突発性難聴とはある日、目を覚ますと片側の耳が聞こえなくなっていたり、つまる感じがしたり、耳鳴りを感じたりする病気です。また昼間はどうもなかったのに、夕方になって急に眩暈(めまい)とともに難聴を感じたりすることで始まることもあります。これは突発(性)難聴と言って、昨日までどうもなかった、あるいは今さっきまでなんともなかったのに、突然急に発症するタイプの内耳の病気です。軽症の場合、「そのうち良くなるだろう」と様子をみている患者さんが少なくありません。早期治療が非常に大切ですので特に注意する必要があります。
突発難聴の原因ですが、時には寝不足が続いたり、風邪が引き金になることもありますが、前日まで特別 これといった原因がなかったことの方が多いです。内耳のウイルス感染や、内耳を栄養する血管系の異常、血流の障害が考えられていますが、まだ今ひとつはっきりわかっていません。内耳の中のリンパ液の量 や性状の変化なども原因の一つではないかとも考えられています。時には内耳窓破裂といって、内耳と中耳の境界の壁から内耳のリンパ液が漏れていたり、内耳の神経の腫瘍が原因のこともあります。

〜 西洋医学的突発性難聴の治療法 〜
ストレスを避け、安静にしながら、薬物療法を行います。副腎皮質ホルモンが現在最も頼りになる薬で、補助的にビタミンB剤、内耳循環改善剤、血管拡張剤などを内服したり、点滴したりするのが一般 的です。他に高圧酸素療法、神経ブロックなどがありますが、治癒率は大体65%と言われています。

〜 東洋医学的突発性難聴の治療法 〜
突発性難聴は耳の経絡(ツボのルート)の流れが停滞して発症すると考えます。
1.何らかの邪が耳の経絡を塞いだタイプ(実証)
2.耳の経絡を養う力が身体にないタイプ(虚証)とに大きく分けられます。

1.のタイプで最も多いのは、急な季候変化などのため風にさらされたり、インフルエンザなどの風邪で熱を出した後におきるものです。
季候変化だけでなく、長い間ストレスにさらされたり、怒ったりしたことによるものもこのタイプに含まれます。

2.のタイプは、体力が落ちたことにより起こります。疲れやすかったり、足腰から力が抜けるようだったりという症状をよく伴います。
治療するには、症状を和らげることはもちろんですが、1.2.のどちらのタイプか判断して、その原因への対処と壊された身体のバランスを整えるような治療を施す必要があります。
そこで、耳の周囲のツボ以外にも、病気の原因を取り除いたり、壊されたバランスを調整することが重要となります。
実証は原因となっている邪を取り除くこと、虚証は弱った体を立て直すことが必要です。
中医学では突発性難聴がお体の何処でバランスを崩しているのかを見極め、その方の体質に合った場所に鍼を打ち体質改善をしていく治療方法になります。


〜 中医学臓腑の働き 〜
中医学では、人体は気(き)・血(けつ)・津液(しんえき )という成分により構成されていると考えます。
気は生体エネルギー、血は血液、津液は血液の構成成分でもある正常な体液成分と考えて下さい。
これらの成分がバランスよく、心身に充分満たされ、うまく働くことで、人体は健康を維持できると考えます。
「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのが臓腑になります。           
西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。
西洋医学と全く同じ役割分担ではないため、違う角度から治療できる訳です。


〜 突発性難聴と深い関わりを持つ臓腑 〜
難聴と関係が深い臓腑が下記の肝・腎・脾になります。
難聴は3つの臓腑の働きのいずれかが乱れて起こると考えています。


難聴と最も関係が深いのは肝だと考えています。中医学でいう肝は肝臓機能の働きだけではなく、自律神経の働きを調整して全身の血液循環をコントロールしています。血流や筋肉の働きも管理していますから更年期の問題や肩こり等も肝が関わってきます。目の使いすぎ、神経の使いすぎ、ストレス、寝不足、過労等は肝を消耗させる事になります。結果 として自律神経の働きが乱れ、脳や内耳の方へ十分血液が循環しなくなり、難聴の症状を起こします。従って、肝と関係のあるツボがよくめまいの治療で用いられます。


「腎は耳に竅を開く」といわれ、耳は腎とも深く関係が有ります。東洋医学でいう腎は泌尿器だけでなく、内分泌(ホルモン)系、免疫系、生殖能力、骨や歯、耳、髪、腰、ノド等と関係しています。発育・成長・老化と関係していますので、年をとる毎に腎の機能は低下していきます。いわゆる「腎虚」と呼ばれる状態です。腎虚になると骨や歯は弱くなり、尿の出方、生殖能力も弱ってきます。そして耳の方も、耳鳴りや難聴が起き易くなります。


水毒症状の代表としてめまいや難聴が起こる事が有ります。油っこい食べ物、甘い物の食べ過ぎ、冷たい物の飲み過ぎ等が消化器系の働きを弱め、胃内停水といって、胃の中で水がポチャポチャした状態になります。こういう状態を水毒といって身体の中の水分代謝が悪くなります。例えば内耳の水ぶくれ等で難聴を起こし易くなります。
上記で述べた考え方を土台にして、突発性難聴をもっと細かくタイプ別 に分けてご紹介いたします。


実証タイプの分類(4種類)

外邪侵襲タイプ(がいじゃしんしゅう)
外邪とは天候の異常などで「風」の邪氣が体内で熱に変わり、症状が出てしまった状態です。
原因…ウイルスや細菌などの感染による感冒・肺炎・中耳炎・外耳炎・扁桃腺炎
随伴症状…頭痛・くしゃみ・鼻水・口の乾燥感・咽頭痛・悪寒・発熱
耳の特徴…耳閉塞感・耳鳴り・難聴などが突然現れる
治療方法…風の邪氣を取り除き、体内にこもっている熱を追い出す「疏風清熱」の治療をしていきます。
漢方:清神散・防風通聖散・桑菊飲

肝火上炎タイプ
イライラしたり怒りっぽい感情が続くと「肝」の気がスムーズでなくなり、ストレスを感受した場所で気の渋滞が発生します。このような状態が長期化すると熱が生まれやがて火に変化して燃え上がります。燃え上がった熱を抑える「清肝清熱」気の渋滞を抑える「開鬱通 竅」の治療をしていきます。
原因…ストレス・情緒不安定
随伴症状…めまい・頭痛・顔面が赤い・充血目・口が苦い・口が乾く・胸や脇が張ったような痛み・イライラして怒りっぽい
耳の特徴…「キーン」と鳴るような耳鳴り・張ったような耳の痛み
漢方:当帰竜會丸・竜胆瀉肝湯

痰火
食生活の不摂生が「脾」の機能を失調させてしまい、代謝が悪くなり基本的物質の1つである水(津液)の流れが滞り、粘液性の病因物質(痰)が体内に蓄積してしまいます。中医学でいう痰は、喉から出る痰のことを指すのではなく、もっと範囲が広く、体中の正常な水分が、異常な粘りけのあるものに変わったものはすべて痰であり、高コレステロールなどの状態も痰証となる。痰が耳や脳の正常な機能を阻害して発生します。熱をとって病因物質の痰をとる「清火化痰」と消化した必要な食べ物を小腸に送り、要らない物(濁)を大腸や膀胱に送る「和胃降濁」の治療をしていきます。
原因…飲食の不摂生など
随伴症状…頭重感・体が重くだるい・咳・痰が多い・大小便がすっきりと出ない
耳の特徴…耳の閉塞感が著しい
漢方…温胆湯・二陳湯加味

気滞血於(きたいけつお)
気滞とは精神的ストレスに弱い「肝」が傷害され、「肝」の気がスムーズに流れなくなるとストレスを感受した場所に気が滞ってしまう状態です。血オは血の巡りが悪く、停滞してしまう状態をいいます。気は血を押し出す働きをしており、気滞により流れがスムーズでなくなると血までも滞ってしまいます。肝の気をスムーズにして気血を押し出す「活血化瘀オ」の治療を行います。
原因…精神的ストレスなど
随伴症状…頭のふらつき・頭痛・イライラ・胸脇の張る感じ・顔、唇、舌などがどす黒い
耳の特徴…数時間ないし数日以内に片側または両側の耳に風音のような感音難聴があらわれる
漢方…通きょう活血湯


虚証タイプの分類(2種類)

腎精虚損証
腎は発育・成長・老化と深く関与しているため、年齢を重ねる(高齢者に多い)と下記のような症状が出やすくなります。腎に備わっているもともとのエネルギーを蓄え、脳を滋養して難聴を止める「補腎益精」の治療を行います。
原因…老化・長期の不眠・慢性病による基本的物質の消耗など
随伴症状…不眠・めまい・のぼせ・足腰が弱くだるいなど
耳の特徴…慢性的に次第に聴力が減退する・蝉が鳴くような弱い耳鳴り
漢方…耳聾左慈丸・耳鳴丸・杞菊地黄丸

脾胃気虚(ひいききょ)
気と血は脾胃という臓器で作られます。脾胃の機能が減退してしまうと消化・吸収力が低下してしまうのです。脾には良いエネルギーを上に持ち上げる作用があります。その作用が低下してしまった状態です。気血を補い、良いエネルギーを上に持ち上げる「益気養血」の治療を行います。
原因…もともと胃腸虚弱がある・食生活の不摂生・過労など
随伴症状…脱力感・食欲減退・腹張・下利気味など
耳鳴りの特徴…疲れたときに症状が憎悪する
漢方…益気聡明湯・補中益気湯


突発性難聴の食養

1. 肝火
肝火は、鬱怒と関連して発病しますので、まず心身をリラックスさせる室外の軽い運動をお勧めします。食べ物は、栄養に富み、消化しやすいあっさりとしたものが適しています。
涼性質の大根・白菜・梨・レンコン・緑豆など野菜や果物および豚肉の赤身が良いでしょう。菊花・生地黄・決明子などをお茶にして常飲してもよいでしょう。
タバコ・アルコール・唐辛子・カレー・にんにく・長ネギなど嗜好品や食品は控える必要があります。また、症状の強い方は夜に濃いお茶やコーヒーを飲まないで下さい。特にコーヒーは症状を悪化させる作用をもつとも言われています。

2. 痰火  
痰火は日頃の運動不足または過食気味の食生活と関連して発病するものが多いのです。油っこいもの・タバコ・アルコールなどの過剰摂取や、ストレスの多い混乱した生活リズムの影響を受け、痰湿が体内に生じてくる。その痰湿が脾胃に滞り、熱に変化して耳を乱し、耳鳴り・難聴などが引き起こされます。生活のリズムを見直す必要性があります。
食事では、あっさりした野菜類を中心としたメニューをお勧めします。例えば、昆布・海藻と大根のスープまたは薄味の味噌汁。冬瓜のスープ・白キクラゲと氷砂糖のスープ・薏苡仁のお粥などです。野菜や果 物のジュースも良いですが、甘さや辛さ、塩辛さの強いものは避ける必要があります。

3. 気滞血於 
精神的な悩みは気の流れを鬱滞させることが多いため、まず心身をリラックスさせることをお勧め致します。この点については1.の肝火と同様です。
食べ物は密柑・桃・ニラ・食用の赤砂糖などを用いると良いでしょう。

4. 腎精虚損  
腎のエネルギー不足の方は、日頃の生活において、まず、過労を避ける事が大切です。
食事では、黒豆・黒ゴマ・桑の実・牛乳・スッポンや動物の内臓・魚類・赤身の肉などをお勧め致します。黒ゴマと鶏肉の煮込み・合鴨のスープなどのメニューが考えられます。

5. 脾胃気虚  
慢性的に胃腸が弱い方がこのタイプなので、日頃の生活においてまず、食べ過ぎない・夜遅くに食べない・疲れを溜めない・十分な睡眠をとることなどが大切になってきます。
食事では、脾胃を元気にしていくものや、消化を助ける食事を心掛けることが大切です。食事では大豆・かぼちゃ・生姜・人参・にんにく・竜眼肉・松の実・うなぎなどをお勧め致します。はと麦入り雑穀ごはん・冬瓜春雨スープ・かぼちゃの煮物などのメニューが考えられます。


当院のホームページ「鍼灸体験談」の中に実際の突発性難聴の患者さんの症例を挙げております。ご参考になさって下さい。

ご質問等ございましたら、お気軽に当院までご相談ください。

 


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