★中医学による排尿障害の概念★
中医学でも排尿障害は「尿閉」「排尿困難」「頻尿」「尿失禁」・・・・など
現代医学と同様に、幾つかの症状が含まれます。
この中で、「尿失禁」は以前に紹介されておりますので、今回は「排尿困難」「尿閉」「頻尿」「尿意急迫」「残尿感」などを主訴とする疾患について紹介します。
中医学では以上のような症状を主訴とする疾患は「りゅう閉」「淋証」の2つがあります。
先ず、この2つの疾患についての共通点と相違点を簡単に紹介しましょう。

▼ 共通点
@、 小便が点滴して出難い
A、 残尿感を伴うこともある

▼ 相違点
  =りゅう閉= =淋証=
@1日の総尿量 減少 減少しない
A小便の頻数 頻数しない 頻数する
B排尿痛 排尿痛少ない 排尿痛有り

以上のような共通点や相違点があります。
それでは、「りゅう閉」から説明始めてみたいと思います。

★★ りゅう閉 ★★
『りゅう閉』の「りゅう」には排尿時に小便の出がわるく、少量しか出なく、下腹部が充満して隆起した状態で、病勢が比較的緩慢なものを指します。
「閉」は小便が閉塞して出ない状態で、病勢が比較的急性なものを指します。
『りゅう閉』とは、排尿困難となり小便が出にくく、重度の場合は閉塞が起こり小便が不通 になる病症を指します。

「りゅう閉」はその病因・病機により下記の6つの証に分類されます。
T、湿熱が膀胱に下注して起こるもの
U、肺に熱が鬱積して起こるもの
V、脾の気の不足により起こるもの
W、腎陽の不足により起こるもの
X、肝の気が鬱滞して起こるもの
?、血の滞りによって起こるもの

「りゅう閉」は、以上のように分類をすることができます。
次に上記の分類に従って、病因・病機〜弁証名〜症状〜治療、の順に説明してゆきます。

T【湿熱が膀胱に下注して起こるもの】
《病因・病機》
病因のところで説明しましたが「肥甘厚味の過食」や「飲酒過度」は体内で湿熱を生みます。
飲食物により生まれた湿熱は、当初は中焦といって腹部の辺りにありますが、湿の重い性質により下部へと移行して膀胱へ入り込んでしまいます。(湿熱下注)
又、性器を不衛生にしていると、性器を通じて濁気が膀胱へ入り込み湿熱となります。
膀胱の生理作用で説明しましたが、尿が体外に排出されるのは膀胱の気化作用によるものです。
膀胱に入り込んだ湿熱は膀胱の気化作用を失調させてしまいます。
又、腎の熱が膀胱へ転移して湿熱が鬱積し、膀胱の気化作用を失調させる場合もあります。
いずれにしても、湿熱が膀胱へ侵入することにより起こる「りゅう閉」です。

≪弁証≫
湿熱が膀胱に入って起こるりゅう閉ですから、
弁証は『湿熱りゅう閉』又は「膀胱湿熱証」となります。

≪症状≫
〈主症状〉
小便は点滴状で尿量少・排尿困難・閉塞・・・・膀胱の気化作用の失調のためです。
尿量黄色又は赤色で灼熱間を伴う・・・・湿熱の熱の特徴です。

〈随伴症状〉
下腹部が急に痛む・・・・湿熱の湿の粘調の性質で気血が阻滞を起こして痛みが出ます。
咽の渇き・・・・湿熱の熱の特性より体内の水分が損耗されてしまい、咽が渇きます。

≪治療≫
『清熱利湿』といって、熱を下げ湿を体外へ排出する治療を施します。

U【肺に熱が鬱積して起こるもの】
≪病因・病気≫
「熱邪壅肺(ねつじゃようはい)」と言って、外因に含まれる「熱邪」を受感してしまうと、その熱が肺に停滞してしまうことがあります。
すると肺の生理作用の1つである「粛降作用」が失調を起こしてしまいます。
「粛降」とは、下方へ降ろす作用でした。
 もう一度、水液代謝を思い出してみましょう。
肺は脾から送られてきた有益な水液を「粛降作用」により下方に降ろしておりました。
つまり、粛降作用により水液は全身を巡り腎に到達することができるのです。
更に腎に送られた水液のうち、再利用できないものは膀胱へと送られ、排尿されました。
「粛降作用」が失調を起こすと、水液が下方へ降りて行きづらくなってしまい、腎へ送られる水液の量 が減ってしまいます。
腎へ送られる水液量の減少は、膀胱へ送られる水液量の減少につながり、最終的には尿量 の減少になるわけです。

≪弁証≫
肺に熱が鬱積して起こるりゅう閉ですから、『肺熱りゅう閉』となります。

≪症状≫
〈主症状〉
小便は点滴状か閉塞・・・・・・・・膀胱へ水液が送られてこなくて起こります。
尿の色は黄色・・・・・・・・・・・熱邪の特徴です。

〈随伴症状〉
咽の渇き・・・・・・熱の特性より体内の水分が損耗されてしまい、咽が渇きます。
咳嗽・・・・・・・・肺の「粛降作用」が失調している為に、降ろす働きが弱くなり気が逆流(上逆)して上がってきてしまい起こります。

≪治療≫
『清泄肺熱』といい、肺の熱を下げる治療を施します。


V【脾の気の不足により起こるもの】
≪病因・病気≫
脾の生理作用の説明の際にも触れましたが、飲食の不節・過度の過労・長患いなどは脾の機能損傷をきたします。
その結果、運化作用や昇清作用の失調が起こります。
正常な水液代謝や脾の生理作用が理解されておられる方なら、既にピンときていると思いますが、これらの機能失調は、脾から肺へ送られてくる水液量 の減少を意味します。
肺に送られてくる水液量が減少すれば、当然体内を巡る水液量も減少し、最終的には尿量 の減少に繋がります。

≪弁証≫
脾は体の概ね真ん中にありますので『中虚りゅう閉』又は、「脾気虚証」となります。

≪症状≫
〈主症状〉
小便の出が悪い・すっきり出ない又は出ない・・・膀胱へ運ばれてくる水液が減少しているためです。
又、エネルギー不足の為、押し出す力もありません。
排尿後疲労感がある・過労で症状が増悪する・・・・運化作用の失調により、エネルギー不足(気虚)になっているためです。

〈随伴症状〉
下腹部が下垂して張った感じがする・・・昇提作用の失調のため下垂感が現れます。
食欲不振・・・・運化作用の失調のため、消化吸収能力が低下し食欲不振となります。
精神疲労・息切れ・だるさ・・運化作用の失調によりエネルギーが不足しておこります(推動作用や宗気の不足)。

〈治療〉
『益気健脾』といい脾をたて治し、エネルギー不足を解消させます。


W【腎陽の不足により起こるもの】
≪病因・病気≫
老化や長患いは腎を損傷させます。その中で特に腎陽が損傷を受けると、温煦作用が失調を起こします。
腎の生理作用で説明しましたが、腎陽は温煦作用の力で水液代謝や膀胱の気化作用を支えていました。
温煦作用の失調は水液代謝や膀胱の気化作用を失調させ、癃閉をまねきます。

≪弁証≫
腎が損傷して温める力がなくなっておこるりゅう閉ですので、
『腎虚りゅう閉』又は「腎陽虚証」となります。

≪症状≫
〈主症状〉
小便が出ない・ポタポタとしか出ない・・・・腎陽虚により水液代謝や膀胱の気化作用が失調しているためにおこります。
排尿に力が入らない・・・・腎陽虚は脾陽を損傷させます。脾陽虚はエネルギー不足となりますので、押し出す力がなくなってしまいます。
老化や過度な性交渉などで症状が増悪します・・・老化や過度な性交渉は腎を損傷させてしまいりゅう閉をまねきます。

〈随伴症状〉
寒がり・・・・腎陽虚により体を温める力がなくなっているためにおこります。
顔色が蒼白い・・腎陽虚により気血が循環できず(温運)おこります。
精神不振・・・腎陽虚が進み気虚(エネルギー不足)となり、気の推動作用が失調しておこります。
腰膝に力が入らない・・・腎は「腰の府」と言われ、腎虚になると腰や膝を栄養できなくなりおこります。
(詳しくは腎の生理作用を参照してください)
朝方下痢をする・・・・朝方は気温が一番下がる時間です。この時に体を温める力がないとお腹に冷えが入り下痢をします。
下腹部の冷え・・・・腎は腰の位置にありますので、腎陽虚になると腰や下腹部に冷え感がでます。

≪治療≫
「温補腎陽」といって腎陽を補う治療を施します。


X【肝の気が鬱滞して起こるもの】
≪病因・病機≫
病因の内因で説明した情志の失調によるもので、情志が抑鬱状態になると肝の気が鬱滞を起してしまいます。
その結果、肝の生理作用である「疏泄」の機能の低下がおこります。
疏泄の働きの1つに、気血の運行の促進がありました。
疏泄機能が低下することにより、気血の運行も低下を起します。
気は全ての働きの原動力ですから、気血の運行の低下は様々な働き低下させてしまいます。
そのことにより、気化作用や水液の通路である三焦に影響を及ぼしりゅう閉をまねきます。

≪弁証≫
肝の気が鬱滞して起こるりゅう閉ですから『肝鬱りゅう閉』となります。

≪症状≫
〈主症状〉
小便がすっきりでない・・・疏泄機能の低下によるものです。
下腹部や脇に脹った痛みがある・・・気の流れが渋滞を起すと脹った痛みが出現します。
下腹部や脇には肝と関わりのある経絡が通るので、この部位に脹痛が出ます。
怒りや情志の失調で症状は増悪します・・・情志の失調やイライラは更に疏泄作用を失調させます。

〈随伴症状〉
普段からイライラや怒りっぽい・・・・疏泄の作用の1つに情志活動の調節がありますので、疏泄機能が低下すると情志を調節できなくなり、怒りっぽくなったり、いつもイライラするようになります。
咽が渇き、水分を欲する・・・・気の流れが渋滞を起し、熱化してしまったため体内の水分を損傷させてしまっておこります。
便秘・・・・これも熱が腸の水分を損傷しておこります。

≪治療≫
「疏肝理気」といって肝の気を流してあげる治療を施します。


?【血の滞りによって起こるもの】
≪病因・病気≫
血の滞りが尿路を塞ぐために起こります。(イメージ的には現代医学の尿路結石みたいなものです。)
血の滞りのことを「オ血」と言いました。
「オ血」の原因は大きく分けると4種類ありますが、りゅう閉に関係のある原因は「気滞」と「血熱」です。
外傷を受けると血が血脈から流れ出てしまい、更に外傷を受けた部位では気の流れも滞り気滞をおこします。
「オ血」の説明で触れましたが、気の流れが滞ると血の流れも滞ってしまいます。
このことを気の滞りによって生まれる「オ血」ですから『気滞血オ』と言います。
つまり、外傷によって流れ出た血は、その場所で『気滞血オ』となって留まってしまいます。
又、血に熱が侵入すると、熱が血を煮詰めてしまい「血熱血オ」となります。

更に「オ血」は塊(腫塊)を生じる特性があります。
外傷や熱の血への侵入により生じた「オ血」が尿道を閉塞しりゅう閉を起します。
その他に、脂っこいものや、味の濃い物を食べ過ぎて(過食肥甘厚味)生じた湿熱が、膀胱へ入り煮詰まり結石となり尿道を閉塞する場合もあります。

≪弁証≫
血オによって起こるので「血オりゅう閉」となります。

≪症状≫
〈主症状〉
尿がポタポタとしか出ないか、細い。出ない場合もあります・・・尿路が閉塞されているためです。
下腹部が脹って痛む・・・尿路の途中までは尿が来ているからです。

≪治療≫
『行オ散結』と言って、オ血をとり尿道を清利します。

以上が「りゅう閉」についての中医学的説明になります。
次に「淋証」についての説明に入りましょう。

 


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