今回のテーマは発熱です。皆さんも何度かは経験があると思います。発熱という症状はとても軽い場合もありますし、重大な疾患のサインだったりもします。
ところが、こんなにも身近な症状であるのに意外と詳しく知っておられる方は少ないのではないでしょうか?今回はそんな発熱について紹介したいと思います。
では、まずは西洋医学の観点から見てみましょう。


★★西洋医学から見た発熱★★
発熱とは、「体温調節中枢に異常があり、平常時以上に体温が上昇すること」と定義されております。体温調節中枢については後述いたしますので、とりあえず今は脳にある体温調節を行う部位 と理解しておいてください。では平常時体温とはいったい何℃なのでしょうか?健康人の平常時体温(腋下計測)は36〜37℃と言われております。ですから、通 常では37℃以上を「発熱」と言います。因みに、36℃未満を低体温と言います。
ところで、皆さんは何処で体温を計測しますか?
口・わきの下・お尻(直腸内)などがありますが、本来、体温とは体内の温度のことですから、外界の温度の影響を受けない場所がベストなのです。その観点から言えばお尻(直腸内)が正確な体温計測が出来る部位 になります。
しかし、実際はわきの下で計っておられる方が一番多いのではないでしょうか。ですから今から体温についてはわきの下で計測した数値で説明いたします。(先程、紹介した平常時体温もわきの下で計測したものです。)
因みに、わきの下は、お尻(直腸内)に比べると0.6〜1℃、口の中に比べると、0.2〜0.5℃程低いと言われております。ですから、口で計測した場合では、37.3℃・お尻では37.6℃以上を発熱といいます。
せっかくですから体温の話をもう少しだけいたしましょう。通常体温は日内変動と言って一日のなかでも変化しており、AM2〜4時ごろ最低になりPM2〜6時に最高となります。
又、女性は月経周期によって1℃以上体温が上がる場合がありますし、大部分の子供は大人より体温は高く、1日の体温変化も大きくなります。因みに子供は軽度のウイルス感染でも高熱を出すことがありますが、このようなことで脳が直接損傷を受けることはありません。


☆体温調節のしくみ☆
さて、「発熱」の説明に入る前に、先ず健康な人の体温調節の仕組みを説明します。
ところで、何故体温調節が必要なのでしょうか?
その理由は幾つかありますが、先ず考えられるのは、体内の機能が外気温からの影響を受けずに効率よく作用できる適温を維持するためです。
例えば我々人間は南極の極寒の地でも、中近東の灼熱の地でも暮らしております。両地の温度差は60℃を軽く越えるでしょう。しかし、そこに住んでいる人達の体温の差はそれほどではありません。また、日本でも冬と夏の温度差に比べ、体温の差はそれほどではありません。これは、外気温に関係なく体内は適温に調節されているからなのです。
ではどの様にして体温調整をしているのか簡単に説明します。


◎産熱と放熱◎
体温を一定に保つ為には、体内で熱を生む「産熱」と体外に熱を出す「放熱」によって行われます。
外気温が下がれば、体温が下がらないように「産熱」が起こり、外気温が高くなれば、体温の上昇を抑えるために「放熱」がおこります。

○低温時・・・『産熱』
産熱は内臓や筋肉の代謝が亢進し、酸素が燃焼されて起こります。
例えば、寒い時にふるえが起こりますが、これは筋肉を動かすことにより「産熱」が起こっているのです。又、皮膚にある「立毛筋(りつもうきん)」という筋肉が収縮することにより毛穴や汗腺を閉じて放熱を防ぎます。このときに起こるのが鳥肌や立毛です。更に、皮膚の血管が収縮することにより皮膚の血流量 を減らすことで放熱を防いでもいます。ですから、寒いと顔の表面の血流が減り顔色が青白くなるのです。

○高温時・・・『放熱』
皮膚・肺・尿・便・は放熱の作用があります。
熱いと毛穴が開いて放熱が起こります。又、発汗も起きます。発汗すると皮膚が汗で濡れます。次に汗が蒸発する時に体の熱も奪去ってくれます。これは夏によくやる「打ち水」と同じ原理です。因みに、汗をかかない動物などでは自分の体を舐めることにより発汗したのと同じ状態をつくりだしています。又、皮膚血管の拡張が起こり、放熱が促進されます。このため熱いと顔が赤くなるのです。他には、産熱量 の減少のために、食欲不振・運動量の低下が起こります。

「産熱」と「放熱」のバランスが上手にとれて体温は適温に保たれます。
これらの反応は我々が意識して起こしているものではありません。無意識のうちに自律神経が行っております。
次は、その仕組みを簡単に説明します。

◎体温調節中枢と温冷受容器◎
さて、「産熱」や「放熱」は意識とは関係なく自律神経によって行われているのですが、これらの反応はそれぞれの部位 が自発的に行っているのではなく、脳からの指令によって行われています。脳の中には視床下部(ししょうかぶ)といわれる部位 があり、そこに「体温調節中枢」があります。この体温調節中枢というのが体温調節の司令塔になります。それに対して皮膚には外気温を感知する、温受容器と冷受容器があります。体温調節は、司令塔である体温調節中枢や、外気温を感知する温受容器と冷受容器、体温調節中枢からの命令を受けて、実際に産熱や放熱をする筋や血管といった効果 器と、それらを繋ぐ神経によって行なわれています。

◎体温調整の流れ◎
次に体温調節の流れをまとめてみます。

○外気温の低下
1.冷受容器が外気温の低下を感知して体温調節中枢に伝えます。
2.体温調節中枢は
a: ホルモン系を通じて内蔵や筋肉へ代謝を亢進させ産熱の指示をします。
b: 自立神経を通じて皮膚の血管へ血管を収縮して放熱を抑えるように指示をします。
c: 体性神経を通じて筋肉をふるえさせ産熱の亢進を指示します。

○外気温の上昇
1.温受容器が外気温上昇を感知して体温調節中枢に伝えます。
2.体温調節中枢は
a: 自律神経を通じて汗腺へ発汗による放熱の亢進を指示します。
b: 自律神経を通じて皮膚血管へ血管拡張による放熱の亢進を指示します。

以上が体温調節の仕組みです。次に発熱の仕組みを説明します。


☆発熱の仕組み☆
体温調節の司令塔は視床下部にある体温調節中枢でした。体温調節中枢は「産熱」と「放熱」という手段を使って体温を通 常体温である36℃〜37℃の間で一定に保っているわけです。この一定した数値(36℃〜37℃)のことを設定値とか、セットポイントといいます。
イメージ的にはエアコンを思い浮かべて下さい。皆さんは快適に過ごせる室温をエアコンに設定し、エアコンはその室温が一定に維持するように働きます。つまり皆さんがエアコンに設定した温度が体温調節中枢のセットポイント(36℃〜37℃)に当たるわけです。そしてエアコンが室温を一定に保つのと同じように、体温調節中枢は「産熱」と「放熱」という手段で体温をセットポイントと同じ温度に保つわけです。
ところが、何らかの病的な理由でこのセットポイントが正常値より高くずれてしまうことがあります。すると体はその反応として「産熱」を起こしセットされた高い値に体温を合わせてしまうのです。この状態を『発熱』といいます。つまり、発熱とは、セットポイントが通 常より高い値にセットされてしまう事によって起こるのです。
この発熱を起こす物質を「発熱物質」といいます。発熱物質は体外からやってくる細菌やウイルスといった外因性発熱物質と、外因性発熱物質に刺激され体内で産生される内因性発熱物質があります。発熱物質は外気温に関係なく視床下部の体温調節中枢へ作用して、産熱作用を高め放熱作用の抑制をします。そのため、発熱時には、ふるえ・悪寒・皮膚血管の収縮がおこります。次に、発熱の原因が取り除かれると亢進していた産熱機能はおさまり、放熱機能が高まります。これにより通 常は発汗が起こり体温は元に戻ります。


☆うつ熱☆
「発熱」に対して、「うつ熱」というタイプがあります。
これは熱放散より熱産生が多くなったり、環境から受ける熱が異常に大きくなって体温が上昇する場合を言います。
うつ熱は直射日光の下や、高温・多湿・無風・の条件下で激しい作業や運動をした際に、産熱が著しく増え放熱がそれに追いつかない状況の時に起こります。
発熱と違い、この場合のセットポイントは正常です。

アスピリンなどは、上昇しているセットポイントを正常に戻す作用をしますので、解熱剤としてよく用いられますが、うつ熱のセットポイントは正常ですので、解熱剤の効果 はありません。
ですから、夏場によく耳にする「熱中症」はうつ熱ですので、解熱剤は効きません。
熱中症は、熱痙攣(手足の痙攣・筋肉痛)→熱疲労(倦怠感・嘔吐)→熱射病(意識障害)の順に重くなります。 熱射病では体温調節中枢が障害を受け、発汗や皮膚血管拡張といった放熱作用も低下してしまい体温は40℃を超えることもあります。
先程も述べましたが、これらは解熱剤は効きませんので、冷たい水で体を拭いて体温を下げます。

☆発熱の原因となる疾患☆
1. 感染症:細菌・ウイルス・リケッチャ・スピロヘータ・真菌・原虫・などの感染によります。
2. 腫瘍:組織破壊によるものと、しばし、感染症の併発によるものによります。
3. 膠原病:全身エリトマトーデス・皮膚筋炎・結節性多発動脈炎・リウマチ熱などによります。
4. 代謝異常:甲状腺機能亢進症・貧血・妊娠などによります。
5. アレルギー:薬物アレルギー・不適合輸血・血清病などによります。
6. 吸収熱:大量出血後などによります。
7. 組織障害:心筋梗塞・肺梗塞・外傷などによります。
8. 体温調節中枢の障害:脳出血・脳腫瘍・脳外傷などによります。


☆発熱の分類と熱型☆
37℃以上が発熱ということですが、実はもう少し分類があり、37〜37.9℃の発熱を「微熱」・39℃以上を「高熱」・41.5℃以上を「過高熱」と言います。
さて、発熱は上記したように、感染症・悪性腫瘍・膠原病・内分泌の疾患・アレルギー疾患・代謝性の疾患・などといった様々な病態で生じます。
発熱時の体温の変化をグラフにして特に特徴的な動きのものを熱型といい、疾患によっては特徴的な熱型を示すものもあります。
例えば、周期的に高熱期と無熱期がくる熱型を「周期的発熱」といい、代表的な疾患としては、「マラリア」があります。他の熱型と代表的な疾患としては、「稽留熱」「弛張熱」「間欠熱」などがあり、「稽留熱」の代表的疾患としては腸チフスや髄膜炎などがあり、「弛張熱」や「間欠熱」の代表的疾患としては、敗血症や膠原病があります。


☆診断と治療☆
さて西洋医学の発熱の治療は、発熱をおこしている疾患を診断し治療することになります。そこで先ず、発熱の診断に主に必要な検査を紹介します。

◎発熱の診断に主に必要な検査
1. 一般検査・・・全身・局所の診察・尿・便・血液・血圧
2. レントゲン・・胸部・腹部の撮影・必要に応じて、断層撮影・造影検査・CT検査。
3. 超音波検査・・腹部超音波検査
4. 血清検査
5. 細菌検査・・尿・便・痰・咽頭・血液・髄液・胆汁
  などがあります。

◎治療
治療は先程述べたように発熱を起こしている疾患の治療になりますが、発熱により不快感が強かったり、体力消耗がある場合は「アスピリン」などの解熱剤を使います。

☆発熱から考えられる病気☆
発熱は病気が原因で発症します。そこで、発熱と随伴症状で病気が何なのかを知ることが出来ます。ここでは、発熱から考えられる病気を随伴症状に照らし合わせて紹介します。(ここで紹介する随伴症状は一般 例ですので、あくまでも参考程度に止めて置いてください。)

◎まず40℃近い発熱がある疾患からまとめて紹介します。
○急性胆のう炎○
黄疸・寒気・ふるえ・吐き気・発作的なみぞおち・右上腹部の痛み・右肩・右背部に痛み

○ 胆石症○
寒気・ふるえ・黄色い液を吐く・黄疸・白い便・右上腹部のはれや痛み・背中や肩の痛みがあることもあり・突然の激しい腹部の痛み

○腎盂腎炎○
突然の発熱・悪寒・ふるえ・腰痛・側腹痛・頻尿・排尿痛・尿混濁・血尿・膿の混じった尿

○インフルエンザ○
悪寒・頭痛・腰痛・関節痛・筋肉痛・だるさ・食欲不振・のどの痛み・咳・鼻水・下痢


☆次に40℃までは発熱しない疾患を紹介します。
○急性肝炎○
だるさ・全身の脱力感・食欲不振・吐き気・嘔吐・頭痛・悪寒・神経痛・筋肉痛・関節痛・下痢・便秘・みぞおちの右側に圧迫感と圧痛・黄疸

○急性すい炎○
みぞおちの周辺突然の痛み・背部痛・吐き気・嘔吐・黄疸がでる場合もあります。

○急性虫垂炎○
急激な腹痛(当初は、みぞおちやへその部分といった、体の中央部から始まり右下腹部へと移動してゆきます)・吐き気・嘔吐・便秘・発熱は37度台

○肺結核○
風邪と同じ症状で咳や痰がいつまでも止まらない・食欲不振・だるい・疲れやすい・痩せてきた・不眠・寝汗・肩こり・発熱は微熱が続く。

○急性気管支炎○
風邪の症状に続いて発症・乾いた咳と痰に続き、湿った咳や黄色い痰に変わる・黄疸がでることもあります・高熱・まれに呼吸困難や顔色が青くなります。

○気管支拡張症○
慢性の咳と痰・胸痛

○風邪の諸症状○
鼻づまり・鼻水・くしゃみ・咳・ノドの痛み

○亜急性甲状腺炎○
甲状腺部(ノドの前部)の痛み・時に耳の痛み

○肺炎○
寒気・赤っぽい痰を伴う咳・時に血痰・胸痛・ノドの痛み・頭痛・関節の痛み・吐き気や嘔吐・下痢

○急性上気道炎○
鼻水・鼻づまり・ノドの痛み・頭痛・だるさ・食欲不振・咳・痰

簡単ですが、以上が西洋医学から見た「発熱」の説明です。
続いて中医学から見た「発熱」の説明をいたします。

 


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