胆石は、肝臓から十二指腸に続く胆汁の通り道(胆道)に石ができる病気です。ときとして右上腹部に激痛が起きますが、まったく無症状のまま経過するケースも多くみられます。
胆石は、体内にとり込まれた脂肪やたんぱく質などの消化を促す胆汁の成分が固まって、石状に形成されたもので、大きさや形はもちろん、できる場所、種類、形成・成長過程なども実に様々です。
胆汁には胆汁酸、リン脂質、コレステロール、ビリルビン(胆汁色素)などの成分が含まれています。
胆石の種類は構成成分によって、“コレステロール胆石”と“色素(ビリルビン)胆石”、その他の胆石に分けられます。

胆石は、発生部位によって胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。
“胆嚢結石”は、胆嚢内にできた結石で、コレステロール石が圧倒的に多く、胆石のなかで最もよくみられるものです。
“総胆管結石”は、胆管内にある結石で、大半は胆嚢内にできた結石が胆管に押し出されてきたのです。
“肝内結石”は、肝臓内の胆管にできる結石で、胆嚢結石や総胆管結石と比べると発生率の低い胆石です。

日本では、胆石保有者数が年々増える傾向にあり、現在、成人の5〜10%の人が胆石をもっていると推測されています。
また、第二次世界大戦前には約80%が色素胆石だったのに対し、近年はコレステロール胆石が70%以上を占めるようになっています。
胆石保有者が増えている要因の一つに、検査技術の向上や人間ドックなどの普及によって胆石がみつかりやすくなった点があげられます。
また、食生活が欧米化して、脂肪などの摂取量が増えたことも関係していると考えられます。
胆石ができやすいタイプは、Fecund(多産)、Female(女性)、Fatty(体格がよく、小太り)、Forty(40歳以上)の「四つのF」という特徴があるといわれています。
実際、胆石のできる割合は男性より女性のほうが1,5〜2倍ほど高く、やせている人より太っている人のほうが多いことも明らかです。また、年齢が高くなるにつれて胆石ができやすくなり、60〜70代がピークです。
このほか、食事の時間が不規則だったり、ストレスが多いことも胆石ができやすい条件になります。


≪コレステロール胆石の形成≫
コレステロール胆石の患者数は年々増加しており、全胆石の大半を占めるといわれています。
成因については、解明されていない点も多くあります。結石ができるまでの3段階は、まず胆汁が過飽和の状態になり、次に核が形成されたり、コレステロールが結晶化し、さらに、肉眼でわかる大きさの結石に成長すると考えられています。
コレステロールは水に溶けないので、胆汁中では、胆汁酸とレシチンで形成されるミセルという形態に包み込まれたり、ベジクルというリン脂質の膜で覆われた状態で存在しています。
しかし、ミセルとベジクルがコレステロールを取り込む量には限度があるため、何らかの原因で胆汁中のコレステロールが増えすぎるか、逆に胆汁酸やレシチンの割合が低くなると、コレステロールをそれ以上ミセルとベジクルに取り込めなくなります。この状態を過飽和といいます。
胆汁中のミセルとベジクル、コレステロールのバランスが崩れた結果 、胆石ができやすくなるのです。
コレステロールが増えすぎる原因としては、コレステロールの摂取量 や腸管から吸収される量の増加、肝臓でのコレステロールの合成量の増加などがあげられます。また、胆汁酸とレシチンが減少する原因としては、腸の手術後や、腸の炎症によって胆汁酸をうまく吸収できなくなるか、先天的な胆汁酸を生成する機能の異常などが考えられます。
これらの理由から、胆汁が過飽和の状態になると、胆汁中のベジクルが集まって塊となったり、コレステロールの結晶が形成されます。さらに、胆嚢の機能障害などが加わり、胆石に成長していくといわれています。


≪色素胆石の形成≫
色素胆石は、ビリルビンカルシウム石と黒色石の2種類に分けられますが、その成因は、胆道への細菌感染や寄生虫の侵入、ファーター乳頭という、胆管の出口にある小さな突起の炎症(乳頭炎)や傍乳頭憩室のよる胆汁の流れの停滞、低脂肪で炭水化物に偏った食事などです。
特に、大腸菌やそのほかの細菌による胆道感染が起こると、これらに含まれるベータ・グルクロニダーゼという酵素によって水溶性のビリルビンが分解され、水に溶けにくい性質に変化します。
このビリルビンが胆汁中のカルシウムと結合して、ビリルビンカルシウム石ができると考えられています。
胆汁のpH(水素イオン指数)がアルカリ性に傾いたり、胆汁酸の濃度が低下しても、ビリルビンカルシウム石ができやすくなるといわれています。
一方、黒色石は、溶血性黄疸や肝硬変が原因になったり、心臓の弁置換手術後や胃の切除手術後などに形成されることが多いのですが、形成されるメカニズムについては、まったく明らかにされていません。


≪胆石による症状≫
胆石で最も特徴的な症状は、疝痛発作といわれる、さし込むような激しい腹痛です。疝痛発作は、胆汁を分泌しようとして胆嚢が収縮するときに、胆石が胆嚢から総胆管や十二指腸のほうへ動かされて内壁とこすれ合うと生じます。
また、胆嚢頸部や総胆管などに胆石がつまる胆石かん頓によっても起こります。
胆嚢は食事でとった脂肪分を処理するために働くので、疝痛発作は脂肪分の多い食事や料理を食べたり、暴飲暴食の後に現れやすくなります。
最初は、上腹部の圧迫感や不快感などで始まりますが、しばらくすると右上腹部に刺すような痛みを感じるようになります。
痛みは、10分程度で治ることもあれば、数時間持続ずることもあり、市販の鎮痛剤では治まらないこともしばしばです。
また、疝痛発作の前ぶれとして、吐気や悪寒、右肩のコリといった症状が現れるケースもみられます。
上腹部のほかに、右肩や右腕、背中などに痛みが起こることもあります。この痛みは放散痛といわれ、内臓の痛みの刺激が脊髄にある知覚神経に影響を与えるために現れるものです。
腹痛とともに右肩への放散痛があれば、胆石である可能性が高いといえます。
疝痛発作のほかに、黄疸や発熱がみられることもあります。黄疸は、胆石によって胆管がつまり、胆汁の流れが悪くなったときに現れます。
また、発熱は37〜38℃程度で、疝痛発作に伴う一時的なものがほとんどですが、高熱が何日も続いたり、上がったり下がったりを繰り返すような場合は、胆管炎や胆嚢炎を併発している場所や種類によって異なります。
例えば、疝痛発作はビリルビン胆石よりもコレステロール胆石のほうに起こりやすいといわれています。
コレステロール胆石は軽くて小さく、胆汁の中で動きやすいため、発作を誘発しやすいと考えられます。
また、胆石があっても、まったく症状が現れないこともあります。このような胆石をサイレントストーン(無症状胆石)とよびますが、胆嚢内結石の多くがこの無症状胆石のため、健診などで偶然にみつかるケースが少なくありません。


≪現代医学による治療法≫
胆石の治療法は、手術をしないで胆石だけを取り除く保存療法と、手術によって胆嚢ごと摘出する手術療法に大別 されます。
保存療法には、溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法、内視鏡的療法があります。
溶解療法は、溶解剤を用いて胆石を溶かす方法で、経口薬を服用する場合と、胆嚢にチューブを挿入して胆石に直接溶解剤をかける場合があります。
ただし、すべての胆石に有効なわけではありません。
溶解療法が適応できるのは、胆石が胆嚢内にあることが条件で、さらに直径1〜1,5cm以下の純コレステロール石で、表面 が石灰化していないものに限られます。また、胆嚢に変形や萎縮がなく、疝痛発作などの激しい症状がみられないことも条件です。
体外衝撃波胆石破砕法は、体外から衝撃波をあてて胆石を細かく砕く治療法です。
砕いた石は、さらに溶解剤を服用して溶かす必要があります。
体外衝撃波胆石破砕法も溶解療法と同様、胆嚢内の胆石であること、石の大きさが直径2cm以内で、数は最大3個までといった適応条件があります。
また、適応条件をクリアしても1回だけでは破砕できず、何回も行わなくてはならないケースもあります。
総胆管結石に対しては、溶解療法や体外衝撃波胆石破砕法は適応となりませんが、内視鏡を用いた十二指腸乳頭括約筋切開術で摘出できる場合があります。
内視鏡を十二指腸まで挿入し、十二指腸が下行している部分である下行脚に位 置するファーター乳頭の括約筋を一部切開し、総胆管にある胆石の自然排泄を待ったり、機械を用いて切石します。
また、胆石をバスケットという器具を使って摘出したり、切石除去する方法もあります。
結石が大きすぎて切開部を通らない場合は、衝撃波やレーザーで結石を小さくしてからとり出します。
溶解療法と体外衝撃波胆石破砕法は、手術をせずにすむので苦痛が少ないという長所がある半面 、適応範囲が狭いことと、胆嚢を残しているために再発が多いことが最大の難点です。
また、破砕した石片が胆嚢管に引っかかると、胆嚢が機能しなくなるケースもみられます。
まだ様々な問題が残されており、根本治療という意味では限界があります。

疝痛発作をたびたび繰り返したり、保存療法で軽快しないときや、胆嚢炎、胆管炎を合併しているような場合は手術の適応となります。
手術の方法には、開腹手術と腹腔鏡下胆嚢摘出術があります。
開腹手術は胆石のある場所によって、所要時間や手術方法、入院期間などが異なります。
最も多くみられる胆嚢内胆石では、胆嚢を切除するだけの簡単な手術で、1〜2時間前後で済みます。
総胆管結石の場合は、総胆管を切って胆石を取り除くとともに、胆嚢も摘出します。
摘出後、胆汁が腹腔内に流れないように切開した部分にチューブを入れ、胆汁を体外に排出するなど補助的な処理が必要となるため、胆嚢内胆石の場合よりも入院期間は長くなります。
従来の開腹手術に対し、腹部を切らずに胆嚢を摘出するのが腹腔鏡下胆嚢摘出術です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術は、腹部に3〜5箇所の小さな孔をあけ、そこに内視鏡の一種である腹腔鏡をいれて、腹腔内をモニターで観察しながら胆嚢を取り出す方法です。
開腹手術のように腹部を大きく切開する必要がないため、手術後の痛みが少なく、傷もほとんど残りません。
開腹手術の入院期間が2週間から1ヶ月ほどかかるのに対し、3日から1週間で退院できることから、画期的な治療法として広く普及してきています。
しかも、治療効果は開腹手術とほとんど変わらないので、今後は腹腔鏡下胆嚢摘出術が治療の主流になっていくと思われます。
保存療法、手術療法のどちらにしても、数多くの方法が開発されて選択肢はますます広がっています。
治療にあたっては、胆石の種類や数、大きさ、胆嚢の状態、全身状態などを把握し、最適な方法が選択されます。


【中医学的な捉え方】
人体について、中医学的な考え方と、現代医学的な考え方は異なります。
中医学では人体を一つの“小宇宙”として捉えています。
身体にある器官を一つ一つ別個に考えるのではなく、一つの有機体とみなし、常に全体のバランスを視野に入れて病気を考えていきます。
詳しくは、「わかりやすい東洋医学理論」をお読み下さい。

胆石について、関わる臓器は「肝と胆」です。
●肝の働き・・・ 疏泄を司り、血を貯蔵しています。
“疏泄”は流れや発散という意味で、気血の流れを円滑にするという働きを指します。血の貯蔵とは、体内を循環してきた血を貯めて全身の血量 を調節する働きをいいます。

●胆の働き・・・ 肝で生成された精汁である胆汁を蔵し、小腸に分泌する働きがあります。
胆は肝に附属しており、両者は経脈に通じて相互に関連しています。また、胆汁の根源は肝にあり、肝の余気が胆に排泄され、そこで凝集して生成されたものが胆汁であるとされています。
胆汁の分泌は肝の疏泄機能の調節を受け、肝胆は協調して消化機能に関与しています。
肝胆は表裏の関係にあり密接で、一方の機能失調は他方に波及して、最終的には肝胆両者の失調が起こります。

胆石は、「肝胆湿熱」の証で起こると考えます。

原因は、
○湿熱の邪を感受(夏・秋に多発)・・・
  気候の変化も人体に大きく影響します。
“湿”は人体には余分な水分です。
夏と秋をつなぐ時期は湿気が最も盛んな季節です。湿気の多い気候、また雨に濡れたり長いあいだ湿った所にいることは湿邪が人体に侵入する原因となります。湿邪は気の運行を阻滞(渋滞)させてしまいます。
また、湿邪が人体に侵入し長く停滞すると熱化していきます。
体内に過剰な水分と熱が停滞している状態は、代謝機能を失調させる原因となります。

○甘いもの、油っぽいもの、味の濃いものの過食(肥甘厚味の過食)・・
  このような食べ物は脾胃の消化機能を低下させ湿熱を生成させます。脾胃で形成された湿熱は、肝胆に移行していきます。

○過度の飲酒・・・
  少量の飲酒は気血の循環を促しますが、飲み過ぎが長期間続くと、湿熱が生成され脾胃を傷め、肝血を障害します。

○ストレス(感情の変化)・・・
  気の流れを円滑に行うのが肝の疏泄機能です。
ストレスは気の渋滞を引き起こします。

以上のような原因により、湿熱が体内に侵入し停滞することで胆汁の排出がスムーズに行われなくなります。熱が発生することで炎症を起こり、肝胆の機能が亢進します。
機能が正常を超えてしまうと、分泌過剰や、濃縮が過剰となり、代謝異常が起こります。
このように、胆汁の鬱滞、炎症、代謝異常が起こることで胆石が形成されていきます。

肝胆湿熱で起こる症状には、胆石の他に“脇胸部脹痛・黄疸・食欲減退・悪心嘔吐・口が苦い・寒熱往来(悪寒と発熱が交互にあらわれる)・大便不調(泥状便または便秘)・尿量 減少・陰嚢湿疹・睾丸腫脹・帯下・外陰部瘙痒感”などがあります。

●治療方法・・・ 清泄湿熱・疏肝利胆(肝胆の湿熱を取り除き、疏泄機能を整えます)

出来てしまった胆石を取り除くことは、鍼灸治療では困難です。
しかし、胆石が出来た事による附随症状の緩和・痛みの軽減に対しては有効かと思います。
(例:食欲不振、季肋部の脹り・痛みなど・・)
そして、胆石の出来やすい体質を改善することを目的にお手当を続けることも大切です。

X線撮影やエコー検査(超音波検査)など、現代医学の発達した検査機能を活用し、日常の生活習慣・食生活に気をつけながら適切なお手当を受けて頂きたいと思います。

 


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