鍼灸治療体験談



                    (大田区在住 男性の場合)

現代医学的なアプローチ
 「過敏性大腸炎」とは、結腸に何らかの器質的病変もなく、多くの場合T精神的影響Uによって、便秘になったり、下痢を繰り返し起こしたりする疾患です。時には、この状態が激症に転じ、それが長期間続く場合は器質的変化(例えば、潰瘍など)に至ることも予測されます。したがって治療は長期に渡り、困難な場合も多いのです。また場合により、ふとしたきっかけですっきりと治ってしまうケースもあります。
 ですから「過敏性大腸炎」の治療には、心身両面からのアプローチが必要です。
●治療方法
 1. 精神的安定、安静
 2. 環境条件の整備
 3. 変化する症状に合わせた食餌療法
 4. 薬物療法
(マイナートランキライザー・緑会消化酵素剤 ・ 抗コリン剤・時に止痢剤または下剤)

 ※ちなみに「過敏性大腸炎」は代表的な心身症の一つでありまして、近年は増加傾向が見られています。
 中国医学的な治療をしても、そう簡単には治らない場合も多く、根治をさせるにはかなり時間のかかる疾患です。

〈中国医学的に過敏性大腸炎はどの様に捉えるか・・・
 一般的には、肝脾不和(かんぴふわ)と申しまして、神経性の下痢をいいます。自律神経の失調により消化器の気が乱れて生じる下痢症状のことです。
 肝脾不和には中国医学的に考えた時に、二通 りの原因があります。

1つは肝気横逆(かんきおうぎゃく)と言います。
 これは精神的なストレス、緊張、情緒変動に伴い腹痛、腹鳴、下痢を生じ、すっきりは排便できない症状をいいます。普段からイライラする、憂鬱、怒りっぽい、などの要因でで起こります。
 中国医学の考えでは、T肝の臓Uはストレスをとても嫌がります。そのためストレスを感じると、肝の気がスムーズに流れなくなります。また、この肝の気の流れは他の臓器の気の流れにも影響を及ぼし、ひどくなりますと他の臓器の気の流れを止めてしまいます。
 このようにT肝気横逆Uとは肝の気が、肝臓の横並びにある脾胃(胃腸)と言う臓器の働きに影響を及ぼした状態を言い表しております。要するに、肝の気が脾胃の気の働きを低下させ、脾胃の働きが正常に保てなくなり下痢症状を起こすと考えられるのです。

2つめは脾虚肝乗(ひきょかんじょう)と言います。
 これは何の誘引もなく、または軽いストレス、緊張、不安、心配、情緒変動ですぐに下痢を起こす症状をいいます。
  普段から元気がない、疲れやすい、食欲がない、泥状便という方もこのタイプです。 このタイプの方は、T脾気Uが普段から弱いと考えられます。元々中国医学の考えではT脾気Uと言うのはエネルギーを持ち上げキープする働きのことを言います。 例えば胃下垂や脱肛、子宮下垂などは脾気のエネルギーが不足しているために起こると考えられています。脾気のエネルギーが不足し、上にもちあげる事が出来ず、胃や腸、子宮が下がってしまうのです。
  そして、慢性的な下痢症状も実はこの脾気が不足すると起こる症状の一つだと考えます。T脾気Uが弱いとT肝の気Uが強く感じられ、胃腸に負荷がかかり、さらに脾気の働きが低下することにつながります。その為に下痢が生じてしまうのです。
  一般の方には非常に理解しずらい臓器の気のエネルギーの話しになって申し訳ないのですが、要するに「肝の気が脾の気をいじめてしまい、脾の気が困っている状態」だと認識して頂けたら解りやすいかと思います。脾の気というのは胃腸の働きと深い関係があるのです。

〈実際の治験例〉 大田区在中 40才 男性
 患者さんは、数年来の下痢に悩まされているサラリーマンでした。下痢の症状はそうひどくなかったのですが、軟便或いは下痢便が1日に数回あり、特に油っぽい物を摂取すると起こりやすいということでした。また、疲れがたまってきても下痢症状が起こりやすいと自覚していらっしゃいました。 色々な病院で検査を受けられましたが、器質的な問題は無く、過敏性大腸炎と診断を受けました。
 患者さんの体型は痩せ型で、顔色は黄白色、脉は弱く舌の色は淡紫紅で胖大、歯痕があり裂紋もありました。この様なタイプの方は中国医学的な診断では、「脾虚症状タイプ」と判断致します。 患者さんは、コンピュータ関係のプログラマーをしており、いつも仕事で時間に追われて居る状態で、精神疲労を感じているとおっしゃっていました。そのため眼精疲労も強く、偏頭痛なども頻繁に起こるということでした。
 そこで当院では、眼精疲労と偏頭痛を和らげる手当てと、脾の臓器(消化器系)のエネルギーを補充して行く手当てを行いました。 眼精疲労と偏頭痛は中国医学的に考えた時、肝の臓器の気と血エネルギー、血の消耗と気の流れが停滞して起きている状態だと捉えます。 これらは精神負担により、この様な状態をおこしてしまうのです。また、肝の気の停滞が起こりますと、もともと脾のエネルギーが弱い方は一層負担がかかります。その為に胃腸の働きを上手くコントロールすることが出来ず、下痢、軟便を繰り返す様になってしまったのです。 ですので、ポイントはT肝の気、血を補う治療UT脾の気のエネルギーを補う治療Uとなります。
 最初の1〜2回の治療では、反応があまり見られなかったのですが、3〜4回目あたりから眼精疲労が抜けてきて、偏頭痛も半減してきたとの事でした。6回目あたりから、下痢、軟便の回数が1日1回位 になり、8回目あたりから、お通じは型のある便になってきたそうです。眼精疲労も無くなってきて、偏頭痛も大分緩和して我慢できるようになってきたということです。10回目位 になると症状は大分安定し、舌の色も血色が出てきて淡紅色になり胖大も無くなりました。これは、体を引き締めるエネルギーが出てきた明しです。そして、裂紋も無くなってきました。 血の栄養素が不足するとひび割れやすくなる、これが改善されたと言うことは、血のエネルギーも補充されたと言うことです。 この方は、今でも養生を兼ねた継続治療を受診中です。
 
  中国医学の考えは、『症状を押さえる治療』と言うよりも『自力で回復に向かわせる治療』が中心となります。それにはやはり体内の気、血エネルギーのバランス調整が大事です。まず、崩れた体内エネルギーを調整しないと、薬を服用していてもなかなか症状が改善されないケースが多い様です。
  また、現代社会はストレス、精神疲労から来る病で悩まれている方が大勢います。ほどほどのストレスは人間を向上させるのに必要ですが、過度のストレスは体に負担を来たし、病を発生させてしまいます。 「ストレスがたまっているな」と感じたら、なるべく自分一人の時間を作るようにしましょう。仕事の事、家庭の事など考えない時間をつくる事も大切です。何も考えずに家の中で禅を組むのも良いでしょう。 時間は10分から15分、それだけでもストレス緩和につながります。禅を組む時は頭からつま先までエネルギーが流れて行くと想像して行なうと良いですね。また静かな音楽を流して行なうのも良いです。いわゆる音楽療法で1/fアルファー波の出る様な音楽が良いでしょう。
 過敏性大腸炎には、漢方の服用も一つの手立てだと思います。抑肝散帰脾湯加味逍遙散などが一般 的には使われやすいです。これもタイプ別により、服用する漢方が違いますので、症状を照らし合わせるだけでは効果 が出ない場合があります。ですので、服用の際は必ず専門家に相談してからにして頂けたらと思います。 当院でも、漢方処方のご相談をお受けしておりますので、お気軽にお声をおかけ下さい。

 

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