**淋証**
「淋証」とは頻尿・尿意急迫・残尿感・排尿痛・小便少量、たらたら出る
といった症状を総称して「淋証」といいます。
現代医学の病名としては
「尿路感染症」「結石」「前立腺炎」「腎盂腎炎」「乳び尿」
などが近い病気にあたります。
「淋証」は病因や症状により
「熱淋」「寒淋」「気淋」「血淋」「石淋」「膏淋」「労淋」「老淋」
などがあります。
書物によっては
「熱淋」「寒淋」「気淋」「血淋」「石淋」「膏淋」「労淋」
の7種類の分類のものもあれば、
[五淋]といい、「熱淋」「気淋」「血淋」「石淋」「膏淋」
の5種類で分類している書物もあります。

「淋証」の【病因・病機】については、先程の「りゅう閉」と殆んど同じで、
以下の3つがあります。
T、膀胱の中に湿熱が入り込む「膀胱湿熱」
U、脾や腎が損傷しておこる「脾腎両虚」
V、肝の気が滞って起こる「肝鬱気滞」

≪病因・病機≫
T【湿熱が膀胱に入り込む淋証「膀胱湿熱」】
りゅう閉の病因でも説明しましたが、「肥甘厚味の過食」や「過度の飲酒」は 体内で湿熱を生みます。
体内で生まれた湿熱は湿の特性から膀胱へ入り込んで「膀胱湿熱」となります。
又、性器を不衛生にしていても「膀胱湿熱」になりました。
膀胱湿熱は膀胱の気化作用を無力させ淋証をまねきます。
(詳しくは「湿熱りゅう閉」の病因・病機を参照して下さい。)

U、【脾や腎が損傷しておこる淋証「脾腎両虚」】
既に皆さんもご存知のように、長患い・老化・虚弱体質・過度の性交渉などは脾腎を損傷させてしまいます。
このことにより気化作用が無力になったり、逆に固摂作用が無力となったりします(腎気不固*)。
(腎気不固*:腎の生理作用を参照してください)

V、【肝の気が滞って起こる淋証「肝鬱気滞」】
情志失調により肝の気が鬱滞をおこし、それが熱化し膀胱の気化作用に影響をおよぼしておこります。
(詳しくは肝鬱りゅう閉の病因・病機を参照して下さい)

≪症状≫
次に症状と治療の説明に入ります。
「淋証」の病因・病機は「りゅう閉」とよく似ておりますので
証候分析(症状が現れる機序)については簡略化いたします。
もし理解できないようであれば、「りゅう閉」の証候分析を読まれれば詳しく記載されております。
症状は、先程少し触れた[五淋]と「労淋」「老淋」があります。
今回は[五淋]を中心に説明し、「労淋」「老淋」を後から簡単に紹介します。

T【気淋】
「気淋」とは「気」の不足や、「気」の流れの滞りによって起こる症状を言いますので、「脾腎両虚」「膀胱湿熱」「肝鬱気滞」などによっておこります。

〈主症状〉
排尿に力がない(脾腎両虚)・・・・脾が損傷することによりエネルギーが生産されない状態です(気虚)。
エネルギー不足のため小便を押し出せなくて起こります。
又、腎が損傷すると脾を温められず脾の消化吸収能力を低下させます。
小便が途切れ途切れ・点滴状(脾腎両虚)・・・運化作用や昇清作用の失調のため、膀胱へ運ばれてくる水液が減少しているためです。
又、腎虚により水液代謝や膀胱の気化作用が失調しているためにおこります。
排尿後もポタポタと垂れる(脾腎両虚)・・・・腎の固摂作用の無力化によります。
下腹部が下垂して張った感じがする(脾腎両虚)・・・脾の昇提作用の失調のため下垂感が現れます。
小便が出しぶる(肝鬱気滞・膀胱湿熱)・・・・情志失調により肝の気が鬱滞をおこし、疏泄作用無力となり、膀胱の気化作用が低下しておこります。
下腹部や脇に脹った痛みがある(肝鬱気滞)・・・気の流れが渋滞を起すと脹った痛みが出現します。
下腹部や脇には肝と関わりのある経絡が通るので、この部位に脹痛が出ます。
怒りや情志の失調で症状は増悪します。(肝鬱気滞)・・・情志の失調やイライラは更に疏泄作用を失調させます。

〈随伴症状〉
食欲不振(脾腎両虚)・・・・運化作用の失調のため、消化吸収能力が低下し食欲不振となります。
精神疲労・息切れ・だるさ(脾腎両虚)・・運化作用の失調によりエネルギーが不足しておこります(推動作用や宗気の不足)。
顔色が蒼白い(脾腎両虚)・・・・・腎虚により気血が循環できず(温運)おこります。
精神不振(脾腎両虚)・・・・腎虚が進み気虚(エネルギー不足)となり、気の推動作用が失調しておこります。
腰膝に力が入らない(脾腎両虚)・・・腎は腰の府と言われ、腎虚になると腰や膝を栄養できなくなりおこります。
(詳しくは腎の生理作用を参照してください)
普段からイライラや怒りっぽい(肝鬱気滞)・・・・疏泄機能が低下すると情志を調節できなくなりおこります。
咽が渇き、水分を欲する(肝鬱気滞)・・・・気の流れが渋滞を起し、それが熱化してしまったためです。
(これらの症状について、詳しくは肝鬱りゅう閉の病因・病機を参照してください)


U【石淋】
砂淋又は砂石淋とも呼ばれます。
石淋とは、「膀胱湿熱」「脾腎両虚」などによっておこり、湿熱が溜まることにより、それが尿中の不純物を凝結させて、砂石を形成してしまい尿道を閉塞して起こる症状をさします。

〈主症状〉
尿に砂が混じる・尿の出が渋い・排尿が中断する・排尿痛・尿道疼痛・陰茎や下腹部の脹張感・・・・・・・・・尿道に石があるためです。

〈随伴症状〉
腰・腹の激痛・・・・・結石が尿路の上・中部にある場合におこります。
血尿・・・・・・・・・結石が血脈を損傷するとおこります。
顔色がさえない・無気力・・・・・気血両虚による症状です。
体内に湿熱が溜まるということは、もともと運化作用が弱いからです。
運化作用が弱ければ気血の生成不足となり気虚や血虚をまねきます。
食欲不振(脾腎両虚)・・・・運化作用の失調のため、消化吸収能力が低下し食欲不振となります。
精神疲労・息切れ・だるさ(脾腎両虚)・・運化作用の失調によりエネルギーが不足しておこります(推動作用や宗気の不足)。
顔色が蒼白い(脾腎両虚)・・・・・腎虚により気血が循環できず(温運)おこります。
精神不振(脾腎両虚)・・・・腎虚が進み気虚(エネルギー不足)となり、気の推動作用が失調しておこります。
腰膝に力が入らない(脾腎両虚)・・・腎は腰の府と言われ、腎虚になると腰や膝を栄養できなくなりおこります。
(詳しくは腎の生理作用を参照してください)


V【血淋】
「気血水の陰陽分類」で説明しましたが、体内の血や正常な水が損耗した状態を「陰虚」と呼び、陰虚は熱を生んでしまいました。
このように陰虚で生まれた熱のことを「虚熱」といいます。
慢性病や老化は陰虚をまねきやすく、続いて虚熱を生みます。
この様に生まれた熱や、体内の湿熱が血に影響を及ぼすことがあります。
そして、熱邪には出血させるという特性がありました。

「血淋」とは「膀胱湿熱」「脾腎両虚」などでおこり、尿中に血液が混じる淋証で、体内の熱や湿熱が血に影響を及ぼしたり、「石淋」の刺激により血脈が損傷された状態の症状をさします。

〈主症状〉
排尿時の灼熱痛・刺痛・渋り感・尿色深紅・・熱が血脈を損傷しておきます。
血尿・・・・・・・・・・・・血脈が損傷し出血しておこります。
尿中に血塊・排尿痛・・・・・出血した血液が固まり、尿路を閉塞しておこります。
「脾腎両虚」による場合は、排尿痛は無く尿色も淡紅となります。
排尿痛は熱による痛みです。脾腎両虚の熱は虚熱ですから実熱と比べると熱性が弱く痛みも軽くなります。

〈随伴症状〉
食欲不振(脾腎両虚)・・・・運化作用の失調のため、消化吸収能力が低下し食欲不振となります。
精神疲労・息切れ・だるさ(脾腎両虚)・・運化作用の失調によりエネルギーが不足しておこります(推動作用や宗気の不足)。
顔色が蒼白い(脾腎両虚)・・・・・腎虚により気血が循環できず(温運)おこります。
精神不振(脾腎両虚)・・・・腎虚が進み気虚(エネルギー不足)となり、気の推動作用が失調しておこります。
腰膝に力が入らない(脾腎両虚)・・・腎は腰の府と言われ、腎虚になると腰や膝を栄養できなくなりおこります。
(詳しくは腎の生理作用を参照してください)


W【熱淋】
「膀胱湿熱」によっておこります。
湿熱や熱が膀胱へ入ることによりおこります。

〈主症状〉
尿道の灼熱痛み・・・・灼熱痛は熱の特性です。湿熱が尿道に入り込むことにより起こります。
急激な尿意・尿色黄色で混濁・・・・熱の特性です。
尿量少・脹痛・・・・・・・・膀胱の気化作用の低下によるものです。

〈随伴症状〉
便秘・・・熱の特性に体内の水を損耗させるというのがありました。
体内の水は体に潤いを与える作用がありますので、水が損耗されると腸を潤すことが出来なくなり便秘になります。
悪寒・発熱・・・・湿熱の外邪を受感した時におこります。
口が苦い・嘔悪・・・湿の特性も1つ粘調があります。そのため湿はその粘調の特性で経絡を塞いでしまいます。この場合は湿熱が体内で経絡を塞いでしまい、気が流れることができなくなってしまい起こります。


X【膏淋】
「膏淋」は「膀胱湿熱」「脾腎両虚」などでおこり、「肉淋」とも呼ばれます。

〈主症状〉
小便は混濁し米のとぎ汁、又は脂肪の様・・・・・・「膏淋」の特徴的な尿です。
これは膀胱へ湿熱が入ることで膀胱の気化作用が低下してしまい、必要な水分(清)と不要な水分(濁)を分けることが出来なくなり起こる場合と、腎のエネルギー不足により固摂作用が低下して脂液が尿に混じって排出されることにより起こります。
排尿時の灼熱痛や疼痛(膀胱湿熱)・・・湿熱の熱の特性です。

〈随伴症状〉
腰や膝がだるく力が入らない(脾腎両虚)・・・「腎は腰の府」と言われ腎のエネルギー不足は腰や膝に影響がでます。
精神疲労・息切れ・だるさ(脾腎両虚)・・運化作用の失調によりエネルギーが不足しておこります(推動作用や宗気の不足)。
日増しにやせる・めまい・・・・混濁した尿を排尿することにより、体に必要な水分(清)が失われておこります。


以上が五淋についての説明になります。
次に、老淋と労淋について少し説明をしましょう。

「老淋」とは字からも想像がつくと思いますが、年老いてきて起こる淋証です。
腎の生理作用で説明しましたが、老化は腎を損傷させます(特に腎精)。
この腎精の不足によって起こる淋証です。
治療は腎精を補う治療を施します。

「労淋」とは、淋証が長い間完治せずにいたため、脾腎両虚となってしまったところに、過労が要因となって発病する淋証です。
主な症状としては、排尿後の陰部の痛み・手足や膝腰のだるさ・無力・精神疲労などがあり、いずれも脾腎両虚による症状です。
治療は「腱脾益腎」といい、脾をたて治し、腎精を益す治療を施します。


《治療》
さて淋証の治療については、基本的に病因に対して考えますので、先ず、病因別 に紹介します。

『膀胱湿熱』による淋証
「清熱利湿」「通淋止痛」といって、病因が湿熱ですから、湿をとり熱を下げることで、淋証を改善して痛みも止める治療を施します。

『肝鬱気滞』による淋証
「疏肝解鬱」「気機調節」といって、肝の気の滞りを流し、体全体の気の流れをよくしてあげる治療を施します。

『脾腎両虚』による淋証
「腱脾利湿」「益腎固渋」といって、脾をたて治し湿を取り除き、腎のエネルギーを益し、腎の固摂作用を高める治療を施します。

因みに、先程紹介した五淋の中で「石淋」の場合は「排石通淋」という言葉を使う場合もあります。
例えば、病因が「膀胱湿熱」の「石淋」であれば、「清熱利湿・排尿通 淋」となります。
他には、「血淋」の場合は、「止血」という言葉を使う場合もあります。
例えば血の中に熱が入って起こる「血淋」の場合は「涼血止血・清熱通 淋」などと言う場合があります。


以上で中医学から診た排尿障害(りゅう閉と淋証)の説明になります。
次に排尿障害の養生について紹介をしましょう。

 


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