西洋医学的な耳鳴りの捉え方

今日では耳鳴りを完全になくすことのできる薬や決定的な治療法はありません。
最新の治療法としては「TRT療法」が挙げられます。
「TRT療法」とは?
 耳鳴りを「意識しないように訓練する」
そして、「それに慣れる」ということに焦点を挙げた治療法
耳鳴りを知覚しないように訓練する、
つまり、音に慣れるということを焦点に挙げた治療法です。

 耳鳴りについては現代医学では原因がよくつかめていません。
根本的な治療法も確立されていないのが実情です…

東洋医学的な耳鳴りの捉え方

東洋医学(中医学)では…

1.体内で生まれた病因物質(邪)によって耳の感覚が妨げられる
2.内臓の機能が衰え、全身の活動に必要な基本物質(気・血・津液)が不足する

ことによって耳が正常に機能することができなくなるために、耳鳴りが起こると考えます。

 耳などの感覚器(目・舌・唇・鼻・耳)は、それぞれ五臓(肝・心・脾・肺・腎)の機能と密接に関係し、耳は腎と関連が深いと考えられています。

中医学の腎とは?
現代医学でいう腎臓の働き以外に、
内分泌(ホルモン)系、脊髄、脳の働きまでひっくるめた幅広い意味があります。

中国医学独特の考え方

「腎は精を蔵す。精は髄を生じ、脳は髄の海」
腎の精とは?
人間の成長、発育、生殖にとても必要であり、現代医学でいうホルモン系に似ています。
精は、生命力の根源である元気をもたらしてくれます。
よく「精が出るね!!」などと言ったりしますが、この考え方がもとになっているのかもしれませんね。
精は腎臓を介して活性化され、元気というエネルギーを作りだします。

骨や髄は精から作られ、髄が集まって脳ができるという考えかたから、感覚器とつながる脳も腎と密接に関係しています。

つまり、中医学でいうところの腎のエネルギーは精を蔵し、髄を生み、脳に通 じて耳の働きと関わる臓腑なのです。そして、病気による消耗や老化による腎精の不足が基盤となって、脳が空虚になり、耳鳴りを引き起こすと考えています。
故に東洋医学では(中医学)では、おおもとになっている腎をベースに治療します。

耳鳴りの原因を診断するには?

 耳鳴りの症状は耳に集中して現れますが、
中医学ではその病因の多くは、 
内臓の失調(肝・心・脾・肺・腎)にあると考えています。
 この為、耳鳴りを診断する際に耳以外の部位も観察、診断しなければ、よい治療効果 を得ることができません。

 耳鳴りをタイプ別に区別すると…
虚・実という2つのタイプに分類することができます。
◎ 病因物質によって起こる耳鳴りは「実」
◎ 基本物質の不足によって起こる耳鳴りは「虚」

更におのおの2つの計4つに分類することができます。

タイプ1.肝火による耳鳴り(肝火上炎)……実

 肝の内臓の失調が欝結しているタイプの人です。
肝の気の欝結状態が続くと…
火を生みだす原因のひとつになります。
肝の気は、スムーズに流れるのを好みます。流れがスムーズでなくなると、欝結(気の渋滞)を引き起こし、それが長引くと熱化します。これが火を生み出す過程になります。
火には上昇の性質があり、昇発(肝の機能形態。春になると若芽がすくすくと伸びるように体の上部や外方に向かって機能を発現させます)を主る肝の火はさらに上昇しやすくなり、頭部の症状が最も多く現れます。

主な症状
・ 耳鳴りの症状は情緒の変化に左右されやすい
・ 気分が滅入ったり、激怒などにより急激に起こる
・ 耳が張ったり、耳痛がある。
随伴症状
口が苦い・目が赤い・便秘・尿が赤いなど

タイプ2.痰火による耳鳴り(痰火欝血)……実
  
栄養の代謝が悪くなるタイプの人です。
油もの、飲酒等の過食などで食生活の不摂生が脾の機能を失調させてしまい、代謝が悪くなり基本物質の1つである津液の流れが滞り、粘液性の病因物質に変わります。

中医学の脾とは?
 脾の働きは口の中に入った食べ物が胃に届くと、胃は食べ物を更に細かくします。その栄養物を消化吸収して血に変えて全身へ運ぶ準備をします。血を運ぶだけでなく秩序を保ちながら正常に運搬されるように支持します。脾は湿気などを嫌がる性質を持っています。西洋医学の脾臓とは違って主に、消化吸収機能、栄養代謝機能を担う重要なところです。

主な症状
・ 重く濁った音がする。
・ 耳が閉塞してはっきり聞こえずらい
随伴症状
口が苦い・口が粘る・めまい・頭重感・大小便がすっきりしないなど

タイプ3.腎精虚損による耳鳴り(腎精虚損)……虚
 
生命のエネルギーのおおもとが不足するタイプの人です。

腎の衰えからくる虚証の耳鳴りはジージーとセミが鳴くような小さな音が持続し、周りが静かになった夜間など、特に気になるといった特徴があります。この他、眠りが浅い、のぼせ、イライラ感、といった症状を伴うこともあります。
主な症状
・ 蝉の鳴くような低い細い音の耳鳴りがする
・ 夜になると耳鳴りがひどくなる
随伴症状
不眠・聴力の低下・腰や膝がだるく力が入らない
 
タイプ4.脾胃虚弱による耳鳴り(脾胃虚弱)……虚
 
消化吸収力が低下してしまっているタイプの人です。

虚弱体質や過労、ストレス、食生活の乱れなどによって脾胃の消化吸収力が低下すると
栄養分を全身に送り出す力が不足してしまいます。
耳が栄養不足になって起こってしまう耳鳴りです。

主な症状
・ 疲労で耳鳴りが憎悪。休むと良くなる
・ 立ち上がったり、かがんだりするときに憎悪
・ 耳の中が空虚になる感じや冷える感じがある
随伴症状
倦怠感・脱力感・めまい・腹部膨満感・食欲減退・下痢しやすいなど。

耳鳴りにもさまざまなタイプがあることが少し理解して頂けたでしょうか?
中医学はお一人お一人の症状に合わせて治療方法がことなります。

具体的には・・・

治療方法(方針)
タイプ1.肝火によるもの
「 清肝瀉火 」
肝の火を清瀉し、少陽経脈(耳をまとうツボの道筋)の疏通をする促すことによって耳の通 りを良くします。
漢方  竜胆瀉肝湯 …ストレスや情緒不安によって誘発される耳鳴り

タイプ2.痰火によるもの
「 清熱化痰 」
熱を抜き去り、体に生産された痰湿を改善することによって耳の通りを良くします。
漢方 黄連解毒湯 抑肝散加陳皮半夏…耳の閉塞感が著しく、頭重感などを伴う耳鳴り

タイプ3.腎虚によるもの
「 補益腎精 」
腎精を補って耳を滋養し、さらに局部の気血運行を促します。
漢方
耳聾左慈耳鳴丸…昼夜の別なく常時つづく耳鳴り
腎を強化する補腎薬を中心に用いる。腎の精を補う熟知黄や、山茱萸など六味地黄丸の成分に、頭部の興奮を鎮めて精神安定作用のある磁石を加えた、耳鳴丸のような処方を基本に、症状によって他の処方や薬物を加えて治療する。

タイプ4.脾胃虚弱によるもの
「 益気健脾 」
健脾により気血の生化や気血運行を促し、耳の補益をはかります。

漢方 補中益気湯・・・疲れたときに憎悪する耳鳴り

〜 食養生 〜
 養生とは自ら生命を養うと書きます。
食事に気を配って耳鳴りに効能作用のある食事を心がけましょう。
こちらもタイプ別に明記してあります。ご参考ください。


1.肝火上炎タイプ

涼性の大根や梨  菊花 セリ 柿 くらげ セロリ など
菊花
昔は菊枕というのがあって、菊の花びらを乾燥させた物を詰めた枕だそうです。今で言うアロマテラピー(芳香療法)ですが、頭痛、めまい、耳鳴りなど神経系の病気に効果 があります。菊の花には 野菊花と甘菊花の2種がありますが食用になるのは甘菊花の方です。
9月9日の重陽の節句といって、菊の花びらを杯に浮かべて菊花酒を飲んだそうです。
また、このタイプの方は・・・
辛温燥熱の性質を持つタバコ・アルコール・唐辛子・にんにくなどの食品を控える必要があります。夜は濃いお茶やコーヒーを飲まないほうが無難です。
特にコーヒーは辛温助火の弊害があり、耳鳴りを憎悪する作用をもつといわれています。

2.痰火欝結タイプ

さっぱりとした野菜類を中心としたメニューをお薦めします。
(例えば、昆布・海藻と大根のスープ・薄味の味噌汁など)

日頃の運動不足、不摂生な食事など、生活のリズムをまず調えることが肝心です。

3.腎精虚損タイプ

 日頃の生活において、まず、過労を避けることが大切になります。
黒ゴマ・黒豆・牛乳・合鴨のスープなど

4.脾胃虚弱タイプ
 
レンコンの梅肉あえ 山芋など

 山芋は中国語で「山薬」とも呼ばれています。古来より滋養強壮の漢方薬としても、用いられてきた野菜です。また消化酵素を多量 に含んでいますので、胃弱の方におすすめの食材です。



最後に…
 同じ東洋医学の中でも、この治療方法は中医学を勉強していないと上記のような診断はできません。
実際、中医学を主とした治療を行っている治療院は日本でも数少ないのが現状です。
耳鳴りがあるからといって、耳の近くに針をさせば、改善されるという簡単なものではありません。
 耳鳴りの原因となっている体の中のひずみを調整することが、根本的な治療になることをここで強く述べさせて頂きます。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 


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