み、ストレスにより月経周期が早まったり、遅くなったりする。

「脾」・・ @ 食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
  A エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
  B 血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。
婦人科疾患として見られる症状は白いおりものが多くでる、黄色っぽく臭いおりものがでる、不正出血、月経が早まる、子宮下垂。

「腎」・・   生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。生まれたときにこのエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの発育不良の状態があらわれます。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。
例)骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる、婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。

▼中医学的診断方法▼
妊婦さんの体質や妊娠した際にあらわれた特徴的な症状などから、流産や早産を引き起こしやすい原因を見極め、治療方法を決めていきます。
そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。
その他、妊娠前の月経状態(周期・期間・月経量・質・色、月経に伴う不快な症状など)などからも体の中の状態を把握することができます。
さらに、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)、仕事場での環境状態を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。
その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

▼ 中医学的習慣性流産のタイプと治療方法▼

●腎気不固タイプ●
生殖機能の源である腎のエネルギー不足のため、胎位を維持することができずに流産を繰り返すタイプです。 習慣性流産のなかで、もっとも多いタイプです。

○主な原因
生まれつき虚弱体質、長期間の過労、慢性病、性交過多による腎エネルギーの損傷

○随伴症状
流産の既往がある、妊娠後に腰や膝がだるく無力、下腹部が下がってくるように感じる、めまい、耳鳴り、頻尿あるいは尿失禁、性器出血

○月経の特徴
周期:早まる
血量:多い
色 :薄い赤色
質 :薄くさらさらしている

○治療方法
腎のエネルギーを益し、胎位の安定感を図る「補腎固胎」の治療をしていきます。

●脾気虚タイプ●
食物からエネルギー(気)を生み出す源である「脾」。
この2つの臓器の働きが失調することにより体を養う気や血が作りだせないため、胎児を養うことができず、流産を繰り返すタイプです。
主な特徴として、体全体の機能減退症状がみられます。

○主な原因
生まれつき虚弱体質、飲食の不摂生、過労、あれこれ思い悩むことが多い。

○随伴症状
流産の既往がある、妊娠後に顔が黄色くむくむ、下腹部が脹って下がってくるように感じる、倦怠無力感、吐き気、嘔吐をもよおす
息切れ、話すのがおっくう、味を感じない、食欲不振、泥状もしくは水様便

○月経の特徴
周期:早まる
血量:多い
色 :淡い、薄め
質 :さらさらしている

○治療方法
エネルギーを増やし、胎位の安定を図る「補脾益気」、「固胎」の治療をしていきます。

●陰虚火旺タイプ●
陰陽のバランスが崩れることにより、体の不調がでてきます。
体を養う血、潤す働きの水(陰の部分)が不足し、体の中の陽気が相対的亢進してしまうためにあらわれる症状です。
そのため陽気が盛んになり胎動もその影響を受け活発に動き、流産や早産をまねきやすくなるタイプです。

○主な原因
精神的ストレス、疲労、徹夜が多い(または就寝時間が遅い)、性交過多により体の精や血を損傷する

○随伴症状
流産・あるいは早産の既往があり、妊娠後に痩せる、両頬部の紅潮、手足がほてる、口が乾く、腰がだるく痛む、性器出血

○月経血の状態
月経周期:早まる
量:少ない
色:紅い
質:少し粘る

○治療方法
体を養う血、潤す働きを高め、「滋陰降火」「固胎」の治療をしていきます。


▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。

●腎気不固タイプ●

【生活習慣】
過労を防ぐことが第一です。
消化器をいたわるような食生活も大切です。消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
ダイエットによる食事制限は禁物です。

【食べ物】〜主に腎のエネルギーを補う食べ物を多く摂りましょう〜
(穀類)うるち米、粟米、小麦製品
(豆類)大豆や大豆製品、牛乳
(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類)いか、貝柱
(果物)栗、もも、さくらんぼ
(木の実)くるみ、なつめ、黒ごま、クコの実
(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶

●脾気虚タイプ●

【生活習慣】
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
消化が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。
スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
頭や目の使いすぎは血を消耗させてしまうので、この時期は極力長時間パソコン作業や、夜遅くまでの勉強、仕事は避けましょう。
ダイエットによる食事制限も禁物です。

【食べ物】〜エネルギーを益す食べ物を摂りましょう〜
(穀類)うるち米、粟米、小麦製品
(豆類)大豆や大豆製品、牛乳
(肉類)牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜)山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参             (魚類)いか、貝柱
(果物)なつめ、もも、さくらんぼ
(お茶)杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶

〜体を冷やす食べ物、辛い食べ物、油っこく味の濃い食べ物は胃を刺激し気を消耗させるので避けましょう〜
辛い食べ物・・青唐辛子、ねぎ、コショウなど
冷やす食べ物・・すいか、バナナ、イチジク、なし、苦瓜、薄荷など

●陰虚火旺タイプ●

【生活習慣】
イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、ヨガや気功などの呼吸法やストレッチでリラックスできる時間を作りましょう。
その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。
体を養う血の消耗につながる生活は避けましょう。
睡眠はしっかりとり、血を消耗させやすいパソコンの使いすぎ、テレビの見すぎ、夜更かしは避けましょう。
血を補い、体を潤す働きのある食べ物を摂るよう心がけましょう。

【食べ物】〜体を冷まし、潤す作用のある食べ物を摂りましょう〜
(乳製品)豆乳、牛乳
(肉類)豚の皮、鴨肉、豚肉
(魚介類)いか、牡蠣、すっぽん(とくに甲羅の部分)
(野菜)山芋、白きくらげ、黒きくらげ
(果物)なし、もも、ぶどう
(木の実)クコの実、くるみ、黒ごま
(お茶)桑の実とクコの実のお茶

〜体を温める作用のある食べ物は熱を生み、症状を助長させますので控えめにしましょう〜
(穀類) もち米
(肉類) 羊肉、鹿肉、牛肉
(魚介類)えび、なまこ
(野菜) にら、ねぎ、ししとう、かぼちゃ、しょうが、にんにく
(木の実)栗
(香辛料)酒、シナモン、黒砂糖、ウイキョウ(フェンネル)

▼その他日常生活での注意点▼
・妊娠をしたときには
1. 安静療養する
2. リラックスを心がける(常に不安がつきまとうので)

・過労、睡眠不足、精神的ストレスによる心身の疲労は症状を悪化させます。ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功、など)、軽い散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。

・栄養バランスの摂れた食べ物、特にカルシウムやビタミン類はをしっかり摂り、十分な睡眠をとりましょう。

★ 流産をしたあとは、産後と同じように「気」や「血」が極端に不足し、子宮や卵巣の血流が悪くなり、疲れた状態になっています。同時に体調の悪さと相まって不安感や後悔の念も強くなりがちです。次の妊娠につなげるためにも、できれば流産の直後からケアをされるとトラブルは起こりにくくなります。
産後の養生と同じような養生が必要です。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

◎当院での治療をお考えの方へ◎
= 本来の東洋医学の治療の姿に関して一言 =
当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、「ギックリ腰」や「寝違い」といった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いのですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。

急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに慢性化した、慢性の症状を1〜2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。
大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。
これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 


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