生活や社会環境から生じる精神的ストレス、無理なダイエット、薄着での体の冷やしすぎなどによりまねいてしまう無月経。
中医学では、こういった器質的に異常がない、原因不明の無月経に効果 を発揮します。

▼現代医学的診断・治療法▼

1.原発性の場合
(性機能が成熟する年齢になっても月経が来朝しない)
原因の約半分は卵巣形成障害が占めていると言われています。
その他、性中枢や内分泌の異常によるものと考えられています。

初経が16歳を過ぎても来ない場合は、産婦人科を受診された方がよいでしょう。
早期に診断、治療することにより将来への妊娠、分娩が可能となります。      

2.続発性の場合
(今まで周期的に月経があったにも関わらず連続して3ヶ月以上月経が中断している状態)原因はホルモン分泌の異常や排卵障害で起こるとされています。  
排卵障害による無月経は、ホルモン療法や排卵誘発剤が主な治療法になります。

器質的に異常がない場合でも、中医学とうまく使い分けて治療することにより、効果 が高まりやすくなります。


▼中医学的無月経のとらえ方▼
発症する原因は様々ですが(以下後述)主に2つのタイプに分けることができます。

1.栄養が不足しているため、子宮を養うことができず発症する「血枯タイプ」
このタイプは月経が始まる年齢になっても初潮がない、あるいは月経が遅れ、経血量 が減少し、無月経にいたります。
先天的に虚弱体質で発達が遅い場合や無理なダイエットにより(特に成長期で代謝が高まる時期に)摂取量 や質の少ない栄養は、まず必要な臓器へ供給されるため、子宮まで届かず無月経をまねいてしまうなどが主な原因となります。

2.エネルギーの流れが停滞し、栄養が子宮へ行き渡らないために発症する「血滞タイプ」
このタイプは突然発症し、数ヶ月にわたり月経が停まります。
こちらは主に、精神的ストレス(周りの社会環境、生活環境など)や生活の中での不摂生(飲食、睡眠不足、過労)が主な原因になります。

この他、病状が長引くことにより症状は複雑化していきます。そのため1と2のタイプが混合しているタイプの方も少なくありません。その場合は問診で症状の軽重を推し量 り、現在あらわれているつらい症状がある場合はそちらから先に治療し、特にこれといった自覚症状がない場合は病の根本から治療していきます。


▼中医学的からだのしくみ▼
〜「気」「血」「水」とは〜
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。
もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりすると からだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

〜臓腑の働きとは〜
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこの臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。
ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。

「肝」・・ 1. 全身の気の流れをスムーズにし、各器官の働きを助けます。  伸びやかな状態を好むため、精神的ストレスなどを受けると働きが低下し、他の器官の働きに悪影響を与えます。この状態を「気滞」(気の流れがとどこおる)といいます。
  2. 全身の血液量をコントロールし、蓄える働きがあります。
肝の働きが弱まってしまうと血液を蓄えることが出来なくなるため肝の支配している器官の機能減退症状があらわれてきます。

例)目のかすみ、爪が割れやすくなる、手足の震えやしびれ、筋けいれんが起こりやすくなったりします。
婦人科疾患としては、無月経、不妊症、月経前の乳房のはった痛み、ストレスにより月経周期が早まったり、遅くなったりする。

「脾」・・ 1. 食べたものをエネルギー(気・血・水を主に作り出す)に変え、体全体の機能を活発にします(運化作用)。
働きが弱まってしまうと、うまくエネルギーを生み出せないために疲れやすいなど全身の機能(臓器など)が低下してしまいます。
  2. エネルギーを上に持ち上げる働きがあります(昇提作用)。
働きが低下すると、いいエネルギーが上にいかないために、めまい、たちくらみが起こり、さらに悪化すると子宮下垂、胃下垂、脱肛、など内臓の下垂が見られます。
  3. 血を脈外に漏らさないよう引き締める働きがあります(固摂作用)。
働きが低下すると、不正出血、月経が早まる、青あざが出来やすくなったりします。
婦人科疾患として見られる症状は白いおりものが多くでる、黄色っぽく臭いおりものがでる、不正出血、月経が早まる、子宮下垂

「腎」・・   生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。このエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの状態があらわれます。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。

例)骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる。
婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい。

 

▼中医学的診断方法▼
個人の体質やその時々の症状、体調を考慮したうえで、治療方法を決めていきます。
そのため、同じ症状であっても人によっては治療方法が異なることがあります。
続発性の場合は月経があったときの月経の状態(周期・期間・月経量 ・質・色、月経に伴う不快な症状など)、基礎体温表などから体の中の状態を把握することができます。
この他、食べ物の嗜好、生活習慣(睡眠時間、食欲、排便の状態など)を問診し中医学独特の診断方法である舌診、脈診などを用いて診察していきます。
その診断に基づいて、個々の体質を把握し、その人その人に合った治療をしていきます。


▼中医学的無月経のタイプと治療方法▼
1.栄養が不足しているため、子宮を養うことができず発症する「血枯タイプ」です。

●気血虚弱タイプ●
食物からエネルギー(気)を生み出す源である「脾・胃」。
この2つの臓器の働きが失調することにより体を養う気や血が作りだせないため、子宮はもとより、体全体の機能減退症状がみられます。

○主な原因
生まれつき虚弱体質、飲食の不摂生、過労、あれこれ思い悩むことが多い。

○月経の特徴
周期: 遅れぎみ
血量: 少ない
色 : 淡い、薄め
質 : さらさらしている

○随伴症状
めまい、頭がくらくらする、食欲がない、食べても少ししか入らない、息切れ、便はやや軟便傾向、元気がでない、疲れやすい、話したがらない(パワー不足の為)

○治療方法
エネルギーと血を増やしていく「補気養血」、「調経」の治療をしていきます。
ツボ: 脾ユ、胃ユ、中カン、気海、三陰交、足三里
漢方: 人参養栄湯


●肝腎不足タイプ●
肝は血を貯蔵し、腎は先天のエネルギーを貯蔵しています。これらはお互いに協力し必要なときに変換しあいます。この2つの臓器の働きが失調すると、体を養う「血」や「先天のエネルギー」不足を生じ、無月経にいたります。

○主な原因
生まれつき虚弱体質、長期間の過労、性交過多による腎エネルギーの損傷。

○月経の特徴
周期: 遅れがち
血量: 少ない
色 : 薄い赤色
質 : 水っぽくさらさらしている

○随伴症状
めまい、耳鳴り、腰が重だるく不快感があり脚に力が入らない

○治療方法
肝・腎の働きを高め子宮内を滋養していく「滋養肝腎」「調経」の治療をしていきます。
ツボ: 腎ユ、肝ユ、太渓、関元、三陰交
漢方: 帰腎丸、六味地黄丸


2.エネルギーの流れが停滞し、栄養が子宮へ行き渡らないために発症する「血滞タイプ」です。

●気滞血オタイプ●
「気滞」とは主に、精神的ストレスなどにより気の流れが停滞しまうことです。
「血オ」とは血の流れが停滞してしまう状態をいいます。
気と血は、体の中をいっしょに運行していますので、気滞により流れがスムーズでなくなると血の流れも影響を受け、滞ってしまうタイプです。そのため子宮を養うことが出来ず無月経となってしまうタイプです。

○主な原因
精神的ストレス、イライラしやすく怒りっぽい、マイナス思考。

○月経の特徴
周期: 早まったり、遅くなったりその時の精神状態により変わる
血量: 少なく、ぽたぽたと出る程度
色 : 紫色っぽく、赤黒い色
質 : レバー状のかたまりが血に混じる

○随伴症状
胸や脇、乳房がはって痛む、イライラしやすい、ガスやげっぷが出やすくなる、下腹部がはって痛む。

○治療方法
気と血の流れを調える「理気化オ」、「調経」の治療をしていきます。
ツボ: 太衝、中極、血海、三陰交、合谷
漢方: 血府逐オ湯、桂枝ぶくりょう丸、通 導散



●痰湿阻滞タイプ●
「脾」のエネルギーが足りないために、食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分が体内に停滞し、経絡(気の流れるルート)の運行を阻害します。
栄養分である気、血が子宮へ到達できないため、無月経となってしまうタイプです。

○主な原因
冷たい水分・甘いもの・味の濃いもの・脂っこいもの、ビール、生ものを多く摂取する、家が湿気を帯びやすい。

○月経の特徴
周期: 遅れがち
血量: 少なめ
色 : 黒っぽい赤色
質 : レバー状のかたまりが血に混じる、粘っこい

○随伴症状
白いおりものが多くでる、水太り体質、色白、体が重だるい、痰が多くでる、頭が重くめまいがする、胸や胃のあたりがもたれる、吐き気、嘔吐をもよおす、手足・目のむくみ。

○治療方法
脾の働きを高めることにより痰を作らないようにする「健脾化痰」、エネルギーの流れを調え、栄養が子宮へ行くよう促す「理気調経」の治療をしていきます。
ツボ: (鍼)足三里、中カン、豊隆、陰陵泉、三陰交
(お灸も一緒にすると効果が高まります)
漢方: 半夏白ジュツ天麻湯



●寒凝血オタイプ●  
冷たいものの飲食や寒気が体に入ってくることにより、血のめぐりが滞りやすくなってしまいます。 そのため体の各器官や子宮に栄養が行きわたらず無月経となってしまうタイプです。    

○主な原因
冷たいものや体を冷やす食べ物の食べ過ぎ、
寒冷にあたる(冷房や真冬の冷たい風)、薄着(とくに下半身)

○月経の特徴
周期: 遅れがち
血量: 少なめ
色 : 黒っぽい赤色
質 : 大きなレバー状のかたまりが血に混じる

○随伴症状
下腹部が冷えて痛む、身体が寒い、手足の冷え、温めると楽になる顔色が青白い。

○治療方法
経脈(エネルギーの通り道)を温め寒さを散らす「温経散寒」「調経」の治療をしていきます。
ツボ: 関元、中極、三陰交、次リョウ
(お灸も一緒にすると効果が高まります)
漢方: 温経湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯



▼タイプ別にみる生活養生・食養生▼
自分のタイプ(体質)を判断できた方はこれから説明していきます、タイプに合った食養生を1つでも2つでも毎日の生活の中に取り入れ、実践してみてください。
体質が徐々に改善し体調がよくなり、症状が軽くなっていくのが実感できると思います。  

●脾胃虚弱タイプ●  

【生活習慣】
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
消化が弱い気虚タイプの人は、消化・吸収をよくするためにもよく噛んでゆっくり食べましょう。
スタミナが切れやすいこのタイプの人は、穀物をしっかりとり、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
頭や目の使いすぎは血を消耗させてしまうので、この時期は極力長時間パソコン作業や、夜遅くまでの勉強、仕事は避けましょう。
ダイエットによる食事制限も禁物です。


【食べ物】 〜エネルギーを益す食べ物を摂りましょう〜
(穀類) うるち米、粟米、小麦製品
(豆類) 大豆や大豆製品、牛乳
(肉類) 牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜) 山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類) いか、貝柱
(果物) なつめ、もも、さくらんぼ
(お茶) 杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶

〜体を冷やす食べ物、辛い食べ物、油っこく味の濃い食べ物は胃を刺激し気を消耗させるので避けましょう〜
辛い食べ物・・・ 青唐辛子、ねぎ、コショウなど
冷やす食べ物・・ すいか、バナナ、イチジク、なし、苦瓜、薄荷など



●肝腎不足タイプ●

【生活習慣】
消化が良く、栄養バランスの取れた食べ物を心がけましょう。
穀物をしっかり取り、睡眠もしっかり取るように心がけて下さい。
ダイエットによる食事制限は禁物です。


【食べ物】  〜主に腎のエネルギーを補う食べ物を多く摂りましょう〜

(穀類) うるち米、粟米、小麦製品
(豆類) 大豆や大豆製品、牛乳
(肉類) 牛肉、鶏肉、烏骨鶏
(野菜) 山芋、じゃがいも、里芋、かぼちゃ、人参
(魚類) いか、貝柱
(果物) 栗、もも、さくらんぼ
(木の実) くるみ、なつめ、黒ごま、クコの実
(お茶) 杜仲茶、ほうじ茶、なつめ茶



●気滞血オタイプ●

【生活習慣】

イライラしやすく、ストレスを感じやすいこのタイプは、ヨガや気功などの呼吸法やストレッチでリラックスできる時間を作りましょう。その時、室内でアロマオイルやお香を焚くと、気持ちが静まり部屋の空気も変わるので心身ともに気分が落ち着きます。
お風呂に入る時や寝る前に、みかんやレモンの柑橘類の皮を袋に入れて香りを楽しむのもよいものです。


【食べ物】〜香りの高い食べ物を摂ることにより鬱々とした気持ちを発散してくれます〜
(野菜) 春菊、三つ葉、みょうが、シソの葉、パセリ、セロリ
(果物) みかん、レモン、グレープフルーツ、きんかん、ゆず
(お茶) ジャスミン茶、ミントティー



●痰湿タイプ●  

【生活習慣】
甘いものや味付けの濃いもの、油っこい食べ物は控えましょう。
水分代謝が悪く、水太りしやすいので水分の摂りすぎには注意して下さい。  また、冷たい物(アイスやジュース)は控えめにしましょう。
運動は規則的にじんわり汗をかくくらいのウォーキングなどがおすすめです。汗だくになってやる必要はありません。
梅雨の時期は湿気の影響を直に受けるので、この時期は食べ物に気をつけましょう。


【食べ物】  〜水分を排出してくれる働きのある食べ物を摂りましょう〜
(穀類) はと麦、とうもろこし、小豆、黒豆
(野菜) 冬瓜、白菜、山芋、トマト、チンゲンサイ
(魚類) こい、ふな
(果物) すいか、ぶどう、メロン
(お茶) 紅茶、ジャスミン茶、杜仲茶、なつめ茶



▼その他日常生活での注意点▼ 

1.基礎体温を毎日つけましょう。
基礎体温を測ることにより自分の体の状態(体内リズム)を目でみてわかることができます。またグラフの内容で体質別 も分かりやすくなります。    

2.睡眠はしっかりとりましょう。

3.ストレスはためないよう、運動(ヨガ、気功など)、読書、散歩などで気持ちが安らぐ空間を持ちましょう。

さて、お読みになって無月経にはさまざまなタイプがあり、タイプ別による治療、食養生、生活習慣が重要だということがお分りになって頂けましたでしょうか。
些細なことなのですが日常の過ごし方を少し見直してみるだけで体調が変わりはじめ、 体質改善に繋がっていきます。無理のない範囲で実践し、続けていくことが大事です。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 


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