女性ホルモンの分泌量は年齢に応じて変化します。それにより女性のからだは変化しますがストレスなどでバランスが崩れると、月経異常を引き起こすこともあります。ただし思春期や更年期にあたる人の場合は周期に少し誤差が生じてくるのがふつうです。
気になる月経不順の種類となぜ起きるのかを知り、生活習慣を見直していきましょう。

●正しい生理●

・生理周期:生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの日数をいいます。理想は28日周期ですが、通 常は24〜35日が正常な範囲です。周期は一定していることが重要です。 

・生理期間:生理開始日から完全に生理が終わる日までの日数をいいます。通 常は3〜7日が正常な範囲です。

・月経血状態:1日目はやや少なく、2〜3日目は多く、その後は少しずつ少なくなります。

・月経血の色:やや暗めの赤色で、固まりはあまり出ないのが正常です。 


●西洋医学的な月経不順の診断・治療方法●

大きく分けて「周期の異常」と「月経量の異常」に分けられます。

〜周期の異常〜
「頻発月経」・・周期が25日前後と短い月経のことをいいます。治療としては、主に排卵誘発療法や黄体機能賦活療法をおこないます。  
「稀発月経」・・最終月経から1ヶ月以上月経がない状態をいいます。治療としては、主に排卵誘発療法がおこなわれます。

〜月経血の異常〜
「過多月経」・・月経の量が多かったり、8日以上も続いたりする場合をいいます。治療としては、主にホルモン補充療法をおこないます。
「過少月経」・・月経の量が少なかったり、2日程度と日数が短い場合いいます。治療としては、ホルモン補充療法をおこないます。

このように、西洋医学の特徴は診察や検査によって異常が認められたものを‘病気’とみなし、それに対して治療をしていくというものです。ですので、器質的疾患や手術を要する疾患には有効といえます。

●中医学的な月経不順の診断・治療方法●

個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。
・月経量(多い・少ない・ふつう)
・色(淡・紅・紫・暗)
・性質(さらっとしている、粘っこい、血のかたまりがでる)
・おりもの(色・におい・量)
・月経に伴う不快な症状(腰痛・腹痛・嘔吐・頭痛・乳房が脹る)
この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し、なぜ周期が早まったり、遅まったり或いは、月経量 が多かったり、少なかったりするのかを中医学独特の診断方法(後述)を用いて聞きだしていきます。その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。

●中医学的からだのしくみ●

〜「気」「血」「水」とは〜
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

〜「臓腑の働き」とは〜
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてが出来るです。この点をまず理解してください。
中医学的にみた婦人科疾患で重要な臓腑の働きは下記のようになります。

「肝」・・1.全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
2.全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
ですので、肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため (肝が支配している器官である)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足がしびれる、筋けいれんが起こりやすくなったりします。

「脾」・・1.食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
2.エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
3.血を脈外に漏らさないようにする働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。

「腎」・・生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。女性では、月経不順や不妊症、閉経などの原因になります。「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
     
●中医学的月経不順のタイプと治療法●

主に周期による異常(月経先期、月経後期、月経先後不定期)と月経量 の異常(月経過多、月経過少)に分けられます。
これから症状ごとに分類していきますが、誰もが必ずぴたりとタイプに当てはまるわけではありません。2〜3つ併せ持っている方もいますので、その時は自分が多くもっている症状の項をメインにみてください。

【A 月経が早く来る場合(月経先期)】
月経周期が7日以上早まったり、また月に2回月経があったりする状態をいいます。月経先期は主に以下の3つのタイプに分けられます。

★血熱タイプ★

血熱とは、熱が体内にこもりやすく、その熱が血液の中に入ることにより出血しやすい、発疹ができやすい、熱症状などがみられます。

○主な原因
香辛料や辛いものの食べ過ぎ、お酒の飲みすぎ、日頃からイライラしやすいなど

○随伴してよくみられる症状
顔がほてる、口が乾燥する、尿は黄色く、便はコロコロの乾燥した便、にきび・吹き出物が出来やすく、色は赤く、化膿 しやすい

○月経血の特徴
色:ピンク色っぽい淡い赤色
量:少なめ
質:水っぽくさらっとしている
*以前に比べて、量は少なく、日数が短くなったもの

○治療法
体内にこもっている熱と血にある熱を取り除く「清熱涼血」の治療をしていきます。
ツボ:合谷、曲池、行間、隔ユ、三陰交
漢方:イライラする症状が強い・・加味逍遥散
出血症状がある時・・・黄連解毒湯、三黄シャ心湯
にきびがある時・・・荊芥連翹湯 
   
★脾気虚タイプ★

エネルギーを作り出す「脾」の働きが低下することにより
疲れやすいなどスタミナ切れの症状がでてきます。

○主な原因
睡眠不足、過労、汗のかき過ぎ、病気による体力消耗、ダイエットなどによりエネルギーの生成不足、消耗のために引き起こされます。

○随伴してみられる症状
疲れやすく、体がだるい、話すのがおっくう、胃腸が弱く少し食べただけでも、もたれる、下痢、軟便もしくは、便意のない便秘

○月経血の特徴
色:ピンク色っぽい淡い赤色   
量:多め
質:水っぽくさらっとしている
*以前に比べて、量は少なく、日数が短くなったもの

○治療法
脾を元気にし、エネルギーを益す「健脾益気」の治療をしていきます。
ツボ:脾・胃ユ、足三里、中カン、三陰交
漢方:主に四君子湯、六君子湯、
気が不足し内臓の下垂症状がある時・・・補中益気湯
気が不足し出血症状がある時・・・帰脾湯


★腎気虚タイプ★

○主な原因

先天的に虚弱体質、早婚、出産過多、長期間の過労、性交過多などによる腎のエネルギーを損傷させてしまい血が十分供給されないために起こります。

○随伴してみられる症状
腰が重くだるい、めまい、耳鳴り、難聴、尿は色がうすく量は多い、夜間頻尿

○月経血の特徴
色:うすい赤色
量:少なめ
質:水っぽくさらっとしている

○治療法
腎のエネルギーと血を補い、月経を調えていく「補腎益気養血調経」の治療をしていきます。
ツボ:腎ユ、太ケイ、関元
漢方:大補元煎、八味地黄丸

【B 月経が遅く来る場合(月経後期)】
周期が毎月7日以上遅れ、あるいは40〜50日に1回、2〜3ヶ月に1回といった状態をいいます。しかし、月経期間は正常です。
月経後期は主に以下の5つのタイプに分けることができます。

★血虚タイプ★ 

血虚とは、血が足りないために現れる症状です。
そのため血の作用である、体に栄養、潤いを与える働きが低下してしまいます。

○主な原因 
虚弱体質、偏食、夜更かしにより、血がうまく生成されません。また、大手術や大出血のあと、頭や目の使いすぎ、多産のため授乳が多い思い悩み、考えすぎにより血の消耗をまねきます。

○随伴してみられる症状
顔色が悪い、コロコロの便、乾燥肌、髪の毛が抜けやすい、浅い睡眠、夢を多くみる、爪がうすくて割れやすい、めまい、立ちくらみ、動悸

○月経血の特徴
色:ピンク色っぽい淡い赤色
量:少なめ
質:水っぽくさらっとしている
*以前に比べて、量は少なく、日数が短くなったもの

○治療法
気と血を補う「補気養血」です。
気も一緒に補うことにより、血を生み出す働きが強まります。
ツボ:気海、三陰交、隔兪、脾兪、足三里
漢方:人参養栄湯、当帰芍薬散

★肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ★

肝鬱気滞とは、精神的ストレスに弱い「肝」が傷害され、「肝」の気がスムーズに流れなくなるため、気がストレスを感受した箇所に滞り(とどこおり)鬱々とした気持ちが生じやすくなります。       

○主な原因
精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい人、マイナス思考

○随伴してみられる症状
生理前・中に胸や脇・下腹部が脹って痛む、イライラしやすい、ため息がよくでる。
これらの症状はストレスにより悪化します。

○月経血の特徴
色:少し暗めの赤色
量:多かったり、少なかったりとさまざま
質:レバー状のかたまりが出る

○治療法
肝の気のめぐりをよくし、調えていく「疏肝解鬱」です。
ツボ:肝ユ、太衝、ダン中、内関
漢方:四逆散合当帰芍薬散、加味逍遥散
  
★血寒凝滞(けっかんぎょたい)タイプ★

‘寒’の性質は、流れを滞らせる、収斂作用があり、これが血に入ることにより流れが緩慢になり、運行の失調をまねきます。血寒は以下の2つのタイプに分けられます。 
    
○主な原因
1.実寒タイプ・・月経前・中に冷たいものの食べ過ぎ、
寒冷にあたる(冷房や真冬の冷たい風)  
2.虚寒タイプ・・もともと冷え体質の人が寒冷にあたる、薄着(とくに下半身)、
冷たいものや体を冷やす食べ物の食べ過ぎ

○随伴してみられる症状
冷えると下腹部が痛くなり、温めると痛みは軽減する、下半身が冷えやすい、顔色は青白っぽい

○月経血の特徴  
色:黒っぽい赤色
量:少なめ 
質:大きなレバー状のかたまりが血に混じる

○治療法
1.実寒タイプは、経絡(エネルギーの通り道)を温め寒さを散らし、月経を調えていく「温経散寒調経」の治療をしていきます。
ツボ:関元、中極、三陰交、次リョウ
  (お灸も一緒にすると効果が高まります) 
漢方:温経湯、当帰四逆加ごしゅゆ生姜湯

2.虚寒タイプは、体の中を温めてくれる陽気を増させるとともに、血を補い、月経を調えていく「温経扶陽養血調経」の治療をしていきます。
ツボ:腎ユ、命門、三陰交、次リョウ
漢方:大営煎、八味地黄丸合四物湯

★腎気虚タイプ★
「A 月経が早まる場合」の腎気虚タイプを参照して下さい。

★痰湿タイプ★ 
「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、そのまま停留してしまった状態を「痰湿」といいます。性質は、粘々し、気血の流れを阻みます。
 
○原因
冷たい水分の取りすぎ、甘いもの、生ものの取りすぎ

○随伴して見られる症状
白いおりものが多くでる、水太り体質、体が重だるい、痰が多くでる、胸や胃のあたりがもたれる、吐き気、嘔吐をもよおす、手足・目のむくみ

○月経血の特徴
色:うすい赤色もしくは、黒っぽい赤色
量:少なめ
質:粘っこい

○治療法 
「燥湿化痰活血調経」
ツボ:(鍼)足三里、中カン、豊隆、陰陵泉、
   (お灸も一緒にすると効果が高まります) 
漢方:二陳湯、五苓散
  
★血オ(けつお)タイプ★ 

血が経絡(エネルギーの通り道)に停滞し、気・水の流れを阻むことにより関節痛などの固定痛、内出血をしやすい、きれいな血が全身へうまく供給されないため皮膚が乾燥しやすい、知覚の低下、しびれなどが起こります。また、血が停滞した部位 に固いしこりができ痛みを助長させます。

○原因
ストレス、冷え、外傷、打撲、手術によるうっ血、過労

○随伴してみられる症状
固定した・刺されるような痛み、或いは絞られるような痛み、
顔色(とくに目のまわり)の黒ずみ、口・唇がくすんだ紫色、
青あざができやすい、皮膚がカサカサする
   
○月経血の特徴
色:赤黒い色
量:多め
質:粘りがあり、レバー状のかたまりが血に混じる

○治療法
血の流れを良くし、停滞したしこりを取り除いていく「活血化オ」の治療をしていきます。
ツボ:隔ユ、血海、三陰交、足三里 
漢方:桂枝ぶくりょう丸、折衝飲、桃紅四物湯

【C 月経が早く来たり遅く来たりする場合(月経先後不定期)】
周期が定まらず、早まったり遅れたりする状態をいいます。
主に肝鬱気滞、脾気虚タイプ、腎気虚タイプにみられます。

★肝鬱気滞タイプ
「B 月経が遅く来る場合」の肝鬱気滞タイプを参照してください。

★脾気虚タイプ
「A 月経が早まる場合」の脾気虚タイプを参照してください。

★腎気虚タイプ
「A 月経が早まる場合」の腎気虚タイプを参照してください。

【D 過多月経】
月経量が普通より多かったり、あるいは日数が長くなる状態をいいます。
主に脾気虚タイプ、血熱タイプ、血オ(けつお)タイプにみられます。
  
★脾気虚タイプ
「A 月経が早く来る場合」の脾気虚タイプを参照してください。

★血熱タイプ
「A 月経が早く来る場合」の血熱タイプを参照してください。

★血オ(けつお)タイプ
「B 月経が遅く来る場合」の血オタイプを参照して下さい。
  

【E 過少月経 】   
月経量が少ないか、あるいは日数が短いもので、甚だしいときは無月経となります。
主に血虚タイプや血オタイプに多くみられ、血寒凝滞や腎気虚、痰質タイプにみられます。

★血虚タイプ
「B 月経が遅く来る場合」の血虚タイプを参照して下さい。

★血オタイプ
「B 月経が遅く来る場合」の血オタイプを参照して下さい。

★血寒凝滞タイプ
「B 月経が遅く来る場合」の血寒凝滞タイプを参照して下さい。

★腎気虚タイプ
「A 月経が早く来る場合」の腎気虚タイプを参照して下さい。

★痰湿タイプ
「B 月経が遅く来る場合」の痰湿タイプを参照して下さい。


それぞれのタイプに合った生活養生・食養生は『月経不順・2〜食養生篇』をご覧ください。

 


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