心臓病、脳卒中、高脂血症、肥満、高血圧と並んで、生活習慣病のひとつに数えられる糖尿病。
日本人の食生活が豊かに、そして欧米化になるとともに増加の一途をたどっています。決して人事の問題ではなく、身近に潜んでいる病気なのです。
しかし、糖尿病は、初期であればコントロール可能な病気であり、主治医は患者さん自身になるのです。
患者さんと医師との連携作業ではありますが、いつ何を食べるか、運動するか、糖尿病薬を実際にどのように飲むか、注射するかは最終的に患者さん自身にかかっています。
将来、合併症が起こるリスクを少しでも減らすために糖尿病への知識を高めて、体調を良い方向にもっていきましょう。

中医学において糖尿病は、「消渇」という病名で認識されています。
その主症状は三多一少(多飲、多食、多尿と体重減少)と表現されています。
古来より詳しい観察がなされてきましたが、血糖値に関する測定手段はなかったので、高血糖という認識はなかったと思われます。
しかし尿甜(尿が甘い=高血糖)などの症状から、現在でいう高血糖が想定されていた可能性があると思われます。
以下にくわしく、中医学的な糖尿病の捉え方、タイプ別の治療法・日常生活の過ごし方をご紹介していきたいと思います。

▼西洋医学的糖尿病の診断・検査・治療法▼
糖尿病には、自己免疫異常などの関与が考えらている1型糖尿病と、遺伝や生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病があります。
2型糖尿病(以下糖尿病)は血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気です。初期の頃は自覚症状がほとんどありませんが、血糖値が高いまま放置しますと、徐々に全身の血管や神経が障害され、いろいろな合併症を引き起こします。

<糖尿病の原因>
遺伝、高カロリー、高脂肪食、運動不足などにより引き起こされるインスリンの作用低下が原因で起こります。
インスリンは、すい臓から分泌されます。

<インスリンの働き>
@ 糖分を含む食べ物は唾液や消化酵素でブドウ糖に分解され、小腸から血液中に吸収されます。
A 食事によって血液中のブドウ糖が増えると、すい臓からインスリンが分泌されます。
B ブドウ糖が筋肉などに送り込まれエネルギーとして利用されます。
「インスリンの作用不足」が起こると、血液中のブドウ糖を上手に処理できなくなり、血糖値の高い状態が続くようになります。

■では、なぜインスリンの作用不足が起きるのでしょうか。
それには、2つの原因があります。
1つは、すい臓の働きが弱くなりインスリンの分泌量が低下するため。
もう1つは肝臓や筋肉などの組織がインスリンの働きに対して鈍感になり、インスリンがある程度分泌されているのに効きにくくなるため(インスリン抵抗性の発現)です。
糖尿病では体質以外にも、肥満や運動不足や食べすぎといった生活習慣の乱れが、「インスリン分泌低下」や「インスリン抵抗性」の発現を引き起こすと考えられています。

<糖尿病が引き起こす合併症とは・・>
糖尿病は、神経や目や腎臓などにさまざまな障害を起こすことが知られています。
(末梢神経障害、網膜症、腎症、心筋梗塞、狭心症、動脈硬化、脳梗塞、感染症など)
体のなかで最も高血糖の影響を受けやすいのは末梢の神経と細い血管です。そのため糖尿病では足の神経、目の血管、腎臓に障害があらわれてきます。それが進行すると、足の感覚が鈍くなったり、失明、透析など社会生活に大きな支障をきたす恐れが出てきます。
糖尿病は自覚症状がなくても、見えないところで合併症が進行しています。そして、気がついた時には合併症のため、日常生活に支障があらわれているということが少なくありません。しかし、きちんと血糖値をコントロールできれば、合併症を予防できることがわかっています。

<糖尿病の検査>
■ 定期検査で病状をチェックする
糖尿病の初期は自覚症状がほとんどありません。病状を把握するためには血糖値やヘモグロビンA1c(エイワンシー)を継続的に検査することが必要です。

■血糖値
血糖値は糖尿病コントロールの指標として用いられます。
糖尿病では食前の血糖値が高い場合と食後の血糖値が高い場合、または両方が高い場合とさまざまなタイプがあります。そして最近では食後の血糖値の上昇と脳卒中や心臓病との関係が注目されており、食前の血糖値だけではなく食後の血糖値もしっかりコントロールする必要があります。

■ヘモグロビンA1c
血糖値が高くなるとブドウ糖が赤血球の中のヘモグロビンと結合します。これがヘモグロビンA1cと呼ばれるもので、血糖値が高いほどヘモグロビンA1c値も大きくなります。この値は、赤血球の寿命(約4ヵ月)から過去1〜2ヵ月の血糖コントロール状態を示していると考えられています。ヘモグロビンA1c値は合併症の進行と深く関係しており、6.5%未満がコントロールの目安となります。

<糖尿病の治療法>
 1. 食事療法
 2. 運動療法
 3. 薬物療法
食事療法と運動療法を行っても血糖コントロールが不十分な場合、薬物療法を併用します。
糖尿病の薬はいずれも「インスリンの作用不足」を改善し、血糖値を下げる作用があります。糖尿病の薬にはインスリン分泌量 を高める薬やインスリン抵抗性を改善する薬、そして不足しているインスリンそのものを外部から補うインスリン注射薬など、さまざまなタイプがあります。

〜薬物療法時の注意〜
@ 薬の作用により血糖値が70mg/dL以下になると低血糖症状が起こります。
(低血糖が起こる血糖値には、個人差があります。)
低血糖が起こった時は、砂糖やあめなどを携帯し、すみやかに糖分をとりましょう。
低血糖の主な症状:冷や汗がでる、動悸がする、強い空腹感、手が震える、めまいがする。

A 糖尿病治療では、飲み薬やインスリン注射薬を自分で勝手に中止してはいけません。薬を突然中止すると、高血糖による意識障害や昏睡を招くことがあります。


▼中医学的にみる糖尿病のとらえ方▼
冒頭でも述べましたが、中医学では糖尿病を「消渇病」といいます。
そして、細かく分類していきますと、上消、中消、下消とに分かれます。
この上消とは、体の上部に位置する「肺」の症状があらわれることを意味します。
中消とは、体に真ん中に位置する「胃」の症状があらわれることを意味します。
下消とは、体の下部に位置する「腎」の症状があらわれることを意味します。
一般に症状が下に(腎に)いくに従い、病状も重くなっていきます。
※各臓腑の働きは、下記の「糖尿病に関わる主な臓腑の働き」をご参照下さい。
<主な症状>
上消部:口渇感が強く、よく水分をとる。
中消部:胃の熱により消化力が促進され、食べても食べてもお腹が空く。
下消部:尿量が多くなり、混濁する。

<中医学で考える糖尿病の主な原因>
@ 「腎」は下記の(「糖尿病に関わる主な臓腑の働き」)でもふれますが、元気の源とも言われ、体全体を温める力(気の働き)と、臓腑や各器官に栄養を与え潤す力(血・水の働きに当てはまります)を備え調節しています。
糖尿病では、この潤す力の低下(腎陰虚)が、根本原因であると考えられています。
さまざまなタイプは、主に誘因物質であり、根本にはこの腎陰虚が潜んでいるとしています。病気が長期になりますと、陰だけであった損傷が陽にも及び、陰陽が共に虚の状態になります。
A 先天的なエネルギー不足。
B 長期にわたって油っこい物や甘いもの、飲酒、味の濃い食べ物、辛い食べ物を食べ過ぎると、「脾、胃」の働きを低下させます。そのため体内に余分な熱がこもり、体に必要な水分が失われます。体の中が乾燥状態になり、消渇として発病します。
C 精神的ストレス、過度の心労や思い悩みは、鬱積し、そのエネルギーは体の中で、火と化します。そのため、体に必要な水分が失われます。体の中が乾燥状態になり、消渇として発病します。
D 上記のさまざまな原因や病気の経過状態により、臓腑の働きの失調も多臓腑に及んできます。その結果 、気血の運行にも影響を与え、血脈のオ滞を引き起こします。
血脈のオ滞とは、血の流れが停滞した状態をあらわします。
糖尿病による合併症の発生も、このオ血と緊密に関連しています。

▼中医学的からだのしくみ▼
〜「気」「血」「水」とは〜
体全体の活動源である「気」、体内の各組織に栄養を与える「血」、血液以外の体液で体を潤してくれる「水」、これらの3つが体内に十分な量 で、スムーズに流れていることにより、体の正常な状態が保たれます。
もし、これらのひとつでも流れが停滞してしまったり、不足してしまったりするとからだに変調をきたし、様々な症状がでてきます。
さらにこの状態を放置し、慢性化してしまうとお互い(気・血・水)に影響が及び症状が悪化してきてしまうのです。

「気・血・水」を作り出し、蓄え、排泄するといった一連の働きを担っているのがこれら「肺」、「胃」、「腎」の臓腑です。西洋医学的な働き以外に中医学では「気・血・水」が深く関わってきます。ですので、西洋医学と全く同じ役割分担ではありません。
ゆえに違う診たてができるのです。この点をまず理解してください。
 
 詳しくは、HP上の‘わかる東洋医学診断・まとめ’の中に「わかりやすい東洋医学理論」があります。そちらをご参照ください。

▼糖尿病に関わる主な臓腑の働き▼
「肺」・・ @ 気(エネルギー)を生成する。
下記の「脾」「腎」とともに気の生成をするために不可欠の臓腑です。
気の不足による主な症状は、息切れ、声にはりがない、かぜをひきやすい抵抗力が弱いなどがあります。

  A 肺の最も重要な働きに、呼吸を司る。「発散と下降」があります。
肺は身体の上部へ位置するために、瞼や顔にむくみがでやすい。
《気の場合》
発散とは、各臓腑や体表にエネルギーを送り出す働き。
下降とは、息を吸って得たエネルギーを体の中に取り込み体の活動源とする。
主な症状:喘息、咳が出る。
《水分の場合》
発散とは、咽喉部、皮膚を潤す働き。汗として体外へ発散させる働き。
下降とは、不要となった水分を腎へ下ろす。
主な症状:喉がイガイガする、皮膚が乾燥する、水分を腎へ下ろせない場合は、主に顔面 部がむくみ、尿がでない。

  B 鼻や皮膚の働きを司る。
主な症状:鼻づまり、鼻水、くしゃみ、アレルギー性鼻炎、蓄膿症

「胃」・・ @ 食べた物を胃の中空器官で受け取る。
       ↓
  A 熟成させる。
       ↓
  B 下に位置する小腸へ送るといった一連の働きを担っています。

@の働きが失調しますと、食べたものを戻す(悪心、嘔吐)。
Aの働きが失調しますと、胃の中に食物が停滞したまま、消化されません。
(臭いげっぷがでる、腹部の膨満感、胃痛)
Bの働きが失調しますと、下へ下降させることができません(便秘)。

胃の働きの失調の特徴は、「停滞」と「逆流」です。
@ABそれぞれの状態で留まった状態が長く続きますと、食べ物は熱と化し腐敗します。そのため、熱症状および臭いを伴った症状が多くみられるのです。

「腎」・・ 生命力の源、生殖器・発育・成長関係と深く関わります。
「腎」には父母から受け継いだ先天の気が蓄えられています。
生まれたときにこのエネルギーが少なく、足りなかったりすると、成長が遅い(初潮が遅い)、免疫力が弱い、小柄などの発育不良の状態があらわれます。
「腎」のエネルギー(先天の気)は、「脾」から作り出すエネルギー(後天の気)により補充されます。
年齢が増すにつれて、腎が支配する器官の機能減退症状があらわれてきます。
例) 骨や歯がもろくなる、耳が遠くなる、髪が薄くなったり、白髪が多くなる
婦人科疾患では無月経、不妊症、流産しやすい
冷え症状が加わると、さむけ、下痢をしやすい(特に朝方)、手足、腰の冷え

 

 


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