【湿熱下注による遺精】
甘いもの・脂濃いもの・味の濃い物を食べ過ぎたり(過食肥甘厚味)、お酒を飲み過ぎたりすると脾胃を傷つけてしまいます。
脾胃は主に消化吸収の働きをしておりますから、脾胃が傷つけられると消化吸収能力が低下してしまい、体内に余分な水分が残ってしまいます。
余分な水分は「湿」といい、重いという特性がありますので、体内の下部に溜まってしまいます。
更に「湿」や「気」が流れなくなると熱を生んでしまいます。
「湿」が人体の下部に溜まって熱になっている状態ですから『湿熱下注』といいます。
この熱が精室に悪影響を及ぼし「遺精」が起こります。
又、湿熱が肝と関わりの深い経絡*に影響を及ぼすと、肝臓の生理作用に影響を及ぼし「遺精」がおこる場合があります。
(経絡:「わかりやすい東洋医学理論」の経絡の説明を参照して下さい。)

《弁証》
湿熱下注による遺精ですから弁証名は「湿熱下注遺精」となります。

《症状》
<主症状>
遺精・尿に精液が混じることがある・小便の色が黄、又は赤・・・湿熱が精室に入り起こります。

<随伴症状>
胸がそわそわする・不眠・・・・・・・・・湿熱の熱は上に昇る特性があります。
熱が上昇して体の上部にある心へ影響を及ぼすと、心に蔵されている神に影響が出て起こります。(詳しくは「心」の生理作用を参照してください)
大便は軟らかく臭い・・・・・・・・・・湿熱が大腸へ入り起こります。又、熱が腸に入ると臭くなります。
胸腹部のつかえ・・・・・・・・湿熱が肝と関わりのある経絡に入ってしまうことにより肝の作用である「疏泄」の失調が起こり、この経絡の気血の流れが悪くなり起こります。
この経絡は胸腹部を通りますのでこの部分につかえ感がします。

《治療》
「清熱利湿」といって、熱を下げて湿を取りさる治療をします。


【腎虚による遺精】
ここで腎の生理作用を思い出してみましょう。
腎の働きを陰陽に分けると、腎陽は体を温める働きで、腎陰は体を潤したり、温め過ぎないように冷却をする働きでした。
又、腎は精を蔵しており、腎に蔵されている精を「腎精」といいました。
そして「腎精」は腎陰に属し、虚弱体質や過度の性交・自慰行為は「腎精」を損傷させてしまいました。

「腎精」の損傷は腎陰の減少を意味しますので結果的には腎陽が亢進してしまいます。
この様な状態を「陰虚陽亢」といいます。
健康な状態では欲念が生じても精液を漏らすことはありませんが、腎が「陰虚陽亢」の状態では、その熱が精室に影響を及ぼし精液の漏出を起こします。
又、腎の働きの中に「固摂作用」と言って、精液や尿を漏出させない働きがありました。
遺精が慢性化することにより腎の「固摂作用」が低下してしまい、「滑脱」と言って腎が精を蔵することが出来なくなってしまい「滑精」が起こります。
(詳しくは「気」の説明と「腎の生理作用」の説明を参照して下さい。)

《弁証》
腎が虚して起こる遺精ですから、弁証名は「腎虚滑脱遺精」となります。

《症状》
<主症状>
頻繁に「夢遺」又は「滑精」が起こる・・・・腎の固摂作用の低下で起こります。

〈随伴症状〉
腰膝がだるい・耳鳴り・めまい・健忘・・・・腎のエネルギー不足(腎虚)の為におこります。

《治療》
「補益腎気」「固渋精液」と言って、腎の気を益すことにより、精液の漏れるのを抑える治療をします。


【心脾労傷による遺精】
「気」の作用の中の「固摂作用」の低下による「遺精」です。
もともと虚弱体質な人が肉体疲労や気疲れが重なることによって、脾が損傷を受けてしまうことがあります。
脾の生理作用に運化作用がありました。運化作用とは消化吸収を意味しており、これは脾が飲食物からエネルギー(気・血)を作り出す主役であるということです。
ですから上記の原因で脾が損傷を受けると、気・血が作られなくなってしまいます。
次に気・血が作られないと、心に影響を及ぼします。
心は神を蔵していて精神活動の統括をしておりましたから、結果的に脾気の損傷は心神の不安をまねいてしまう場合があります。
心脾労傷による遺精とは、脾気の損傷により心神不安を起し、気の不足(気虚)により固摂作用が低下して精液を固摂できなくなって起こる遺精です。

≪弁証≫
労傷による遺精ですから「労傷心神遺精」となります。

《症状》
<主症状>
疲労すると精液が漏れる・・・もともとエネルギー不足(気虚)ですから、疲労すれば悪化します。

〈随伴症状〉
動悸・不眠・健忘・夢を多くみる・・・・血の生成不足により心に蔵されている神が栄養されず、精神症状が現れている状態です。
顔色が黄色っぽい・四肢のだるさ・・・・・・脾のエネルギー不足(脾気虚)の症状です。脾は四肢と肌肉を主りますので、脾気虚になると四肢のだるさが現れます。又、脾気虚により運化作用が低下し、気血の生成不足がおこり、気血が顔に行渡らないと黄色っぽい顔色になります。
食欲不振・軟便・・・・・これも脾の運化作用の低下によるものです。

≪治療≫
「補脾養心」「益気摂精」といって、脾の気を補い心神を栄養し、気を益して精液の漏出を抑える治療を行います。


以上が中医学からみた「遺精」の説明になります。
尚、初期の夢遺は・心火・肝鬱・湿熱などによるものが多く、夢を見て遺精することが多いようです。
この状態が長引くと腎虚に至ってしまいます。
又、滑精は夢遺が進行して起こるケースが多いようでが、先天的なものや、過度な自慰行為や性交などによっても起こります。

最後に「遺精」に関する養生法を紹介しましょう。

★ 遺精に関する養生法★
一言で養生と言っても、その方法は沢山ありますが、このHPは東洋医学についてのHPですから、東洋医学流の養生法を紹介いたしましょう。
しかし、東洋医学流の養生法といっても、これまた沢山の種類がありますので、今回は皆さんが簡単に実行に移しやすい「食養生」「健康茶」「酒・薬酒」を中心に紹介したいと思います。
さて、皆さんは「医食同源」という言葉を聞いたことがあると思います。
これは中国の言葉で「食事も医学と同じく健康を左右する大切な物である」という考えです。
その発想から生まれたものが、「薬膳料理」です。
つまり、食事には体質改善や、病を改善させる力があるのです。
そこで是非、皆さんもご自分の体質を理解され、それに見合った食事をして下さい。
今回は「民間療法」も混えて紹介いたします。
そして中国にはもう1つ「医茶同源」という言葉もあります。
これも食事と同様に、「お茶も医学と同じ位健康を左右させることができる」という考えです。
日本人もお茶が大好きな民族ですので、これは健康に生かす手はないと思います。
さて、皆さんの中には梅酒などを作る方もおられると思います。
梅酒には血液を浄化したり、疲労回復・体力強化・老化予防・食欲消化の促進といった、 たくさんの効果があります。
このように薬効のある原料をアルコールに漬けたものが「薬酒」です。
薬酒は原料をそのまま摂取したり、煎じて飲むより体内の吸収率が高いという利点があります。

先ずは「遺精」の原因となる湿熱に対する養生法から紹介します。

【湿熱による遺精の養生法】
*湿熱は「湿」と「熱」が合わさった表現です。
湿と熱では養生法が若干異なりますのでここでは「湿」と「熱」に分けて紹介いたします。

《熱の食養生》
麦・あわ・とうもろこし・はとむぎ・そば・緑豆・浜納豆・豆腐・豆乳
ピータン・プレーンヨーグルト
かに・あさり・ところてん・昆布・のり・わかめ・しじみ
きゅうり・とうがん・ズッキーニ・にがうり・レタス・白菜・セロリ・なす
たけのこ・ごぼう・大根・チンゲン菜・トマト
キウイ・スイカ・レモン・梨・メロン・バナナ・柿

《熱の健康茶》
緑茶・ウーロン茶・菊花茶・プーアール茶・荷葉茶・どくだみ茶

《その他、熱の生活上の注意点》
脂っこいもの・味の濃い物・甘いもの・お酒・肉類は食べ過ぎないように注意しましょう。
熱いお風呂も避けましょう。

 

《湿の食養生》
はと麦・とうもろこし・そば・はすの実・小豆・大豆・緑豆・黒豆
えんどう・空豆
あさり・あわび・しじみ・はまぐり・ふな・どじょう・こい・すずき・昆布のり・わかめ・ところてん
にがうり・たけのこ・きゅうり・さやえんどう・セロリ・とうがん・もやし 白菜・ズッキーニ・ごぼう
すいか・すもも・ぶどう・キウイ・メロン

《湿の健康茶》
柳茶・プーアール茶・紅茶・ジャスミン茶

《その他、湿の生活上の注意点》
脂っこいもの・味の濃い物・甘いもの・冷たい水分の食べすぎに注意しましょう。
適度な運動(汗をかく位)をしましょう。
冷えは水液代謝を悪くしますので、体を冷やさないようにしましょう。
お風呂はぬるめのお湯で長めにつかりましょう。


次は気虚に対しての養生法を紹介します。

【気虚による遺精の養生法】
《食養生》
麦・ひえ・きび・あわ・もち米・うるち米・はとむぎ・豆腐・とうもろこし納豆・そば・うどん・大豆・小豆・空豆・枝豆・黒豆・えんどう豆・赤小豆
牛肉・鶏肉・羊肉・かも肉・鶏卵
鰻・まぐろ・鯛・わかめ・のり・昆布・ほたて・あさり・こい・ふな
いしもち・えび・すずき・いか・貝柱・牡蠣・かまぼこ・あおのり・かに
はまぐり・もずく・しじみ・ひじき・めざし・干物・佃煮・いわし・さば
ぎんなん・金針菜・くるみ・木耳・銀耳・あしたば・まいたけ・しいたけ
人参・山芋・じゃがいも・さといも・さつまいも・かぼちゃ・キャベツ
レンコン
クコの実・松の実・なつめ・パイナップル・サクランボ・桃・ぶどう
りんご・栗
ナツメグ・胡麻・みそ・はちみつ・水あめ・食塩・しょうゆ


=民間療法=
豚の胃袋スープ・はと麦スープ・くず湯・にんにく蜂蜜漬け・りんご酢と蜂蜜のドリンク

《健康茶》
クコ茶・グアバ茶・杜仲茶・はと麦茶・麦茶・ほうじ茶・柳茶・なつめ茶・高麗人参茶

《酒・薬酒》
ケンポナシ酒・スイカズラ酒・カリン酒・アキグミ酒・五味子酒・ハマナス酒
フユイチゴ酒・くわの実酒・あんず酒・キハダ酒・グミ酒・夏みかん酒・梅酒

《その他、生活の注意点》
気虚とはエネルギー不足のことですから、食事はしっかり摂りましょう。
又、気虚の方の中には胃腸が弱い方がかなり多くいらっしゃいます。
ですから食事はゆっくり出来るだけよく噛んでいただきましょう。
エネルギーの不足している状態ですから、過度な運動や寝不足は避けましょう。
過度な思い悩みは脾を損傷させますので、注意しましょう。



【ストレスによる遺精の養生法(肝鬱の養生法)】
*ストレスを排除する養生法を紹介します。

《食養生》
牛乳
牡蠣・あさり・しじみ・しゃこ・しらす・かに
らっきょ・うど・せり・みょうが・みつば・春菊・パセリ・セロリ・しその葉・からしな・にら・ねぎ・にんにく・小松菜・菊花・キャベツ・かいわれ大根・ボウフウ・大根・かぶ・ラディッシュ・ザーサイ・はまなすの花
みかん・グレープフルーツ・ゆず・金柑・レモン
ミント・ナツメグ・しょうが・こしょう・八角・わさび・さんしょう

《健康茶》
しそ茶・カモミール茶・菊花茶・ジャスミン茶・ミントティー・刺五加茶

《薬酒》
高麗人参茶・しそ酒・杜仲酒

《その他、生活の注意点》
日ごろからストレスを溜めないように注意し、自分にあったストレス解消法を探しましょう。
できるだけ規則正しい生活を送りましょう。
アロマや柑橘類の香りは気分をリラックスさせてくれます。
寝室やリビング又はお風呂場などで上手に使ってみましょう。
何か集中できる趣味などを持ちましょう。


以上が遺精に対しての養生法です。

これで「遺精」についての説明を終わりにしたいと思います。
ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

=本来の東洋医学の治療の姿に関して一言=

当院では局所治療に限定せず、あくまでも身体全体の治療・お手当てを目的としております。
例えば、ギックリ腰や寝違いといった急激な痛みに対して、中医鍼灸の効果 は高いですが、これも局所の治療にとどまらず全体的なお手当てを行なっているからなのです。
急性の疾患にせよ慢性の疾患にせよ、身体の中で生じている検査などには出てこない生命活力エネルギーのバランスの失調をさぐり見つけ出すことで、お手当てをしております。
ゆえに、慢性の症状を1〜2回の治療で治すというのは難しいのです。
西洋医学で治しにくい病・症状は、中医学(東洋医学)でも治しにくいのは同じです。
ただ、早期の治療により中医学の方が治し易い疾患もございます。
例えば、顔面麻痺・突発性難聴・頭痛・過敏性大腸炎・不眠・などがあります。大切なのは、あくまでも違う角度・視点・診立てで、病・症状を治してゆくというところに中医学(東洋医学)の意味合いがございます。

当院の具体的なお手当てとしては、まず、普段の生活状況を伺う詳細な問診や、舌の色や形などを見る舌診などを行い、中医学(東洋医学)の考えによる病状の起因診断を行います。これは、体内バランスの失調をさぐり見つけ出すために必要な診察です。この診察を踏まえたうえで、その失調をツボ刺激で調整し、元の良い(元気な)状態へ戻すことが本来の治療のあり方です。
又、ツボにはそれぞれに作用があり、更にツボを組み合わせることで、その効果 をより発揮させる事が出来ます。

しかしながら、どこの鍼灸院でもこの様な考えで治療をおこなっているわけではありません。一般 的には局所的な治療を行なっている所が多いかと思います。

さて、もう一点お伝えしたいことが御座います。
当院では過去に東洋医学の受診の機会を失った方々を存じ上げています。
それは東洋医学に関して詳しい知識と治療理論を存じ上げない先生方にアドバイスを受けたからであります。
この様な方々に、「針灸治療を受けていれば・・・」と思うことがありました。
特に下記の疾患は早めに受診をされると良いです。
顔面麻痺・突発性難聴・帯状疱疹・肩関節周囲炎(五十肩)
急性腰痛(ぎっくり腰)・寝違い・発熱症状・逆子
その他、月経不順・月経痛・更年期障害・不妊・欠乳
アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎、など
これらの疾患はほんの一例です。
疾患によっては、薬だけの服用治療よりも、針灸治療を併用することにより一層症状が早く改善されて行きます。
針灸治療はやはり経験のある専門家にご相談された方が良いと思います。

当院は決して医療評論家では御座いませんが、世の中で東洋医学にまつわる実際に起きている事を一人でも多くの方々に知って頂きたいと願っております。

少しでも多くの方に本当の中医鍼灸をご理解して頂き、お体のために役立てていただければ幸に思います。

 


home

Copyright2002 by YANG CHINESE MEDICINE CLINIC .all rights reseserved.
This material may not be copied without written from
YANG CHINESE MEDICINE CLINIC.