西洋医学的なめまいの捉え方
自己ないし、外界の空間における異常知覚をめまいといいます。
通常めまいは「平衡機能の異常により生じ、特に不快な感情をともなうもの」をめまいとよぶことが多いそうです。

東洋医学(中医学)的なめまいの捉え方
中医学では、病名を症状別に分類して整理します。その分類法は中医学特有のものです。
症状別に分類していくと、中医学のめまいに含まれる症状の範囲は相当広くなります。メニエール・高血圧症・脳血管障害・貧血・自律神経失調症・眼科疾患などに見られるめまいの症状は、すべて中医学のめまいの症状別 タイプを適用することが出来るのです。


〜 中医学臓腑の働き 〜
中医学では、人体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき )という成分により構成されていると考えます。大雑把にいえば、気は生体エネルギー、血は血液、津液は血液の構成成分でもある正常な体液成分、と考えて下さい。これらの成分がバランスよく、心身に充分満たされ、うまくはたらくことで、人体は健康を維持できると考えます。「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのが臓腑になります。
めまいと関係が深い臓腑が下記の肝・腎・脾になります。めまいは3つの臓腑の働きのいずれかが乱れて起こると考えています。


「めまいは肝に属す」(諸風掉眩、皆肝に属す)といわれ、めまいと最も関係が深いのは肝だと考えています。中医学でいう肝は肝臓機能の働きだけではなく、自律神経の働きを調整して全身の血液循環をコントロールしています。血流や筋肉の働きも管理していますから更年期の問題や肩こり等も肝が関わってきます。目の使いすぎ、神経の使いすぎ、ストレス、寝不足、過労等は肝を消耗させる事になります。結果 として自律神経の働きが乱れ、脳や内耳の方へ十分血液が循環しなくなり、めまいの症状を起こします。従って、肝と関係のあるツボがよくめまいの治療で用いられます。


「腎は耳に竅を開く」といわれ、耳は腎とも深く関係が有ります。東洋医学でいう腎は泌尿器だけでなく、内分泌(ホルモン)系、免疫系、生殖能力、骨や歯、耳、髪、腰、ノド等と関係しています。発育・成長・老化と関係していますので、年をとる毎に腎の機能は低下していきます。
いわゆる「腎虚」と呼ばれる状態です。腎虚になると骨や歯は弱くなり、尿の出方、生殖能力も弱ってきます。そして耳の方も、耳鳴りや難聴が起き易くなります。耳の内耳の平衡器官の方が障害されるとめまいが起こります。


「痰無くしてめまい起こらず」といわれ、水毒症状の代表としてめまいが起こる事が有ります。油っこい食べ物、甘い物の食べ過ぎ、冷たい物の飲み過ぎ等が消化器系の働きを弱め、胃内停水といって、胃の中で水がポチャポチャした状態になります。こういう状態を水毒といって身体の中の水分代謝が悪くなります。例えば内耳の水ぶくれ等でめまいを起こし易くなります。


〜 めまいのタイプと治療方法 〜
中医学ではめまいを眩暈といいます。脳・耳・目に障害を起こすと考えられています。これらを上記の「肝・腎・脾」の臓腑と関連付けて3種類に分けて考えます。

1.栄養物質が必要以上に多くなるもの(「肝」の臓腑と関係が深い)
  このタイプは高血圧の傾向にある人に多く見られます。

2.栄養物質が不足するもの(「脾」と「腎」の臓腑と関係が深い)
  このタイプは低血圧の傾向にある人に多く見られます。

3.栄養物質の流れが行き届かない場合(「脾」の臓腑と関係が深い)
  病的な体の水分が邪魔することによって脳に栄養物質が届かずにめまいを  起こすもの。


タイプ1Part1 栄養物質が必要以上に多くなる

感情の起伏が激しくストレスを溜め、ストレスや悩みを発散できない。
     ↓
肝の疏泄機能が滞る(肝気鬱結)
● 肝の気はスムーズに流れるのを好みます。
● 流れがスムーズでなくなると欝結(気の渋滞)を引き起こします。
     ↓
気や血の流れが停滞し、臓器の生理作用を乱す。
     ↓
精神不安定…胸苦しい・乳房が張る・月経不順・弦を張ったような脈を打つ。

上記のような状態が長期間続くと…
体内で熱が生まれ、(肝鬱化熱)
     ↓
すると火に変化して燃え上がります。(肝鬱化火)
     ↓
これが引き金となって風が生まれる。
(風は移動する性質を意味します。体内で症状が動き回る傾向が出ます)
     ↓
激しいめまいに伴い、下記の症状などを併発します。

症状
・ 頭の張りと痛み
・ 赤ら顔
・ 目の充血がある
・ 眠れない
・ イライラして怒りっぽい
・ のどが渇きやすく、水分を多く欲しがる
・ 口が苦く感じる
・ 月経過多
・ 便秘

症状別タイプでいうと、中医学では「肝火上炎」となります。
治療:疏肝解鬱、清肝瀉火
処方例:四逆散


タイプ1Part2 栄養物質が必要以上に多くなる

肝気鬱結から肝火上炎が生じ、肝火上炎が長く続くと…
次第に肝の陰液が消耗(熱で体内の水分が減少する事を指します)され、「肝陽上亢」という症状別 タイプに移行します。

このタイプは情志の抑うつや激怒などによって急激に激しいめまいが起こります。または、不眠、過労ななどで増悪します。

熱がすぐに火に変化しない場合でも、肝の気の欝結状態が長く続くと…

熱によって精や血、津液が傷つける。
(体内の水分が減少傾向になる車で言うとラジエターの水分が減ってきている状態です)
      ↓
肝の疏泄機能による気や血、津液の生産量不足が重なる。
      ↓
肝陽が過度に亢進し、肝陰が不足する。
      ↓
肝火上炎に似た症状が現れます。

症状
めまいのほかに、
上半身、顔面部に熱症状が著名
のどが渇くが水分を欲しがらない
頭痛(主に後頭部痛)、頭重感
肩こり(主に頚部のこり)
耳鳴、眼精疲労、イライラ、易怒性
不眠、顔面紅潮、眼球充血、口が苦い
などの症候があります。
めまいは乗り物の中で座っているときのような感じで、激しいときは悪心や嘔吐が生じることもあります。

治療法:「滋陰平肝潜陽」
肝陽の抑制と肝腎の陰の滋養により陰陽を調整し、これによって風気の内動を止める。
漢方:鎮肝熄風湯・天麻鈎藤飲など



タイプ2Part1 栄養物質が不足するもの

体が元々虚弱体質・過労・食生活の不摂生・疲れやすい
     ↓
脾胃の機能が低下して、原料があっても気や血に作り変える力が足りず、消耗されてしまう。
● 気と血は脾胃という臓器で作られます。
     ↓
消化・吸収能力が低下する。
     ↓
脾には良いエネルギーを上に持ち上げる作用があります。
その作用が低下してしまった結果めまいが発症してしまうケースです。
(滋養物質である「清陽」が上昇せず、脳や髄が十分に満たされない)

症状
・ 全身倦怠感があり、無理をするとめまいが起こる
・ 横になると症状が軽減する
・ 眠気 ・ 話すのがおっくう
・ 食欲不振
・ 便秘あるいは下痢
・ 低血圧
  など

症状別タイプでいうと中医学では「気血両虚」となります。

治療法:「益気養血」
気血を補益し、清陽を昇提する。これによって髄海を補益してめまいを止める。
漢方:帰脾湯・補中益気湯・十全大補湯・四物湯など


タイプ2Part2 栄養物質が不足するもの

老化・長期の不眠・慢性病による基本物質の消耗・過度のセックスなど
     ↓
脳の活動に必要な髄を十分満たすことができない。
     ↓
脳の機能低下を招き耐えず、たえずめまいが起こる。

症状
・ 夕方になるとめまいがひどくなる
・ 耳鳴りを伴う
・ 腰や膝がだるい
・ 尿の量が少ないが、トイレに行く回数は多い
・ 夜間尿が多い
・ 手足がほてる
・ のぼせやすい
・ 膝や下肢が冷えて痛む
・ 顔色が悪い
  など

症状別タイプでいうと中医学では「腎精不足証」となります。

治療法:「滋補腎精」
腎精を滋養し、脳髄を滋養してめまいを止める。
漢方:六味地黄湯・知柏地黄湯など
のぼせなどがひどい場合:左帰丸・左帰飲など
冷えがひどい場合:右帰丸・右帰飲・真武湯など


タイプ3 栄養物質の流れが行き届かない場合
冷たいものや生ものの食べすぎ・油もの・辛いもの・過度の飲酒
     ↓
食生活のアンバランスが長期間続くと・・・
     ↓
体に必要のない水分が停滞する。これが集まって変化した粘液性の病因物質を痰濁といいます。
     ↓
痰濁が滋養物質の通り道(三焦)をふさぐ
     ↓
滋養物質である「清陽」が昇れず、脳の滋養が不足して、機能が低下し、めまいが発症する。

症状
・ 頭重感があり、回転性のめまいがある。(宙に浮いた感じの場合もある) ・ 胸苦しく、胃がつかえる
・ 食欲がわかない ・ 手足が重い
・ よく眠気がさす(特に食後に眠くなる)
・ 疲れやすい
・ 足の冷え
などの症状があり、 動くとめまいがひどくなる。
多くは頭痛、悪心を伴い、激しい時は月に何回か嘔吐を伴う発作性のめまいや頭痛をきたす。天気が悪くなるとこれらの症状が悪化するのが、このタイプの特徴です。

治療法:「燥湿化痰」「健脾和胃」
痰濁を除去し、清空の働きを改善してめまいを止める。
胃の働きを調整し、痰濁の生成を阻止する。
漢方:黄連温胆湯・六君子湯・参苓白朮散


おおおまかにタイプ別しましたが、上記のほかに症状が複雑化している場合もあります。
例えば、タイプ1とタイプ2など、個々のご症状を細かく伺うことによって治療法を導きだしていくのが、中医学になります。ですから、オーダーメイド治療ということです。
少し理解して頂けたでしょうか。
では次にめまいの食養生について明記したいと思います。


オケラ(白朮)
●栄養物質の流れが行き届かないタイプBの方にお薦めです●

山野に自生するキク科の多年草、オケラの根茎を生薬名 「白朮」といいます。
健胃、滋養、利尿の働きが有り、芳香性健胃剤、利尿剤として漢方薬や民間薬で用いられます。胃内停水といって胃の中で水がポチャポチャしている状態を改善し、水毒としてのめまいに効果 があります。
オケラを用いた漢方薬:苓桂朮甘湯、沢瀉湯等


オニノヤガラ(天麻)
●栄養物質が必要以上に多くなるタイプ1の方にお薦めです●

雑木林の木陰に生える草丈約1メートルのラン科の多年草。 地中の塊茎で、ナラタケの菌糸と共生して栄養分を作るため、 地上部には葉緑素はなく、赤っぽい棒状の様子が「鬼の矢柄」 と呼ばれています。根茎を乾燥させた物を「天麻」といい、めまいや頭痛の主薬として漢方薬に処方されます。主に内風と呼ばれる動揺感、めまい、痙攣等に対して用いられます。中国の食品を扱う店では、天麻とプーアル茶をブレンドしたティーパック式の物も売られています。
天麻を用いた漢方薬:半夏白朮天麻湯
また食品としては…
例えば、苦瓜を炒めたもの。苦瓜は性質が寒で味が苦いのでよく瀉出し、清熱します。熱のため、口が渇く、煩悶状態、目の充血、暑気があるときなどに有用です。
牛・豚・鳥・魚などの内臓、海藻類、セロリ、ピーマン、パセリ、ウドなどの苦味の野菜類、グレープフルーツなどの苦味の強い果 物など。


イチョウ
●栄養物質が不足するタイプAの「腎」の臓器と関係がある方にお薦めです●

イチョウの祖先は、古生代から存在していると言われ、「生きた化石」として知られています。近年になってイチョウのないドイツ・フランスでイチョウの葉の研究が進み、日本から大量 のイチョウの葉を輸入して、循環器の薬として利用されています。血管を丈夫にする働きがある事から老人性のめまい、耳鳴りなどへの応用が注目されています。


◆煎じ方、飲み方◆
◇5〜11月の緑の葉を採取します。汚れをよく水で洗い、4〜5日間陰干しにします。
◇方法1
1日10〜20グラムを目安に、水1リットルで煎じます。沸騰後はすぐに火を止め、そのまま置き、15分たったら葉を捨てます。これを1日、3〜4回に分けて飲みます。(煎じ過ぎると、余分な成分が出るので、煎じ過ぎないようにする事)
◇方法2
紅茶や緑茶のように茶こし半分位のイチョウの葉(細く切った物)を入れ 熱湯を注ぎ、2〜3分たって飲みます。
また食品としては…
ゴマ・黒豆などは常に食用に使うとよい。その他にスッポンなど


● 栄養物質が不足するタイプ2の「脾」と関係がある方にお薦めの食品●

味は甘味のもので、温性を持ったもので気や血を補養する食物を摂取することが大事になります。
ナツメ・山芋・麦芽糖・枸杞の実・竜眼・など


めまいひとつ取り上げても様々なタイプがあることがお分かり頂けたでしょうか?
当治療院は、お一人お一人の症状に合った鍼灸治療法を行い、漢方、食生活などのアドバイスもさせて頂きます。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 


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