寝汗とは寝ている間にかく自然の汗のことです。大人では、一晩でコップ一杯分ほどの寝汗をかくと言われています。
寝汗の仕組みは睡眠が深くなると、視床下部の発汗中枢の体温のセットポイントが下がり体温を下げようとして汗をかこうとするものなのです。
特に、最初に睡眠が深くなったときに多くの汗をかく傾向にあります。これはまったく生理的なもので異常ではありません。ただし、寝汗があまりにもひどい場合は、自律神経失調症などの病気も考えられます。
寝汗は、夏よりも冬にかく傾向が多く、冷え性の人が時に寝汗をかきやすいとも言います。また、妊娠中や生理中にも体温が上がるため、寝汗を大量 にかくという女性が多いと言われています。


注意を要する寝汗
何らかの病気に伴ってかく寝汗はその病気の危険信号になります。
ここではどんな病気が寝汗を伴うのかを簡単にあげていきます。


自律神経失調症
自律神経とは心臓を動かしたり、汗をかいたり、自分ではコントロールできない自動的に働く神経のことです。
自律神経には活動する神経といわれる交感神経と、休む神経といわれる副交感神経の2つに分類され、必要に応じて自動的に切り替わって働くようになっています。
しかし、生活のリズムの乱れや過度なストレス、環境の変化などにより神経の働きが崩れてしまうことがあります。これを自律神経失調症といいますが、内臓や器官に病変があるわけではないので、病院で検査をしても異常なしと言われてしまいます。
自覚症状を訴えるケースが多く、頭痛、耳鳴り、口が渇く、動悸、冷え、息苦しさ、多汗、寝汗、倦怠感、不安などその他にも多岐にわたります。


ホジキン病
リンパ腫の一種で特殊なガン細胞を特徴にもちます。女性よりも男性に多く、女性2に対して男性3の割合でみられます。原因はわかっていません。
症状として、首の周りのリンパ節の腫れですが、脇の下や足の付け根のリンパ節が腫れることもあります。痛みがないのが普通 ですが、大量に飲酒をした際に痛みが出る場合があります。
またこれらに合わせて、人によっては発熱、寝汗、体重減少、かゆみ、疲労などがみられることもあります。
かぜや感染症による、痛みを伴うリンパ節の急な腫れはホジキン病の症状ではありませんので区別 が必要です。


甲状腺機能亢進症
甲状腺から甲状腺ホルモンがたくさん出過ぎるため、全身の細胞の新陳代謝が異常に高まる病気です。男性よりも女性に多くみられます。
症状は特徴的なもので頻脈、甲状腺腫、眼球突出がありますが、他にも動悸、寝汗、たくさん  食べるのにやせる、手の指が震える、疲れやすい、暑がり、イライラするなどがあります。


肺結核
結核菌が侵入して肺に炎症が起こる細菌性の感染症です。1950年代までは死亡原因の第1位 を占めていた病気です。
症状として咳、痰、血痰、胸痛などの呼吸器に関するものと微熱や悪寒を伴わない高熱、寝汗、食欲不振、体重減少、全身倦怠感など全身に関するものに分けられます。これといって診断の決め手となる症状があるわけではないですが2週間以上持続している場合には検査が必要となってきます。

寝汗が長期にわたって出るならば上記のような病気を疑ってみると良いかもしれません。またこれら以外にも精神的に不安な状態や疲労が続いた場合にもみられることがあります。
またここには紹介しきれなかった病気にも寝汗が伴うものもいくつかあります。頻繁に寝汗を生じる場合には、専門医のところで一度検査を受けて今の身体の状態を把握しておくと早い対応が出来ると思います。


中医学的観点からの寝汗

寝汗の説明の前に中医学の生体観から説明していきます。

〜気・血・水〜

気− 気とは、物質であり、人が生理活動をする上での重要なエネルギー源です。物質ゆえに消耗したり補充したりすることが出来ます。
また運動性も持ち合わせており、「昇降出入」という働きがあります。「昇降出入」とは、気の運動形式のことで、昇ったり降りたりする上下方向の運動と、発散したり収納したりする出入方向の運動が基本になっているということです。よって、気は物質でありながら運動性を持っているのです。
また、気が不足して病気になってしまうことを気虚と呼び、気が1ヵ所に滞って流れが悪くなって病気になってしまうことを、気滞と呼びます。
気の具体的な生理作用には人体各部を栄養する栄養作用、内蔵の活動を促進したり、体内の流れを推進したりする推動作用、内臓を温め活動を促進したり、体温を維持する温く作用、体表を保護し外から侵入してくるものを防いだり侵入してきたものと闘ったりする防御作用、人体を構成している水分や血液が外に漏れ出ないようにする固摂作用、体内の物質を変化させたり代謝を行う気化作用などがあります。

血− 血とは、体内を流れる赤色の液体で人体を構成し、生命活動を維持する基本的物質です。現代医学でいう血液とは似ていますが、イコールではありません。中医学で血の作用は全身を栄養し潤すことです。
例えば、顔が赤くつややかだったり、肌がふくよかで皮膚や髪の毛が潤って光沢があるのも、あるいは目などの感覚器や筋肉などの運動器が円滑に働くのも血の充足のおかげなのです。
他にも、血は精神活動を支える栄養源になっており、血が足りなくなると精神的な症状(失眠、健忘、昏迷、不安など)が現れます。

水− 水とは人体中の正常な水分の総称です。
その中には唾液や涙、汗といったものも含まれます。
水の作用は、体表部(皮膚や汗腺など)から体内深部(脳や骨、関節や内臓など)を潤します。また水は血を作るうえでも重要な成分になっています。


〜臓・腑〜

臓− 臓とは五臓とも呼ばれ、肝、心、脾、肺、腎という実質性臓器のことを指し、主な働きは気、血、水の生成と貯蔵を担います。

腑− 腑とは六腑とも呼ばれ、胃、大腸、小腸、膀胱、胆、三焦という中空性臓器のことを指します。
主な働きは、飲食物の消化をし、身体に必要なものは五臓に渡し、不必要なものは排泄します。


臓腑の中で特に寝汗と関連が強いものを説明していきます。

心− 心は血の流れを管理します。
体の中には血脈(血が循環する通路)があり、血はその中を流れますが、それは心が拍動することで可能になります。その結果 、血は全身に運ばれて滋養しているのです。
また、心は人の精神や意識をコントロールしています。現代医学では精神活動は大脳の生理機能ですが、中医学では心が担います。特に喜びの感情と結びつきが強く、さらに舌にもつながっていて、味覚や言葉なども心の働きによるものです。

脾− 脾は、胃や小腸で消化吸収された食べ物を栄養物質に変え、全身に運びます。これを運化作用といいます。
また水分も運び、余っているならば肺や腎に送り、汗や尿として身体の外に出してもらいます。脾は身体に必要な気や血を作り出す大事な臓器です。エネルギーを全身に運びますが、特に上に昇らせる働きが強く、これを昇清作用といいます。
さらに血のコントロールにも一役買っています。血の流れは心のコントロールでしたが、脾は血が血脈の中から外に漏れ出してしまわないように制御する働きがあります。
脾と結びつきやすい感情は思うです。あまり思い悩みすぎてしまうと脾のこれらの働きが弱くなってしまいます。

肺− 肺はガス交換の場であり、自然界の清気を吸入し、身体の濁気を吐き出しています。いわば呼吸は、肺のコントロールによるものです。呼吸がスムーズであれば体内の気の流れも良くなり、吸い込んだ清気は脾が作った栄養物質と合体して体内で気が作られるのです。
また、脾が肺まで持ち上げてくれた水や栄養物質を全身に散布します。皮膚や身体の各組織が潤うのはそのためです。
さらに皮膚表面には汗孔があり、そこをあけたりしめたりして汗を出したりする働きや、肺の中の異物を吐き出してきれいにする働きもみんな肺の宣発粛降作用のおかげです。

腎− 腎は身体の成長や発育、生殖能力などの源となっています。
これは腎が精を管理するからです。精とは先天の精、後天の精が合わさったものですが、前者は両親からもらったいわば生まれつきもっているもの、後者は脾の働きで得た栄養物質や肺で得た自然界の清気が合わさったものです。
また腎は、肺が吸い込んだ清気を身体の奥に引き込む働きをもち、肺のガス交換を手伝います。水分代謝もコントロールし、体の中の余った水分は尿として排出し、必要な分は再利用するのです。
また体内には陰陽というものがあります。陰とは身体を滋養するもので、血や水はこの部類に入り、陽とは活動させるもので、気がこの部類に入ります。各臓器にも陰陽はありますが、腎陰と腎陽がそのおおもとになります。そのため腎陰が減ると身体全体の陰も減り、腎陽が減ると身体全体の陽も減ります。


ここまでざっと中医学的な生体観を説明してきました。
これから寝汗の原因を説明していきます。


陰虚による場合
陰虚とは、体内の必要な水分が不足している状態です。
水分が不足しているので体内に熱がこもりやすくなっています。すると身体は汗を出して体温を下げようとするために過度の寝汗となってしまうのです。
また、汗をかくとさらに水分が不足して陰虚の状態が続いてしまいます。
さらに分類していくと、どの臓腑の陰が不足して寝汗が出るのかをみていきます。


心陰虚
心労や慢性疾患による栄養不足により、心陰が不足したり感情による内傷で心陰を消耗したり、心の熱が強くなり心陰を焼いてしまうことが原因で発生します。
陰が不足して陽(熱)が盛んになるので、五心煩熱(両手、両足、心臓が熱っぽい)や気持ちが落ち着かなかったり、イライラして眠れないという症状が寝汗とともに出てきます。脈をとると速く、舌の色は赤くなります。


肺陰虚
ストレスなどで体内に熱が発生し、それが肺を傷つけたり、対外から乾燥したものや熱が入りすぎてしまうと肺を焼いてしまい、慢性の咳で肺陰を消耗したりして発生します。
こちらも体内で熱が発生している状態なので、カラ咳して痰が出ない、出ても少なくネバネバしています。ひどければ痰に血が混じっていることもあります。呼吸も浅くなり、頬が赤くなるなどの症状も出てきます。


腎陰虚
今まで出てきた陰虚の状態が長引くと、陰のおおもとである腎陰を損傷していきます。また、体内の熱が発生しても陰を傷つけてしまいます。他にも失血や体液の消耗、性生活の乱れなどでも起こります。体が痩せてくる、五心煩熱  、頬が赤いなどの症状が寝汗とともに出てきます。
陰虚の治療としては、体内の余分な熱をとり(清熱)、必要な陰を補う(滋陰)を同時に行います。またその時弱って いる臓腑をパワーアップさせる治療を忘れてはいけません。

半表半裏証の場合
中医学では、病がどこにあるかということで、表証、裏証、半表半裏証に分けることが出来ます。

表証− 表位とは、体の最も浅い部位で皮膚や頭部、肩背部や四肢を指し、ここに病が存在するとき表証といいます。
わかりやすくいうと風邪の引き始めの時期です。

裏証− 裏位とは、体の最も深い部位で内臓などの部位を指し、この部位 に病が存在するとき裏証といいます。風邪が長引いてる状態です。

半表半裏証− 半表半裏とは、表と裏の中間で横隔膜に隣接する臓器類のある部位 を指し、この部位に病が存在するときを半表半裏証といいます。
ちょうど表証から裏証に移り変わる間です。このときに寝汗が出やすいのです。
他にも脇が張って苦しくなったり、熱感と悪寒が交互にやってきたり、口が渇く、口が苦い、めまいなどの症状を伴います。

これらの治療は、まずは病を体から発散させることを第一とします。

中医学では、現代医学とは違う角度から寝汗を捉えて治療していきます。
病院で検査をして、特に異常なしと言われたがなかなか症状が改善しない方は中医学による鍼灸治療をお勧めします。その方の生活習慣や体質などを細かく聞き、舌や脈を同時に診ながらタイムリーな体の状態を把握できる中医学は症状改善の手助けとなるでしょう。
尚、同じ鍼灸を使い、治療を行う鍼灸院はたくさんありますが、中医学を学び伝統的な鍼灸の施術を行っている鍼灸院の数は少ないです。鍼灸治療を受ける方も吟味する力が必要となっていることを留意ください。
HPで検索される場合は、鍼灸院の述べている内容をよく読み、内容を把握することが大切かと思います。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください 。

 


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