倦怠とは、身体が疲れて動きたくなくなるという自覚症状のことです。
全身の無力感、局所のだるさ、両足の無力感、思考力低下、眼精疲労、視力低下、ふらつき、手足のふるえ、など様々な症状があります。
身体的なものだけでなく、精神的に感じるだるさも含まれます。

倦怠感を伴う病気には・・・
貧血、低血圧、肺結核、肝臓疾患、糖尿病、腎臓疾患、精神的疾患(うつ病など)、栄養状態不良、脱水症状、悪性腫瘍、筋神経疾患、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)、自律神経疾患、薬剤の影響、長期感染症、睡眠障害など様々あります。

病院で行う検査項目には・・・
体温測定、尿検査、末梢血液検査、炎症反応検査、血圧測定、肝機能測定、腎機能測定、 心電図、胸部レントゲン、糞便検査などがあります。

その結果、さらに詳しく調べる場合には・・・
肝臓胆嚢系検査、糖尿病検査、腎臓検査、血清総タンパク、電解質、血中薬物機能、感染に対する免疫検査、など疑われる検査を行ないます。

しかし、“だるさ、疲れが取れない”という症状は数値では現れにくいものです。
機械を使った検査を行わない中医学では、どのように治療していくのか説明していきます。


【中医学的な捉え方】

中医学では、身体を構成する“気・血・水”を十分に生成・代謝できる五臓六腑が正常に機能している状態を健康と考えます。
“気・血・水”が生成できない、正常に代謝できない、臓腑の機能が低下・失調する、原因(病因といいます)によって分類されます。
病因を見極めて治療方法を決めていくことを“弁証論治”といいます。
病因に沿って“証”(症状の進行具合、体質、気・血・水のバランス失調を見極める)が決まれば(これを弁証といいます)治療方法が決まっていきます。
病因が異なれば、治療方法も異なります。
病因を見極める方法は、四診(望診・聞診・問診・切診)といいます。
患者さんの様子を、観察し(望診)、声を聞き・発せられる臭いを嗅ぎ(聞診)、話しを聞き(問診)、患部に触れる(切診)などで判断していきます。

では、いくつかのタイプ(弁証)別に説明していきます。


≪脾気虚による倦怠≫
脾の働きは、大まかにいうと消化器です。解剖学的な”脾臓”そのものを指すのではなく消化に関わる機能すべてを含んでいます。
脾には、運化作用・昇清作用があります。
“運化”とは、水穀(飲食物)を消化・吸収する作用です。
これにより水穀の精微(栄養素)が作られて、身体の基本物質(エネルギー)である“気・血・水”が生成されます。
“昇清”とは、脾の気が“水穀の精微(清といいます)”を心・肺へ上らせて栄養を全身に送る働きのことです。
栄養不足、慢性疾患、労力過度、思慮過度などが原因となって脾の働きが失調すると、気血の生成が低下し、全身性の気血不足を引き起こします。
つまり、エネルギー不足=気虚という状態となります。
このタイプの場合、活動時や食後に倦怠が強く、四肢無力(手足に力が入らない状態)、食欲不振、軟便・泥状便、嗜睡(傾眠・強い眠気)などの症状を伴うことがあります。

(治療方針)補気健脾・・・脾気を補って気の推動機能を改善します


≪痰湿による倦怠≫
まず“痰湿”から説明します。身体の中には、多くの水分が必要です。
常に代謝されて身体を巡り、不要な水分は汗や尿などで体外に排泄されます。
冷たい物やなま物の食べ過ぎ、お酒や脂っこい物、味の濃い物の食べ過ぎなどで脾に負担をかけ、運化(消化吸収)機能が低下すると水分の代謝が出来ず“痰湿”が形成されます。つまり余計な水分が溜まった状態のことをいいます。
痰湿は、粘り気・重たい性質があり、身体を巡る気の動き阻害し、経絡の流れを阻滞させてしまいます。
充分なエネルギーが巡らず、余分なものが体内にあるために倦怠が起こります。
このタイプの場合、胸苦しい、悪心・嘔吐、胃部のつかえ、泥状便、痰が多い、身体が重だるい、下肢のむくみ、冷えなどの症状を伴うことがあります。

(治療方針)補益脾気・健運化湿・・・ 脾気を補って気の推動作用を改善するとともに、運化を促して痰湿を取り除きます


≪腎虚による倦怠≫
腎には、体内の水分代謝をコントロールして、不必要な水分を尿として排泄させる作用があります。その他、成長・発育・生殖・老化に深くかかわる“精(生命エネルギー)”を蓄える臓器でもあります。
腎の機能が低下すると「腎虚」という状態になり、子供の場合は成長が遅れ、大人の場合は不妊・性欲減退・聴力の低下・足腰が衰える・骨がもろくなる・記憶力が低下する、などが現れます。
腎の機能が低下する原因には、虚弱体質・房事過多・加齢によるものがあります。
このタイプの場合、足腰のだるさ・無力感が顕著で、記憶力・知力の減退、眼精疲労などを伴います。
また、特に”腎陰”(人体における陰液【体を潤す栄養の有る潤滑水の様な物】の根源で、臓腑・組織を潤し、滋養する働きがあります)が低下すると寝汗、手足のほてり感、なども伴います。
または”腎陽”(人体における陽気【体を温めるエネルギー】の根源で、臓器・組織を温め・活動させる作用があります)が低下すると冷えを強く感じる、頻尿、明け方に下痢をする、なども伴います。

(治療方針)
腎陰虚の場合:滋補腎陰・・・腎陰を滋養して虚熱を抑えます
腎陽虚の場合:温補腎陽・・・腎陽を補い、全身を温めて改善します


≪心脾両虚による倦怠≫
心は、血液を全身に送り出すポンプ作用のほか、脳の働きの一部を担っていて、情緒や感情といった「こころ」とも関係が深い臓器です。
心の機能が充実していると、精神状態が穏やかで、情緒も安定して、思考能力も活発になります。
心の機能が低下すると、動悸や脈の乱れが起こると同時に、不安感・不眠・夢を多く見る・驚きやすい、など精神面 の症状も現れます。
脾の機能低下と、心の機能低下は相互に影響しあって”心脾両虚”に発展し、消化活動と精神活動をともに低下させてしまいます。
脾気が低下して、運化機能が衰えると血の生成不足を引き起こし、心血も不足してきます。
また、思慮過度により心血が消耗されると、脾を滋養できなくなり運化機能にまで影響が及びます。
このタイプの場合、脾気虚にみられる症状のほかに精神疲労を伴い、動悸、不眠、多夢、精神不安なども現れます。

(治療方針)補益心脾・益気養血・・・ 脾気を補って気虚を改善し血の生成を促し、心血を補って精神状態の安定を図ります


≪食養生≫
いずれのタイプも、「気」が不足しています。気を補う食材を積極的に取り入れて下さい。
●豆類・・・大豆、枝豆
●ネバネバしたもの・・・オクラ、長いも、わかめ、納豆
●香りのもの・・・青じそ、生姜、みょうが、セロリ、にんにく、玉 ねぎ
●その他・・・梅干し、しじみ、いか、うなぎ、ごま、酢など

余分な「水分」を出す食べ物
●きゅうり、とうがん、とうもろこし、香り野菜、豆類(小豆)、そば、海草など

身体を「温める」食べ物
●かぼちゃ、にら、ねぎ、にんにく、生姜、赤唐辛子など

生命エネルギーを高める食べ物
●黒豆、大豆、ごま、くるみ、昆布、小魚、えび、長いもなど

その他、青魚(いわし、さんま、さば)は血行を良くしてくれます。

 


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