▼喘息とは(西洋医学的な考え方)▼
喘息とは、発作性にゼイゼイやヒューヒュー(喘鳴)・息が苦しい(呼吸困難)・胸が苦しい・咳がひどい、などの症状が繰り返しみられる病気です。
空気の通り道である気管支の病気で、もっとも多いのが、気道(気管支)が炎症により細くなり、呼吸が妨げられることによって起こる場合ですが、気管支粘膜の浮腫(むくみ)や痰の増加 などでも起こります。
喘息の原因として一般に良く知られるものはアレルギー性のものです。 例えば、エビや卵などを食べたり、ある種の花粉がハウスダストを吸収したりすると発作が起こるのが特徴です。 気候の変化や温度の変化なども発作の誘引になりますし、精神的なストレスや過労なども原因になります。このようにさまざまな原因が複雑にからみ合って起こるために、治療も中々決め手となるものがありません。


小児喘息について
小児喘息の患者さんのばあい、喘息になる前に乳児湿疹、アトピー性皮膚炎があることがよくあります。家族のなかにアレルギー体質の方がおられると、小児喘息の子どもが出てくる頻度が高くなります。小児喘息は、成長するにつれて自然に緩解されてくるケースが多いですが、中学生・高校生になっても小児喘息が治らず、思春期喘息に移行するケースも増加しています。


▼中医学の喘息の捕らえ方▼
中国医学では、喘息を単に肺や気管支の問題として捉えず、他の臓器や体質など、また、当院のホームページの中でたびたび出てくる生命エネルギー、体を整えるエネルギー(気・血・水)の失調として考えます。
喘息という言葉は日本の言葉で、中医学では、喘息は、「喘証」(呼吸急迫を主症状とする病証)と、「哮証」(咽喉部でゼーゼーと痰の音がし、更に呼吸急迫を伴う病証)に属します。


【中医学的な喘息の原因の分類】
1.六淫
中医学では、外界(自然界)の環境因子が人体に与える影響を重視します。
風、寒、暑(熱)、湿、燥、火
この6つの外界の環境因子を中医学では六気といいます。

例えば、気温の上昇は暑(熱)、低下は寒、 湿度の上昇は湿、低下は燥というように、季節に相応しており、正常な場合は、人体の生理活動を促します。

しかしながら、この六気が、過剰・不足・季節との不相応により正常でなくなると、六淫と呼ばれる、人体の生理活動を損なう因子へと変化します。
湿気が多すぎると身体の調子が悪くなったり、乾燥して寒すぎると風邪をひいたり、夏の暑さが異常気象で40度近くになるような時、汗をかきすぎて、力が入らなくなったりするのも、この六淫が原因です。
喘息の場合は、六淫の中でも、寒、熱、燥、風が特に原因として考えられます。
これらの因子は、口、皮膚、鼻から肺に侵入することが多く、その侵入により、 肺の本来の働きができなくなり、喘息の症状を出してしまうのです。


2.痰飲内停
中医学では肺は貯痰の器と言われておりますが、この痰の代謝がなんらかの原因で悪くなりますと、 粘りのある痰が肺に充満し排出されずに、肺の本来の働きを阻害し喘息の症状をおこします。
身体の水液はきちんと流れていれば、津液と呼ばれ、生命エネルギー物質として働くのですが、 流れが悪くなりますと、痰飲となり、色々なよくない症状を起こしてきます。
水液の流れが悪くなる原因はさまざまですが、問診、視診、聞診、切診により原因を分析し、治療にあたるのが中医学です。


3.情緒失調
中医学には、六淫と同じように、今度は人間の感情によっても、身体の生理活動を損なうことがあるとして、人間の感情が与える影響も重要視します。
怒、喜、思、憂、悲、恐、驚 を七情と称します。
中でも悲が肺を傷って生じる肺の気の働き損ないや、怒が肝を傷って生じる肝の気の停滞などで 喘息の症状がでることがあります。
感情の変動によって、喘息の発作が表れる場合は、気の停滞を考慮する必要があります。


4.肺気不足
長い間、咳の症状があり、肺の気が損傷されると、肺気の不足の状態が現れます。
肺は呼吸の気、全身の気の働きを担っていますので、息切れを伴う喘息の症状が現れます。
臓腑は関連して協力しあって働いていますので、肺と関連の深い脾の働きも考慮し、治療することが大切です。


5.肺陰不足
肺陰不足とは、肺の陰液の不足のことです。陰液とは、簡単に言うと、身体の中の水分(津液)や血です。
特に肺は、潤を好み、燥を嫌う臓腑です。
体内の陰液が不足すると、肺は乾燥し、肺気が情逆して、喘息の症状が現れるのです。


6.飲食失調
暴飲暴食、冷えた食べ物、脂っこいものの過食により、脾と胃の働きが悪くなると、 痰の停滞が怒ります。中医学では脾は痰を生む源と言われています。
痰の停滞が、気も停滞させてしまい、肺の気の流れを塞ぎ、喘息の症状が現れます。


7.腎虚
中医学では、色々な病気に言われることですが、慢性化したり、長期化した病は腎に及ぶと 言われます。肺に原因がある喘息でも、長期化すると腎に影響を与えてしまうことがあります。
これは、肺と腎がお互いに影響しあい、協力しながら生理活動を行っていることを理解して頂ければ、一目瞭然ですので、次の項目では、喘息の症状と関係の深い臓腑の働きをご説明します。


【喘息と関係の深い臓腑の働き】
肺、脾、腎
この3つの臓腑は、協力しあって、身体の水液代謝と呼吸の生理活動に作用します。
1.肺と脾
脾の働きは、食べ物を消化し、身体に有益な水液(津液)を生成し、身体中に運ぶことですが、 肺はその働きを補助して、脾から肺に上がってきた水液を全身に散布します。

喘息の症状が慢性化している方の中には、食欲の無い人がいますが、それは、肺の気の消耗により、肺の働きが衰えて、脾の生理活動を補助できなくなっておこります。また、反対に飲食の不摂生で、脾の気が損傷されると、水液の代謝が悪くなり、 痰が生成され、その痰が肺にたまって、痰の多い喘息の症状がでたりするのです。
痰が停滞が長引くと、多くは熱化する傾向にあり、白い痰から黄色い痰に変化し、症状が悪化していくこともあります。


2.肺と腎
肺が脾によって運ばれた水液を全身に散布することは、すでに上で説明しましたが、 さらに肺は、不要な水分を腎に送るという生理活動も担っています。
腎は運ばれた水液のうち、不要なものは尿として排出、必要なものは再吸収します。
喘息の症状がひどく、肺の気を消耗し、肺が正常な生理活動を行えないと、腎も正常に働かなくなってしまうので、下肢の浮腫や、排尿障害が喘息症状に加わる例があるのはこのためです。
肺と腎は呼吸においても共同で働きます。
呼吸活動は肺で主られ、吐き出すことにより、濁気を排泄し、吸入することによって、清気を吸収しますが、この中の特に吸収する、吸い込む方の作用には、腎の納気作用(気を納めて貯蓄する作用)が重要な役割を担っています。


3.脾と腎
脾と腎が協同して行うのはまず、水液の代謝です。脾は身体に有益な水液の生成を、 腎は不要な水液の代謝を担います。
そして、もうひとつ、生まれる前までの生命エネルギーの源は、腎が、生まれてからの生命エネルギーの源を脾が担います。
そして、脾が食べ物を生命エネルギーに変える生理活動を、人間が生きている限り、腎がずっとバックアップするのです。



【中医学的な喘息の病態の分類症状と治療】
中医学では、喘息の場合は、まず、実証の喘息なのか虚証の喘息なのかを判断します。
実とは邪気が充満している状態のことで、虚とは、正気が不足している状態のことです。
どちらの状態も正常な状態ではありません。


●実喘の症状
胸部に膨満感があり、非常に呼吸が荒く、喘息の音も大きい。胸に何かが詰まっていて、もう、それ以上空気を吸い込めない感じがします。邪気が盛んであるため舌苔が厚く、時に白く厚い、時に黄色く厚い状態です。脈は力強い脈を打ちます。



●実喘には大きく分けると1寒と2熱と3痰の症状があります。

それぞれの症状は以下の通りです。

― 寒邪が盛んな場合
寒の邪が皮膚や口鼻から肺に侵入して肺の機能が乱されることにより、おこる症状です。
寒い冬に喘息が起きたり、悪化する傾向があり、暖かい状態または暖かい飲み物を好みます。
痰は白っぽく水のように淡いといった特徴が重要です。一般的に舌は白く苔が厚いのが特徴です。

治療について
辛温散寒 宣肺平喘
寒邪によって傷つけられた肺の治療と寒邪を取り去るために温める治療を行います。


― 熱邪が盛んな場合
熱の邪が皮膚や口鼻から肺に侵入して肺の機能が乱されることにより、おこる症状です。
咳が激しい、呼吸が荒い、吐き出した痰が黄色く、熱で身体の中の水分が損傷されているため痰の粘り気が強く、口渇があります。
熱い物を嫌い、氷や水など冷たいものを好んで飲みます。
熱の季節や暑い環境で症状が悪化するという特徴をもっています。舌は赤く、苔は黄色く厚いのが特徴です。

治療について
清熱化痰 宣肺平喘
熱により損傷された肺の治療と同時に、熱を清することにより、身体の中の水分の状態を良くして痰がきちんと排出されるような治療を行います。



― 痰が盛んな場合
中医学では、肺は貯痰の器であるといわれています。痰がにごって、どろどろと停滞してしまっている場合には、肺の本来の働きである、水液を体中に散布する働きができなくなってしまいますので、停滞した水液が痰化して、痰が気道に充満してしまいます。
症状としては、喘息と同時に痰が多いために胸が重苦しく、窒息しそうな感じを訴えます。
また、痰湿が多いと、胃にも停滞してしまうため、本来下がるはずの胃の気が上に上がってしまい、悪心と食欲の不振を訴えます。もともと、湿(むくみ)体質の方に多い症状です。

治療について
燥湿化痰 降気平喘
湿を除けば、痰の源も自然と枯れてきます。痰を取り去るというよりは、体内の水(津液といいます)の流れをよくすることにより、湿を除く治療を行います。


●虚喘の症状
吸って吐く感覚が短いために、途切れ途切れの状態になる。呼吸が弱く、声も実喘のようなゼーゼーという大きい音ではなくて、非常に低く、弱弱しい状態で、息も絶え絶えといった状態です。たくさんの空気を吸いたくても吸うことができず、浅い呼吸しかできない。
倦怠感を訴え、身体も弱くて、力がない。舌苔は薄いか無い場合もあります。脈は細く無力な場合が多いでしょう。


●虚喘の種類
大きく分けると、すでにご説明しております、肺と腎と脾がからむ気虚、陰虚、陽虚に分けられます。


― 肺気虚 脾気虚
中医学では、肺と脾は身体の正常な働きのためにとても関連が強いため、どちらの状態が悪くなっても、どちらかの状態に影響を与え、具合を悪くしてしまいます。
気虚の症状は、気短、息切れが第一の特徴です。声が小さく、痰が薄く量 が多い。
体表を引き締める力が弱くなってしまうため、汗がよく出て、風邪をひきやすい状態になり、疲労感も強くなります。また、暴飲暴食などで、脾胃の働きが低下すると、水湿の流れが悪くなり、水湿が脾胃に停滞し、痰を良く出すようになります。
また、脾の気は本来上に上がるべきものですが、その働きが低下しているために、水液が身体の中に停滞し、軟便にもなります。
舌は淡く、脈は弱くなります。

治療について
補益脾肺、健脾化痰
虚している状態というのは正気が不足している状態ですから、脾と肺を補う治療を行います。また、脾を治療すること胃腸を健康にし、水湿の流れをよくし、痰がたまって息苦しい状態を改善させます。


― 陰虚
陰虚とは、中医学的に言われる陰液が不足している状態のことです。
陰液とは、簡単に言うと、身体の中の水分(津液)や血です。
喘息で見られる陰虚とは、肺と腎の陰虚です。
身体の中の水分が不足しているため、ほてり感、寝汗、喉の乾きなどを感じ、夜間に咳が悪化します。身体の中の水分が不足しているため、痰はあまり出ませんが粘っこく、きれにくいのが特徴です。また、腎の陰虚症状としては、耳鳴り腰痛なども伴います。

治療について
滋陰降火、潤肺止咳、滋補腎陰
陰液が不足している原因を突き止め、陰液を補充する治療と同時に、陰液の不足により、 熱が上ってしまったことにより出ていた火照り感などの症状を治療をします。
また、肺の陰液も補い潤すことにより、咳を止める治療を行います。


― 陽虚
慢性化し、非常に重症な喘息の症状を呈している場合、往々にして腎陽虚の状態が見られます。症状としては、動くとゼーゼーする。呼気は楽であるが吸気が難しいのが特徴です。
これは、中国では古来から、空気を吐き出すときは肺が主な役割を果 し、空気を吸い込むときは、腎が主な役割を果すと言われています。これは、腎が気を納める働きを主っているためで、その力が減退しているため、吸気が難しくなるのです。
また、腎の気化(水分を蒸発させる機能)作用(正常な場合、腎には水分を気化させるはたらきがあります)の低下により、 夜間頻尿の症状を伴ったり、痰が薄く量が多いなどの症状も表れます。
冷えが強く、腰痛も悪化します。

治療について
温腎、納気平喘
腎を温め、気を納める本来の腎の作用や気化作用を正常に行われるように治療します。



▼中医学的な喘息の治療について▼
基本的には、ただ単に、咳を止める治療、或は痰を取り去る治療というのではなく、根本的な体質を改善して行くのが治療のメインとなります。 それにより、発作を起こしにくい体づくりをして行くのです。 ですから中国医学の治療は、根本的な体質改善により、痰を除き、痰の産生を防止し、気道を開通 させるとともに、外因に対する抵抗力を高めていきます。基本的に慢性疾患の場合、症状、発作等が落ち着いて3ヶ月間、現れなかった場合は一応 治癒したと見ます。その他の疾患の場合もそうですが症状が出なくなったといって治療をすぐやめてしまう方がおられますが、本来はまだ症状が小康状態になっているだけで完全に治ったという訳ではないのです。ですから症状が出なくなっても最低3ヶ月ぐらいは様子見で継続治療を 行なった方が宜しいかと思います。

それともうひとつ喘息治療で大切なのは、発作を止めることが喘息の治療ではないということです。病変を根本から改善し、次の発作をひきおこさないようにすることが大切です。当院にご来院頂いた患者さんから「今までにも鍼灸治療も受けたことがあるのですが、効果 が感じられず、 漢方薬も服用したが効かなかったのですがどうしてでしょう」と聞かれる事があります。
それはひとつに、技術的なレベル、診断・体質分析の把握ができてなかった事、また、局所的な治療しか行なってないと効かない場合もあります。漢方薬も奥深いものでただ単に対症療法的に、咳をおさえ気管支を拡張させるという様な処方をされると、思う様な効果 が出ないケースがあります。
ですので、患者さんサイドも鍼灸・漢方医院で受診、相談される場合、どの様な治療を行なって頂けるのか、また、自分の症状に対して細かく問診をして頂いているかを判断し、受診なり治療を受けた方が宜しいかと思います。 私が言えるのはろくに問診も、体質判断せず、やたらめったら鍼を打ったりするような鍼灸院での受診はなるべくさけられた方が良いかと思います。
尚、治療を受ける側も、治療内容とか考え方を理解、納得した上で、治療を受けられた方が良いかと思います。また、中医学は、体質改善(気・血・水のエネルギーのアンバランスを調整する)を目的として治療をしておりますので、多少時間がかかることもご理解の上、受診された方が良いかと思います。 また、普段の食生活の改善も、ときには必要だと思われます。例えば、冷えやすい方が、冷たい物を多く摂取される場合は、その摂取量 の改善も必要です。その方がより良い、 治療結果を得られることができます。
お互いが相互にコミュニケーションをとり、治療を受けられるのが宜しいかと思います。


▼お子様の治療について▼
病態が込み入っていないお子さんの喘息には短期間に効果を示すことが珍しくありません。このような場合には 中国医学による手当てをおすすめ致します。 時には当院で述べている違う角度、観点から病に対して着手するのも一手かもしれません。
小さいお子さんの場合は直接鍼を打たずに、当院ではローラー灸というもので経穴(ツボ)に刺激を与えています。これは、温熱効果 のある物で、とても気持ちがよく、お子さんも恐がらずに受けて頂けます。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
鍼灸・漢方全般のご相談もお気軽にどうぞ。
Email genki@dokutoruyo.com

 


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