弁証とは、
〔@何が原因で A何処で B何が Cどのように Dどうなった〕
を組み立てることにより、患者さんに起きている気血のバランスの崩れを判断することです。
それでは今までの四診で得た情報の中から@〜Dまでを組み立ててみましょう。

先ず@の[何が原因で]ですが、これは既に皆さんもおわかりのように「ストレス」が原因になります。
次にAの[何処で]は通常は臓腑か経絡のことを言いますので、「肝」でということになります。
次のBの[何が]というのは「気」「血」「水」のどれが異常な状態かを差しますので、A子さんの場合は「気」になります。
つまりAとBを合わせると「肝の気」が異常な状態であるということになります。
次にCの、[どのように]とは、A子さんの場合「肝の気」がどのように異常な状態になっているのかということです。

問診を思い出してみましょう。
A子さんは「突発性難聴」が発症する前に耳の周りに張り感をおぼえておりました。
又、随伴症状の頭痛は張ったような痛みとも言っておりましたし、胸部も張った感じがすると言っています。これらは全て「肝」「胆」の経絡で「気」が滞っている症状でした。
又、その他の随伴症状の中に幾つかの「熱症状」がありました。
これらは、ストレスにより「肝」が損傷され「気」が滞り、それが熱化したと考えられます。
中医学ではこのように気が鬱滞して熱化してしまうことを『鬱熱』といいます。
ですからCの、[どのように]は、「鬱熱」となり、又は「気鬱化火」し、となります。
そして最後Dの[どうなった]は、主訴の症状になりますから、中医学的な言い方をすると「耳窮を塞いだ」となります。

 ではまとめてみましょう。
「@ ストレスが原因で、A肝が損傷をし、B気が、C気鬱化火して、D耳窮を塞いだ。」になります。
したがって、A子さんの「突発性難聴」は中医学的に言うと「肝火上擾耳聾」又は「肝火上炎証」となります。
因みに、「肝火上炎証」が長引いくと、「肝陽上亢証」に変化します。
では、A子さんはどうか考えてみましょう。
その前に、「肝火上炎証」と「肝陽上亢証」について少し説明しましょう。
「肝火上炎証」とは、過度や長期にわたる、怒りやストレスなどを受けたことにより肝の気が滞ってしまい、それが熱化してしまった状態です。
つまり身体の中で熱源が生まれてしまった状態です。この熱によって様々な症状が発症します。
「突発性難聴」もその中の一つです。
さて、熱は「陰・陽」で分類すると、「陽」に属します。
ですから、熱は陽邪になるわけです。陽邪の特性は陰を損傷します。
体内の水液は「陰」に属しますから、熱によって損傷されてしまいます。
このように、「肝火上炎証」が長期間続くことにより、体内の水液が損傷されてしまった状態が「肝陽上亢証」です。
[3−6]の随伴症状の説明で、『実熱』と『虚熱』の説明をいたしましたが覚えておりますか?
『虚熱』とは何らかの原因で体内の水分などが損耗してしまい、冷却効果 が低下してしまい熱症状がある状態で、特徴は「のぼせ」「寝汗」「頬が赤らむ」などがありました。
『実熱』とは体内に何らかの熱源ある熱症状の総称で、大きな特徴は水分を欲することでした。
以上の事から、「肝火上炎証」の特徴は実熱の症状です。
それに対して、「肝陽上亢証」は実熱の症状と虚熱の症状の2つの特徴を持ちます。
さて、もう一度A子さんの随伴症状を思い出してください。
A子さんは口渇がありました。これは熱症状を表わしていましたね。
次に虚熱と実熱の判別もしました。
A子さんには「のぼせ」「寝汗」「頬が赤らむ」といった虚熱の特徴はなく「冷たい物が飲みたくなる」という実熱の症状があり、A子さんは「実熱」であると判断しましたよね。
つまり、A子さんは「肝陽上亢証」ではなくて「肝火上炎証」ということになります。
これで、A子さんの弁証が終わりになります。

さて弁証が立てられた時点で基本的に問診は終了です。
患者さんには施術に備えて治療室へ移動をしていただき、ベッドに横になってもらいます。
その間に治療者は治療方針と使用するツボを決めなければなりません。
先ず最初に考えるのが治療方針です。
皆さんならどの様な治療方針を考えますか?
この場合は、肝の気が滞って熱化したのが原因ですから、肝の気の流れを正常な状態へ戻してあげながら、熱を下げる治療をおこないます。
そして、治療方針が決まれば、それに見合ったツボを選択します。
因みに、頭部や耳の周りのツボ以外にも、体幹や足の先のツボに至るまで、全身のツボを使用します。
又、治療者によっては、この先「脾」が損傷を受けることを考えて、「脾」のツボを追加する先生もおられるでしょう。
この発想が、最近よく耳にする「未病治療」の1つの考え方です。
問診が終わって針を打つまでに治療者の頭の中では上記の様なことを考えています。

如何でしたか?
以上が「突発性難聴T」のシュミレーションでした。
診察中の治療者がどの様に患者さんの身体の中のバランスの崩れ具合を見極めてゆくのかイメージできましたでしょうか。
我々はこのようにして弁証を立てております。
そして、このような過程は決して珍しいことではなく、中医鍼灸ではごく普通 のことであります。
中医学の治療は『理・法・方・薬(穴)』という大原則にのっとって行われます。
「理・法・方・薬(穴)」とは中医学での診察から治療までの流れを表す言葉です。
「理」とは理解と言う意味で、具体的には「弁証」により病気を理解することをさします。
「法」とは弁証に基づいて治療方針を決定します。
「方」とは治療方針にのっとった漢方薬の処方やツボの選穴になります。
「薬(穴)」とは薬やツボの知識をさします。
つまり、本来の臨床の現場では「弁証」が立てられ、「弁証」に基づいて治療方針を決定して、それに沿った処方や選穴がしっかりした漢方薬やツボの知識により行われるのです。逆を言えば、「理・法・方・薬(穴)」の大原則に沿って行われる治療が中医学の治療となります。
以上のことから、いい加減な問診であったり、痛い所やコリが在る所や病んでいる所にのみ針を打ったり、この疾患にはこのツボといったような短絡的な選穴の仕方のみの治療は本来の中医学(東洋医学)ではありません。
人を治すには、それなりの理論や手順を踏まないと決して結果はでません。
ましてや、慢性症状を治療するには尚のこと繊細な弁証が必要になってまいります。

当院は患者さんと伴に病を治していこうと考えております。
真剣にお悩みの方はお気軽に当院までご相談ください。
我々も誠意を持ってお答えいたします。

 


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