1.●過敏性大腸炎(過敏性腸症候群)●

最近、テレビの健康番組や雑誌などを見ていると「過敏性大腸炎」を取り上げている事がよくあります。皆様も何度か目や耳にしたことがあるかと思います。実際「過敏性大腸炎」で悩まされている患者さんはここ数年急増しきており、10年位 前から消化器外来でもかなりの割合(3〜5割)を占めるようになってきていると言われています。(男女比では1:1.6でやや女性の方が多いみたいです。)
さて、皆さんは「過敏性大腸炎」と聞いてどんな病気だと想像しますか?
{慢性的な下痢の症状があり、通勤途中で電車から降りてトイレに駆け込んでしまうような病気}などとイメージされる方も多いのではないでしょうか。しかし「過敏性大腸炎」
の症状はそれだけではありません。それでは「過敏性大腸炎」(過敏性腸症候群)の説明を始めたいと思います。


★『過敏性大腸炎』は西洋医学的病名★
まず、『過敏性大腸炎』(過敏性腸症候群=IBS)という名前ですがこれは西洋医学的病名です。では西洋医学では『過敏性大腸炎』をどのように捉えてどのような治療をしてゆくのでしょうか。
▼西洋医学的な捉え方と治療▼
【概念】
胃腸の働きは交換神経と副交感神経によって支配されていますが、そのバランスが過度のストレスや感情、食事、気候の変化などの要因が重なり崩れると腸管が刺激に対し過敏になりすぎ蠕動運動を早めたり止めたり局所的痙攣が起こり下痢や便秘・下痢と便秘の繰り返し・腹痛などを起こします。従来より「慢性腸炎」と診断されていたもの多くはこの範疇です。西洋医学では症状によって「便秘型」「下痢型」「交代性下痢・便秘型」に分類しております。男性は下痢型、女性は便秘型が目立つようです。尚、胃腸の構造には全く異常はなく潰瘍等も出来ていない状態です。

【成因】
心理社会的な要因が関与していることが多いといわれ、自律神経失調症や心身症の一部とされています。

【症状】
便秘・下痢・便秘と下痢の繰り返し・腹痛などの消化器症状の他には頭痛・頭が重い・肩こり・眩暈・動悸・倦怠感・不眠・ゲップ・腹部膨満・腹鳴・放屁などの症状を伴うこともあります。

【治療】
1.増悪因子(ストレス・食事・アルコールなど)があれば除く
2.緩下薬・下痢止め薬・消化機能改善薬・消化酵素薬の投与。また、精神の要因が強い場合は心理療法・精神安定剤などの投与があります。

以上が西洋医学的な「過敏性大腸炎」の捉え方と治療になります。

次に中医学的(東洋医学)な説明に入りますが、その前に少しだけ中医学について説明をしたいと思います。

★ 多くの方が知っているようでよくわからない東洋医学★
皆さんの中には東洋医学のことを中国伝承医学と思っている方も多いかと思います。しかし中国と東洋は同じ意味ではありませんので、この考えは正しくはありません。勿論、中国伝承医学も東洋医学に入りますが、インドやチベットの伝承医学も東洋医学に入るからです。そして中国伝承医学のみを意味する場合は「中医学」と呼びます。因みに西洋医学にも伝承医学はあります、例えば皆さんもよくご存知の「アロマセラピー」や「ホミオパシー」「メディシナルハーブ」などです。本来はこれらも西洋医学に入ってしまいます。ですから皆さんが病院などで受けている医学だけを意味するときは「現代医学」と呼びます。
さて芸術や思想などの世界でも西洋と東洋の概念が違うように西洋医学(現代医学)と東洋医学(中医学)もまた全く別 物と言っても過言ではないくらい概念が違います。身体の仕組みから病気が発症する過程や治療の方針にいたるまで、全く違う観点や考え方をします。例えば現代医学では「膵臓」という臓器が存在するのに対して中医学では存在しません。逆に現代医学には無い「三焦(さんしょう)」「心包(しんぽう)」といった臓腑が中医学には存在したりします。これは現代医学は物理的に目や検査器具で見える物を見ているのに対して中医学は目には見えない『働き』を見ているからなのです。
いかがですか?おそらく今これを読んでいて混乱をしてきている方も多いと思いますが心配しないで下さい。今ここで知って頂きたかったのは我々の身近にある現代医学と中医学とでは根本的に考え方が違うという事を理解して頂きたかったのです。しかも中医学という学問は「天人相応」「陰陽論」「五行学説」といった中国古来の思想の上に成り立っている学問です。{「五行学説」「天人相応」については後に簡単に説明します}ですから「中医学の○○は現代医学の□□だ」といった単純に繋がるものではありません。だからこそ病院で治らなかった疾患が「中医針灸」で治るのです。
しかしながら我々は幼い頃から医学に関しては現代医学の概念で教育を受けていますので、最初はなかなか中医学的な考え方に戸惑いがあると思います。ですからここでは少しでも中医学的な思考を理解して頂く為に、まず中医学から見た健康な身体の状態と不健康な状態を簡単に説明します。

*「五行学説」
古代中国の哲学理論です。世の中の全ての物は「木」「火」「土」「金」「水」の五種の基本物質(性質)に分類することができ、その中で生じる様々な変化やその相関関係であらゆることを説明するという考え方です。後ほど病理の方で五行学説の一部を使って説明いたします。

*「天人相応」
「天」は自然界を意味し「人」は人体構造や人の生理的や病理的変化を意味します、そして「天」と「人」を作っている要素は同じであるという考え方です。ですから自然現象と人体に起こる変化を結びつける事が可能です。簡単に言ってしまえば「暑くて夏バテした」などといった具合です。これは中医学の大きな特徴の一つで現代医学にはない発想です。つまり中医学では気候の変化と身体の変化を結び付けて考えます。逆を言えば治療も気候の変化を考慮に入れて進行してゆきます。具体的に言えば同じ疾患であっても季節によって使用する薬やツボが違うということです。

▼中医学的生理観と病理観▼
◎ 人の身体は何で構成されている?◎
我々は生きる為に呼吸をして食べ物を食べ水分を補給します。現代医学ではこれらが血や肉や骨やエネルギーなどに変わり人を構成する要素へとなってゆきますが、中医学では体内に取り込まれた物は「気」「血(けつ)」「水」を生むと考えます。そしてこれらが人を構成します。では「気」「血」「水」とはいったい何でしょう?

【気】・・・全ての源。一口に言えば活力エネルギーの源であり身体を構成する大事な要素です。
中医学では「気」はとても流動的な『物質』と考えています。そして「気」の密度が低く流動性が高い状態の時を『陽』逆に密度が高く流動性が低い状態を『陰』として二分します。「気」の主な作用は飲食物や呼吸によって取り入れた空気をエネルギーに変えたり「血」「水」を身体の隅々まで運んだり、外部からの様々な身体に対する害に対しバリヤを張ったり、身体を温めたり、体から余分な水分(汗・尿・血)が出ない様にしてくれています。
中医学では「気」はとても重要です。その証拠に「天気」「元気」「やる気」「気のせい」など日本語にも「気」という文字を使った言葉が多いですよね。

【血】・・・皆さんの知っている血液に近いものですがイコールではありません。
「血」(けつ)の作用は全身に栄養分を行き渡らせています。その他には精神活動を支えています。このあたりは現代医学の血液と違う点です。

【水】・・・体内の「血」以外の体液
「水」は本来「津液」と言います。主な作用としては身体を潤しています。
**「血」「水」は身体の余分な熱を下げる作用もしております(車のラジエターの水を想像してください)

◎ 健康な身体の「気・血・水」◎
健康な人の身体の状態はこの『気』『血』『水』が多くも少なくもなくバランスよく且つ滞りなく流れている状態です。もう少しイメージしやすいように川に例えてみましょう。
「気・血・水」がバランスよく流れている状態は、あまり人が入って来ないような山の中の清流をイメージして下さい。魚も沢山棲んでいるでしょうし、飲んでもとても美味しく喉を潤してくれるでしょう。次にバランスが崩れた状態を説明します。

◎ 「気・血・水」のバランスが崩れた状態◎
1.「気・血・水」が少なくなった状態をそれぞれ「気虚」「血虚」「津液不足」といいます。川に例えれば水量 が減ってきている状態です。雨も降らずに放っておくと大変なことになってしまいます。
2.「気・血・水」の流れに滞りが生じた状態を、それぞれ「気滞」「オ血」「痰湿」といいます。川に例えると流れに淀みが生じヘドロでも浮いている状態をイメージしてもらえればよいかと思います。清流の時は飲む事も出来たでしょうが、同じ川でもこうなってしまったら飲むどころか近付きたくもないですし、逆に人間に害を与えてきます。

いかがですかイメージできました?
そして簡単に言ってしまえば針灸治療とはこの崩れたバランスを調整して元のバランスのとれた清流の状態に戻す事をしているわけです。


▼ 中医学的病気の診たてとは?▼
次に崩れたバランスを元の状態に戻す為に情報を収集します。
まず最初にどのようにバランスが崩れているのかを診ます。つまり「気虚」なのか?それとも「血虚」なのか?はたまた「気滞」なのか?・・・etcですね。
バランスがどのように崩れているのかがわかったら、次はそれが何処で起きているのかを調べなければいけません。例えばその場所が体表なのか?経絡と言って「気」「血」が流れる通 路で起こっているのか?それとも体表ではなくて体の中の内臓なのか?バランスが崩れている場所を特定せねば治療方針は立ちません。因みに「過敏性大腸炎」の場合は内臓にバランスの崩れが起きていることが多いのです。
勿論、原因が何なのかを知ることも大事です。
それと中医学の特徴の一つでもあることなのですが患者さんの体質を知るということも大事なことです。
まだ幾つかあるのですが今回は省略させていただきますが、最終的には
1.「何が原因で」・・・病気の原因(飲食物・ストレス・喜怒哀楽・熱・寒・湿・・・etc)
2.「何が」・・・・・・『気』『血』『水』のどれが
3.「何処で」・・・・・体表・経絡・内臓(臓腑)・・・等
4.「どうなって」・・・どの様にバランスが崩れているのか
5.「どうしたのか」・・症状
これらの情報を収集し患者さんの身体がどのような状態なのかを判断いたします。このようにして決定されたものを『証(しょう)』と言います。『証』とは現代医学の病名に近いものです。ですから冒頭で述べたように「過敏性大腸炎」とは現代医学の呼び方になるわけです。
そして『証』を決定することを「弁証(弁証)」と呼んでいます。次に「論治(ろんじ)」といって決定した『証』に対して治療方法を決めてゆきます。ここまできて始めて使用するツボや漢方薬を選ぶことができるようになります。そしてこの一連の流れを「弁証論治」と言いどんな疾患に対しても行ってゆきます。ですから最初から「この病気にはこのツボ」みたいな単純なものはありません、例えそれが肩こりであってもです。安易にコッテいる場所に針をさしているわけではありません。

▼ 中医学的内臓の働き▼
先ほども述べましたが「過敏性大腸炎」の場合、バランスの乱れは内臓に多くみられます。そこで少し中医学的に見た内臓の説明をいたします。よく「五臓六腑にしみわたる」などと言いますが、その五臓六腑の事です。中医学では内臓に現代医学とは別 の働きも持たせています。そこで今回は「過敏性大腸炎」に関係する臓器にしぼり作用と特徴を説明いたします。

【脾】
食べた物から「気」「血」「水」を作り肺や心に送ります。又、体内の余分な水分の気化をしています。思い悩んだりすると障害されやすく「気虚」を起こします。又、湿気をきらいます。五行説では「土」の性質を持ちます。
【腎】
体内の水(水液代謝)を管理し脳を栄養したりします。精を貯蔵します。精とは生命の根本をなすもので成長や生殖を支え、両親から受け継いだ『先天の精』飲食物から作られる『後天の精』があります。よく「精が出るね!」などと言いますよね。
【心】
血の循環を行います。「精神活動」を司ります。このあたりも現代医学には無い観点ですね。
【肝】
気血の流れを円滑にします。また血を貯蔵することにより循環血量の調整をします。
五行説では「木」の性質をもちます。「木」はノビノビと大地に根を張り、枝を天高く大きく伸ばします。「木」の性質の「肝」もノビノビした状況を好みます。ですからストレスがかかると肝の気は「気滞」をお越しやすいです。そして「気滞」は熱に変化します。

以上が「過敏性大腸炎」に関係する内臓の働きと特徴です。それでは以上の事をふまえて中医学的「過敏性大腸炎」の捉え方を説明してゆきます。


▼中医学的「過敏性大腸炎」の捉え方▼
中医学では「過敏性大腸炎」は精神的・社会的ストレスの他に過労と食生活にも原因があると考えます。また現代医学では「過敏性大腸炎」と一括りにされていますが、中医学では分類(弁証)の仕方によってだいたい2〜8通 りに分類します。これは弁証を大きくするか細かくするかの違いであり、いずれもバランスを崩している臓器は「肝」「脾」「腎」が多いようです。今回は4つに分類してみたいと思います。

まず最初に4つの分類を簡単に紹介します。
1.脾の気が不足して起こる・・・・・・【脾虚湿盛証】
2.脾と腎の陽気の不足で起こる・・・・【脾腎陽虚証】
3.脾の気と心の血の不足で起こる・・・【心脾両虚証】
4.肝の気が脾をいじめて起こる・・・・【肝脾不和証】(肝脾不調証)

以上の4つの分類になります。
では、それぞれの病因〜病機・症状・治則・ツボ・漢方薬の説明をします。

**脾虚湿盛証**
【病因病機】
内蔵の特徴で述べましたが「脾」は湿気を嫌います。冷たい物や生ものなどを食べ過ぎると身体のなかで余分な水分を生みます。すると「脾」はこの余分な水分により気の不足をおこします。この状態を『脾気虚』と呼びます。『脾気虚』になれば当然「脾」が行っていた働きは衰えてしまいます。「脾」の作用である水分の気化作用が衰えてしまえば益々体内に余分な水分が停滞してしまい、下痢や軟便が生じます。ひどくなると少量 の冷たい物を口にしただけでも下痢をしてしまったりします。程度の軽いものは皆さんも日常生活で経験があると思いますので理解するのも簡単ではないでしょうか。
【症状】
症状としては脾の機能が低下していますから、冷たいものを口にすると直ぐに下痢になったり、水様状の便あるいは軟便になったりします。またお腹が鳴ったり腹痛がおきたりもします。
【治側】
『健脾化湿』といって脾を元気にさせる(健脾)ことにより余分な湿気を取り除いてゆく(化湿)治療をします。
【ツボ】
『豊隆』『足三里』『陰陵泉』『三陰交』『中カン』『脾兪』『章門』『太白』
【漢方薬】
『二陳湯』『四君子湯』

**脾腎陽虚証**
【病因病機】
体質的に虚弱体質や過労や病にかかって時間が経ってしまうと「脾」と「腎」の陽気と言って身体を温める機能が低下してしまいます。勿論「脾」が行っていた飲食物をエネルギーに変える力も減ってしまい、余分な水分を気化する力もなくなります。一方、水を司っている「腎」では「水湿内停」といって水が溜まった状態になってしまいます。
【症状】
身体を温めている機能が低下していますから、全身や四肢又は下腹部の冷えや腎の症状が現れ易い場所である膝や腰に冷痛があったりします。水分代謝に関わる脾と腎の機能が低下していますので長期的な軟便と下痢の繰り返しや、食後すぐに腹痛やお腹が鳴ったりします。又、便は水様状や白い粘液が混じったりします。余分な水分が体内にありますから顔面 や肢体に浮腫が現れます。この証の原因は虚弱体質や疲労ですし体も冷えていますから、冷えや過労で症状は増悪し休んだり温めたりすれば軽減します。
【治側】
『温腎健脾』といって腎を温め脾を元気にすることによって、身体の冷えを取り除き水分代謝の改善をしてゆきます。
【ツボ】
『天枢』『中カン』『足三里』『脾兪』『章門』『関元』『気海』『太谿』『腎兪』『命門』
【漢方薬】
『理中丸』『合四神丸』

**心脾両虚証**
【病因病機】
ここで「脾」の働きをもう一度思い出してみましょう。脾は「運化」と言って食べた物から「気」「血」「水」を作り肺や心に送っていましたね。また思い悩むと障害されやすい臓器でもありました。「心脾両虚証」とはストレスなどで思い悩むことにより脾が障害され「運化」作用が低下しておこります。「脾」で「血」が作られず「心」へ「血」が送られて来ないのですから「心」では「血」の不足がおきてしまいます。この状態を『心血虚』と言います。つまり『脾気虚』と『心血虚』が同時に起きている状態です。「脾気虚」ですから脾で「血」「水」を十分作ることができません。「血」「水」は身体の余分な熱を下げていることは前に述べましたが、この証では『陰虚熱』といって「血」「水」の不足による熱状態も現れます。
【症状】
症状としては「心血不足」から現れる不眠・動悸・健忘や夢を多く見るようになったり「脾」の症状である飲食の減少やお腹が張った感じや倦怠感などが現れます。また便の方は緊張すると下痢をしたり、熱症状からくる便秘も現れます。また便秘と下痢を繰り返したりします。
【治側】
『補益心脾』心の血と脾の気を補って症状の改善を行います。
【ツボ】
『血海』『隔兪』『心兪』『脾兪』『足三里』『三陰交』『気海』『章門』『太白』
【漢方薬】
『帰脾湯』

**肝脾不和証(肝脾不調証)**
【病因病機】
「過敏性大腸炎」の代表的な弁証です。
臓器の特徴のところで「脾」は「土」・「肝」は「木」の性質を持つと述べました。これは「中医学の説明」で述べた五行学説による分類です。ここで五行学説を使って「肝」と「腗」の関係を説明します。ではまず、自然界において「木」と「土」の関係を考えてみましょう。「木」は成長したり生存するためには「土」から栄養分を吸い取らなければなりません。逆に言えば「土」は常に「木」に栄養分を奪われていると考えます。つまり「土」は「木」に克されている関係であるといえます。五行学説ではこういう関係を「相克」と呼び「土」と「木」の関係は『木克土』(もっこくど)といいます。「肝」と「脾」の間にもこの「木克土」の関係が存在していて「肝」が「脾」を克した時に現れるのがこの「肝脾不和証」(肝脾不調証)です。証名に使われている「和」や「調」は「調和」の意です。肝は健康であれば「気」「血」の流れを円滑にする機能をしているわけですから、本来は「脾」と調和して「脾」が行っている摂取物を「気」「血」に変え上にある臓器(心・肺)に送る作用を補助していなければなりません。しかしストレスなどの原因で肝が障害されれば「脾」との調和が崩れてしまいます。このような状態を「肝脾不和証」(肝脾不調証)と呼びます。
「過敏性大腸炎」の場合ストレスに弱い肝はストレスを受けると「気」の流れが滞りを起こしてしまい、滞った「気」は熱化してしまいます。やがてその影響を「脾」が受けてしまい「脾」は「気」の不足を起こします。
【症状】
症状としては「肝」の「気」が停滞してることによりガスが溜まりやすくなったり、お腹が張った感じや両脇がすっきりしないなどといた不快感が起きたり、イライラや怒りっぽくなったりもします。また気が停滞して熱化したことによる便秘も現れます。緊張やストレス・イライラで症状は増悪します。「脾」の「気」の不足もありますから「脾気虚」からくる下痢も現れます。この証の特徴は症状に便秘と下痢が混在するところにあります。つまり症状としては便秘と下痢の繰り返しになります。
【治側】
『疏肝健脾』といって「肝」を整えて「脾」を建てなおす治療です。
【ツボ】ダン中・内関・中カン・陽陵泉・太衝・脾兪など
【漢方薬】
『逍遥散』『柴苓湯』(小柴胡湯+五苓湯)

以上が中医学的「過敏性大腸炎」の捉え方と治療になります。

いかがですか?
ここで皆様に理解して頂きたかったのは現代医学では一括りにされている病気でも以上のような違った観点から診ればこのような分類が出来るということです。当然分類がちがえば治療方針も変わってきますし、同じ「過敏性大腸炎」でも使用するツボや薬も違てきます。けして「この病気にはこのツボだ」とか「この病気にはこの漢方薬だ」みたいな単純なものではありません。まして「下痢や便秘だから胃や腸に関係するツボを使えばいい」というものではありません。中医学には「同病異治・異病同治」という言葉があります。同じ病気であっても、患者さんの体質・精神状態・病状・気候などの要素を考慮して治療の仕方が違うこともあれば、異なった病気であても同じ治療になるとこともあるという事です。まさしく患者さん個人個人に合わせたオーダーメイドの医学です。

冒頭でも述べましたが現代医学と中医学は同じ医学であっても全くの別 物と思って頂いた方が理解しやすいかと思います。そして違う観点の医学だからこそお互いの苦手とする疾患や患者さんをホローできるのです。まさしく「陰・陽」の関係ですね。ですからこれを読んでおられる方の中で「病院へ行ったけど治らなかった」とか「お医者さんに完治は無理と言われた」からといって諦める前に、もう一度違う観点から病気をみてみてはいかがでしょうか?
では続いて「予防養生」についてご紹介させていただきます。

 


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