★医大における中医学や東洋医学の教育システム★
お医者さんになるには大学の医学部に通うわけですが、医学部では西洋医学を中心に勉強しますので、中医学や東洋医学について十分な勉強はいたしません。
これは医学部だけではなく薬科大学も同じです。
各大学によって中医学研究会や東洋医学研究会といったものがあったり、授業で東洋医学の講義があったりしますが、医学教育と言う意味ではまだまだ不十分な状態です。
ですから東洋医学に興味のある学生は個人的に勉強をせざるをえない状況です。
さて日本の医療制度をみてみると、鍼灸治療は「医療類似行為」という枠組みであります。
お医者さんは「医療行為」を行えるわけですから、当然鍼灸治療も行えますし、漢方薬の処方もできるわけです。
つまり、法律上はお医者さんに中医学の知識がなくても、針を打っても、漢方薬を処方しても問題はありません。
又、薬剤師さんも同様に中医学の知識がなくても漢方薬の知識がなくても販売することができます。
逆に、中国の中医大学で中医学を学び中医師として病院へ勤務している人でも、日本の免許を持っていなければ、いくら中医学に精通 していても日本で針を打ったり、漢方薬の販売や処方することはできません。

先程も述べましたが、鍼灸や漢方には素晴らしい効果がありますし、逆に副作用もあるわけです。
それらの効果を引き出すのも、副作用を出さない様にするのも、正確な中医学の知識が必要になります。
しかしながら、医師の免許を取得したというだけで、中医学の知識が無いのにこれらの治療や漢方薬の処方が可能になるのは、私にはとても不思議な制度に思えてなりません。

さて次は鍼灸師の教育システムについて紹介してみましょう。

★日本の鍼灸師の教育システムについて★
先ず、日本で鍼灸師になるには、鍼師・灸師の国家試験に合格しなければなりません。
鍼師灸師の資格は、厚生労働大臣が認定する国家資格です。
しかも、この資格は独立開業権が認められております。
つまり、国家試験に合格して必要な事務手続きを済ませれば開業(開院)ができるという資格です。
この鍼師灸師の国家試験を受験するには、文部科学大臣の認定した学校または厚生労働大臣の認定した養成施設(鍼灸専門学校など)で必要課程を修了しなければなりません。
(健常者の場合は厚生労働大臣の認定した養成施設になります。)
さて、国家試験に出題される問題についてですが、殆んどの問題が現代西洋医学の問題で東洋医学についての問題の割合はたったの五分の一位 です。

上記の事を踏まえて鍼灸学校の話しをいたしましょう。
鍼灸学校の修業年数は3年です(鍼灸大学を除く)。
学生の年齢を見てみると高校を卒業してそのまま入学した方もいれば、60代の方もおられます。
学生の年齢だけをみても幅が広いことがわかると思います。
ですから、入学の動機も様々で中医学や東洋医学を学びたいと純粋に思って入学される方は決して多くはありません。
しかも、国家試験の問題は殆んど現代西洋医学ですから、専門学校の3年間はどうしても現代西洋医学中心のカリキュラムになってしまいます。
これはしかたがないことで、東西に限らず医学の勉強は莫大な知識が必要になってきます。
3年間で東西の医学を修得させるのは不可能なのです。
すると、国家試験に合格することが大事であるし、学生も中医学や東洋医学をどうしても勉強をしたいというわけではないので、現代西洋医学中心のカリキュラムになってしまいます。
又、鍼灸学校に常勤されている先生方も上記の教育システムによる教育を受けておられるので、学生に中医学や東洋医学を深く教えることができる先生は殆んどおりません。
学校によっては中医学や東洋医学に詳しい先生がおられたり、外部より先生を招いているところもありますが、それでも授業のコマ数の問題等、中医学や東洋医学の教育がしっかり行われているとはいえません。
ですから、日本の鍼灸師は、鍼灸学校に入学し3年間という医学を学ぶにはあまりにも短い時間で、現代西洋医学の中から国家試験に出そうな箇所を中心に勉強し、試験に合格し資格を所得しているのです。
しかも、先程も述べましたが鍼灸師の資格は独立開業権がありますので、この時点で開院をしても問題はありません。

日本の鍼灸学校の教育システムについては上記のようになります。
如何ですか?
これを読まれて鍼灸学校で東洋医学や中医学のスペシャリストが育つと思いますか?
それどころか3年間という短い期間で医療者を育てられると思いますか?

これについては他の教育システムと比較すれば答えは一目瞭然です。
例えば、台湾の中医大学などでは6年以上の時間を費やし中医師を育てます。
その内容は
1〜3年・・・・・・西洋医学の基礎
3〜5年・・・・・・中医学
5年(後半)〜6年・・臨床
学生は卒業までに7000〜1万人の患者さんを診ます。
さらに卒業後は大学病院などで研修を行います。
(中国や台湾では大学病院の中に鍼灸科があります)

又、日本の医学部については6年+2年の研修といったプログラムになっています。

これら2つを比べても医療を行う人材を育てるのには、かなりの時間が必要になるのがご理解いただけると思います。

それに比べると日本の鍼灸学校の3年という期間はどうでしょうか?
当然、鍼灸学校卒業時に学生の臨床経験は数名〜数十名がいいとこでしょう。(当然見学のみ)
又、国家試験合格=開業権というのもどうでしょうか?
国家試験にさえ合格すれば、研修経験が無く学校でひたすら机上の論理だけを学んだ人であっても開業ができ、院長先生となれるのです。

これが日本の鍼灸教育制度であります。
あえて苦言を申すと、国は鍼灸治療を「医療類似行為」として扱っており、「医療行為」とはみなしていないわけで、当然鍼灸師も医療行為が出来ないわけですから医師と同等に6年や8年もかけて知識を得る必要がないと考えるわけです。
ですから3年で卒業できる制度を作ったのだと思います。
また鍼灸学校でもこのような理念や状況のなかでは、治療者を育てる教育が出来るわけもなく、ただ国家試験受験の為の予備校に成り下がってしまっているのが現状かと思います。

ですから、中医学や東洋医学を学びたいと思う学生は学校に頼ることは出来ず、独学するしかありません。
しかし、真の東洋医学や中医学を実践している治療院も少ないことから、研修をしたいと思っても、なかなかそのような治療院で研修ができるチャンスも少ないのが現状です。
医学は本からだけで全てを学ぶ事は不可能で、実際の臨床に触れたり経験のある先生に指導をしていただかないと身に付きません。
日本のこのような状況下では、いくら本人が中医学や東洋医学を学びたいと思っても実践できる場所は少ないのです。
その結果、中医学や東洋医学をしっかりと修得できる鍼灸師・医師・薬剤師の数はかなり少ないものとなっております。

★ 日本の針灸と中医学★
この様な環境下で育った鍼灸師の多くは治療行為などは出来ずに慰安的な行為に頼るしかありせん。
又、本当の東洋医学や中医学すら知らない状況ですので、冒頭でも述べたように、鍼灸治療をしていれば東洋医学の治療をしていると勘違いしてしまう鍼灸師がでてきてしまうのです。
その結果、安易に看板に東洋医学の文字を書いてある治療院も少なくありません。
又、最近は東洋医学ブームでメディアなどでも間違った東洋医学の情報が氾濫しており、街を歩けば東洋医学を売り物にした癒し処などが目に付きます。
残念ながらこれらの多くは東洋医学とはかけ離れたものであります。
先程の文章を読まれた皆さんはおわかりだと思いますが、今の日本では中医学・東洋医学による治療を実践している治療院は少ないのが現状であります。
又、日本における鍼灸師のレベルの幅はかなり大きいものになります。
例えば、3年間鍼灸学校に通っただけで特に研修の経験もなく、国家試験に合格して開業した先生から、在学中から卒業後数年間に渡り経験のある臨床家の元で研修をした先生では、かなりの差になるわけです。
又、日本の場合は中医学を全く知らずに漢方薬を扱っておられる医師や薬剤師も多く存在します。

しかし、しっかりと中医学を勉強されておられる医師・薬剤師・鍼灸師は少数ながら必ずおります。
ですから、中医学・東洋医学の治療をお求めの皆さんは、メディアや看板に踊らされることなく、しっかりと御自分の目でそのような治療院を諦めずに探してくださいませ。

勿論、症状によっては中医学や東洋医学以外の鍼灸治療法でも十分効果 がありますので、ご自分に合う治療法にまだ出会っていない方は、是非ご自分に合った治療法を探して下さいませ。

▼最後に▼
最後まで目を通して頂き有難うございます。
鍼灸・漢方医療を受診される際には患者さんサイドにも医療者を見極める力を養っていただきたいのであります。
慢性疾患や体質改善の治療を希望される方は、弁証(症状の把握・起因・現状の進行状況)診断ができる所で受診して頂きたいと思います。
医学には、理論・治療方針・再現性が必要となります。鍼灸・漢方医療は決して病名診断で治療を行うものではございません。
今回の内容が鍼灸・漢方医療を受診されたいと希望する皆様方に伝わることを熱望いたします。

 


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